荒木 一人の<<書評>>
渡辺毅のウェルカム・ホーム:元シェフのシュフ渡辺毅は、父子家庭宅に居候中。ひょんな事から、居候先の6年生の子供が書きかけていた作文を見る事になり……。押さえ込んでいた悩みが浮き彫りになる。 児島律子のウェルカム・ホーム:日本でいちばん有名な外資系の証券会社の東京本社。そこでバリバリ仕事をしている児島律子の元へ、場違いな雰囲気を持った、ごく普通の学生さんの様な若者が会いに来た。
本当の家族とは、古い因習に縛られた家族と言う枠組みでは無く、人と人が思いやり、心が繋がった形を家族と言うのだろう。本当は、簡単な事である、他人を思いやれば良いのだから。この様な作品をもっと読んでみたいと思うと、残念である。急逝した著者を悼み、合掌。
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ハリガネムシ:第129回芥川賞受賞作 主人公は二十五歳の高校教師。サチコは底辺を這いずる痩せた小さな女。サチコからの一本の電話により抑えてきたモノが蠢動しだす。
暴力や性交の描写が凄い訳では無い。なのに、記憶に強烈に残る。これが純文学なのかと納得してしまった、作品。 爽快感とは程遠い、嫌悪感で一杯と言いたい……。が、読後、ざわざわと心が騒ぐ、実は我が身の内に飼っているのかも知れない、自分がその嫌悪するモノ自体かも知れない。慄然とする。著者が恐い、自分が恐い、他人に薦めるのが恐い。 他の読者は、このカタルシスを押さえ込めるのだろうか?