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WEB本の雑誌今月の新刊採点【文庫本班】2006年11月の課題図書
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サラマンダー殱滅
サラマンダー殱滅 (上・下)
梶尾真治 (著)
【光文社文庫】
税込 各740円
2006年9月
ISBN-4334741223
ISBN-4334741231
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  久々湊 恵美
 
評価:★★★☆☆
本の装丁から、もっとゴリゴリのハードSF!みたいのものを想像していたので、あまりにもすんなりと物語に入っていけたことに驚いてしまいました。
普段はハードなSFものを読まないので、もっと苦戦するかと思っていたので……。
多分物語の背景や物語の進行が、人情味溢れる感じの部分が多く含まれていたからなんでしょう。
それととても描写が細かく丁寧。もちろん空想の話なので、ポイポイと摩訶不思議な武器の名前なんかもたくさん出てくるのですが、わかりやすく説明しているのでこれ何だっけ?と思ったりしてストレスを感じる事はなかったなあ。
地球ではなく他の星のしかもかなり壮大な物語という世界観に関わらず、恐れをなして本をバタリと閉じることなく最後まで読み切りました。
エンターテイメント色が強かったのも私にとっては幸いしました。
ただ、ラストが…。いや、こうするより他ないのだろうけれど。登場人物たちに結構感情移入しちゃったから、もっとあったかい気持ちで締めくくってほしかったかなあ。

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  松井 ゆかり
 
評価:★★★☆☆
 さてみなさん、人間誰しも苦手な生き物というものがあるのではないでしょうか?ゴキブリ大っ嫌い!という方もいれば、クモだけは我慢できない!という方、何といってもヘビが嫌!という方など、嫌悪の対象は様々でしょう。私の場合はナメクジなんです。先日夫の実家の庭で削る前の鰹節くらい(実話)のナメクジを見たときには、そのまま意識を失うかと思いました。…と、先ほどから何故延々ナメクジの話をしているのか?そう、出てくるんです、この小説にナメクジが。しかも飛ぶんです。しかも時には食糧にもなるんです。何度「もうこれ以上読み進められない!」と挫折しそうになったことか…。
 しかし、その点をクリアできればエンターテインメントとしては大変おもしろい!復刊前は朝日ソノラマ文庫から出ていたというのも納得。ちょっと苦いエンディングも余韻を残す。

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  西谷 昌子
 
評価:★★★★★
 文句なしのエンターテインメント!
主人公・静香の置かれた状況――愛する家族を亡くして心身喪失状態となり、復讐という目的を植えつけられて蘇る――にまずハラハラさせられる。登場人物たちは皆、それぞれ個性があってとても魅力的だ(私のお気に入りはいつもテンポがずれて損をしてしまう『テンズレのラッツォ』だ)。そしてラストまで一気に読み終わったとき、ああ面白かった、という満足感とともに、何とも言えない寂しさが胸を吹き抜けるのもいい。読み終えてからもずっと頭から離れない、数々の印象的なシーン。ディティールが細かいから、まるで実際にその場面を見てきたかのように思い出せる。「泣ける」なんていう言葉でくくってしまうのはもったいない、極上の一作だ。

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  島村 真理
 
評価:★★★★☆
 爆弾テロによって夫と娘を喪った静香。復讐への執念で立ち直った彼女は、戦士となってテロ組織の壊滅へと向かう。
 直球勝負だと思いました。すでに地球以外の惑星で暮らすようになった人類。政府に反発する悪の集団。過酷な訓練をつんでそれを打ち砕こうとする主人公。なんとわかりやすいのでしょう。しかし、読み出したら止まらない、スタンダードな愛と友情と冒険の物語は、大きな声では言えなくても誰でもが好きなのです。勧善懲悪というのは気持ちがいいものなのです。
 SFというからには、想像を超えるような生物や習慣、機械なども注目するべきところ。本書ではそれはたぶん「飛びナメ」です。三十センチくらいの軟体動物。淡い紫色で体の両脇から羽が生えている。そう、ナメクジに羽が生えているという生き物。ふつうは水のない乾燥地帯にいるために姿はあらわさないが、いったん雨が降ると……。ナメクジが世界で一番嫌いな私には想像したくない地獄絵図でした。

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  荒木 一人
 
評価:★★★★★
 一番好きなモノは他人に教えたくない私としては、本当は書評を書きたく無いのだが(笑)大好きな作品のひとつ。SFとしては三流、復讐劇としては二流、読後感は一流、そして、嗜好としては超特級。SFと言うより何でもありの娯楽大作。好みは真っ二つになると予想する。蛇足だが、何やら含むところが有りそうな、固有名詞にも爆笑して下さい。
「黄泉がえり」でメジャーに成りすぎてしまい、私自身の好みからは外れつつある昨今だが、初期の作品が面白い。
 神鷹静香は、平凡な24歳の主婦であった。一家で遊びに行く途中、汎銀河聖解放戦線のエルンスト・グレム暗殺というテロ行為の巻き添により、愛する夫の啓一と四歳になる愛娘の由里が消滅した。運命の悪戯により、生き残った静香の心は壊れる。
 静香を盲愛していた父:秋山題吾は決断する。生きる目的のために「愛」を失った娘に、「憎悪」と云う一番効果のある劇薬を使う事を。突飛な行動が出来ないよう、万一の事を考え安全装置をつけたはずだったが……
予想に反し、脆弱そうに見えた静香には、強靭な精神が宿っていた。

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  水野 裕明
 
評価:★★★★☆
 遥かな昔に読んだスペースオペラの数々、その中でもレンズマンシリーズを思い出してしまった。絶対的な善と悪との対立、復讐に立ち上がる主人公とそれを助ける元軍人、さらには彼らを取り巻く個性的な脇役たち。次々と現れる超現実的なスーパーウェポンや超能力……。久しぶりに宇宙活劇を楽しませてもらった。現在の現実の世界はこんなにシンプルに割り切れるわけではないのだが、だからこそ、今こういうはっきりした構図の物語がより面白く読めるのかもしれない。上下2巻でかなりの分厚さなのだが、没頭してしまって短時間で読了してしまった。ちょっとマンガ風なストーリー展開や人物描写が気になると言えば気になったが、作品の瑕疵となるほどのこともなく、SFがそれほど好きでない人も楽しく読めるだろうと思える1冊だった。

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WEB本の雑誌今月の新刊採点【文庫本班】2006年11月の課題図書
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