WEB本の雑誌今月の新刊採点【文庫本班】2007年1月の課題図書>マンハッタン少年日記 文庫本班
 
マンハッタン少年日記
マンハッタン少年日記
ジム
・キャロル (著)
【河出文庫 】
税込893円
2006年11月
ISBN-4309462790

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  久々湊 恵美
 
評価:★★★☆☆
巷でドラッグに関する文章や映像が流行っていた頃、この作品を読んだ記憶があります。
もうあれから10年近く経っての再読。
その当時ドラッグというものに対して、その捻じ曲がった幻覚を一度でいいから体験してみたいといった感じで一種憧れのようなものがありました。
改めて読み直して一番に思ったこと。ドラッグにのめりこみ無軌道な人生へ堕ちていく様への恐怖。
最初はポツポツとドラッグに関することが書かれていた日記が、日を追うごとにドラッグがなければ世界が回らなくなってしまう、その異様な欲望。
その当時ドラッグは遠い世界にあるもののように思えたいたけれど、今は隣り合わせに存在しているもののように感じられるからなんだろうか。
鬱屈したものがあまりに大きくドラッグへ手を出してしまった、のではなく興味本位から始めてしまう、その安易さだろうか。
私も主人公のように「すぐにやめられるだろう。ジャンキーになることはないだろう。」と思ったことがあったなあ。
なんて振り返ると、ゾッとしてしまう。

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  松井 ゆかり
 
評価:★★★☆☆
 率直に言って、自己破壊的なものにはほとんど興味が持てない。それでも話(本書は日記なわけだが)がおもしろければいいだろうが、これは…。ビートニクっぽい感じが好きな方には合うのではないかと思うが。
 もちろんこの『マンハッタン少年日記』にも注目すべき点がある。ここに綴られている内容とほぼ同様の体験をした著者が、現在は立ち直っているという事実だ。冷静な判断力を持ち合わせていたとは思えないこの状態からよくぞ、と感心せずにはいられない。だから、この本はアンチ手本として読むのだったら賛成である。よく体育の先生とかが実技で失敗したとき言うでしょう、「これは悪い見本です」って。あんな感じ。

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  西谷 昌子
 
評価:★★★★☆
 スポーツの好きな人気者だったが、ドラッグやシンナーに溺れ、犯罪に走るようになる少年の日記。露悪的にもならず、自分を正当化することもせず、ただ淡々と出来事を綴っている。流れるような文体がどこか詩的で、切ない感情すら呼び覚ます。
少年たちの日常にはどこか暗い影がつきまとう。娼婦の息子であることをからかわれて傷つく友人をはじめ、皆、大人たちの歪みに惑わされ、抵抗する。大人たちの振りかざす正義よりも確かなものを切実に求めているようにも見える。
この作品が普通の日記と明らかに違うのは、書き手が友達のことをひとりひとり丁寧に書いていることだ。こんな風に友達を見ている人間が、ただの軽薄なジャンキーであるはずがないのだ。正しい、自分が従いたい、と思える基準が周りのどこにも存在せず、ただドラッグに溺れるしかなかった……そんな状況の痛さがひしひしと伝わってくる。

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  島村 真理
 
評価:★★★☆☆
 バスケットボールのスター選手で、ドラッグ漬けのジャンキー少年の日記。堕落的な生活をしてる彼なのに、新鮮でみずみずしい印象をもつ。どうしてこんなにひきつけるのだろう?
 ひとつは、ジム・キャロルの日記であるということ。「人生は小説より奇なり」とはいうけれど、ボンド、カーボナ、ヘロイン、マリファナ、ハシシなどなどとアルコールにセックス、暴力、強盗と、ありとあらゆる堕落しきった犯罪告白のごった煮であること。そして、自堕落な生活に落ち込んだ、ティーンエージャーの繊細さがありありとわかるからだ。その純粋さがストレートに胸をうつ。
 死の際まで行った少年の心の告白は壮絶で、読むものに何か考えさせる機会をあたえる。犯罪に手を染めたりしたことはほめられないが、今はちゃんと立ち直ってまっとうな生活をしているジムの過去をこの本で追体験してみると見えてくるものがあるのかもしれない。

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  荒木 一人
 
評価:★★☆☆☆
 ジム・キャロルの13歳から16歳(1963-1966)までの自伝。青春日記とありますが…爽やかさは、ほぼありません、結構エグイです。暴力に犯罪だらけ、セックスにドラッグにホモが好きな方はどうぞ。読後感は、知らなくて良い世界もあるんだね。
 始まって6行でホモ、2ページ目で喧嘩、3ページ目でドラッグ。そんな日記。
 ジム・キャロルのファンでも何でも無い私には本の良さがさっぱり分からなかった。分かろうともしなかった、と言うのが本当のところだが、別段分かりたくも無い。確かに、13歳の子供が書いたにしては、出来が良いのだろうが、面白くも何とも無く淡々と読了。こういう世界に憧れが欠片も無い人間には嫌悪の対象でしか無い。

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  水野 裕明
 
評価:★★☆☆☆
 この作品は、現在は詩人・作家として活躍している作者の60年代、13歳から16歳の実際の日記であるという。ドラッグ・マリファナなどの薬物の乱用を始めとして、同世代の少女との乱交やケンカ、さらには窃盗を繰り返しながら、一方ではバスケットボールチームのエース選手として活躍し、優秀な高校へと進学もするという二面性のある生活。しかもそれを発表し感受性豊かな少年の日記と評価する……。なんと病んだ社会であることか。でもこの病みよう、かなりテイストは違うが今月の課題図書である「シンセミア」と同じではないだろうか。60年代のアメリカと現代の小説の舞台を同じに論じることはできないだろうし、登場人物が一方は主人公が少年でバスケットボールの選手であり、他方は成年で覗きや盗撮マニアと違うにしろ、犯罪性を隠し持った生活の二面性など、シンセミアの登場人物たちと似たところを感じ、帯に書かれた『ただ純粋になりたい。60年代ニューヨークのストリートに輝いた青春』という言葉には素直にうなずけなかった。

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