WEB本の雑誌今月の新刊採点【文庫本班】2007年1月の課題図書>水滸伝 (2) 文庫本班

水滸伝 (2)
水滸伝 (2)
北方謙三 (著)
【集英社文庫 】
税込630円
2006年11月
ISBN-4087460940
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  久々湊 恵美
 
評価:★★★★☆
一巻目では、あちらこちらで登場人物達が不条理な権力や腐ってしまった国に対する己の中にある思いに気がつき、立ち上がろうとする様が描かれていた。
今作では、その散らばっている同志達が少しずつ集結していく。
男の影には女の姿あり、ということで今回は女性の登場もかなり重要になっている。
どちらかというと今回登場する女性達との関係は、どうしようもない別離やかなわぬ思いに覆われた哀しい要素を多く含んでいる。
どうしようもなく空しくなり、自分を消してしまいたい、忘れたいと廃人同然となってしまう男達。
どこまでも地に堕ちていくかのような人物達が、その後国を変えていこうという熱い想いを抱いた同志達に出会い、再生していく姿は静かな清々しさがあって、読んでいるこちらにもその強い結束力が伝わってきました。
一人の力から複数の大きな力へとその勢い伸ばしていく。そしてその裏側に見える一人一人の人生が物語を紡いでいくのだ。

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  松井 ゆかり
 
評価:★★★★☆
 同じく今月の課題図書である「水滸伝と日本人」を読了直後に読み始めたのだが、ほんとうに大胆な手の加えようであることが実感された。「水滸伝と日本人」を読んでわかったことだが、この第2巻の最初の大きなエピソードである武松と兄嫁にまつわる恋愛絡みの悲劇も、原書においては兄嫁は兄の仇としか書かれていないようだ(一方で、原書での兄弟の強い絆はここでは極めてもろいものとなっている)。
 私のひいきの王進(脳内キャストは山本學)の出番が少ないのがやや不満だが、本書では物語がまた大きく動いて今後の展開からますます目が離せなくなった。
 北方水滸伝、文庫版は月いち刊行。毎月忙しいな、こりゃ。

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  島村 真理
 
評価:★★★★★
 文庫版2巻目も好調です。びっくりするぐらい登場人物が多くて、そのうえ名前も覚えにくいのに全然苦にならない。志に一丸となって熱くなる気持ちが、どんどん伝わってきて、そのままどんどん巻き込まれる感じ。とにかく心地いいのです。
 今回は、女を想う男というのが印象的。武松の潘金蓮、朱貴の陳麗、宗江の閻婆惜と、それぞれ関係はちがえども、すべてが男のためにある女なのですね。献身的すぎて気味が悪くもありますが、男が男らしくあるというためにはよく貢献しているようです。今後は別の種類の女性というのも見てみたい……けど出て来るのか?
 さて、人が人に出会い、影響しあって、大きく飛躍する様を楽しめる本。「水滸伝」に熱くなったら「Club水滸伝」へ。アドレスを登録したら、毎月北方謙三からメールがいただけるのだ。「水滸伝は、青年の挫折と再生の物語でもあるのだ。そこには君と重ね合わせることができるものが、必ずある、と俺は信じている。」とか言われたら、へへーとなりつつうれしい。

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  浅谷 佳秀
 
評価:★★★★☆
 八つにに分けられた章ごとに、一人の人間にスポットを当てる話の進め方は第一巻と同じ。第二巻はまず、兄嫁である潘金への許されぬ恋に身を焦がした武松が引き起こす悲劇と、その後、絶望に苛まれた武松が、死ぬために虎と戦いながらも、とうとう素手で虎を倒すにいたるエピソードという、非常にドラマチックな話から始まる。そして後半には、豹子頭林冲が変節漢王倫と対決した末に山寨を奪い、これを梁山泊と命名するという、この巻のクライマックスがある。
 地方巡検視の楊志をはじめとする、新しいキャラもどんどん出てくる。展開のテンポの速さが実に小気味よい。そして、やはりというか、とことん男くさい。とことんハードボイルド。
 ガツンとくる読み応えというのは、まさにこういう本のことをいうのだろう。全19巻、もはや読まずにはいられなくなった。

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  荒木 一人
 
評価:★★★★★
 韋編三絶

天傷の星:武松(行者) 人並みはずれて、膂力が強かった。虎を拳で撃ち殺せた。只々、一途で不器用な人間は、一番大事なものを壊した強い悲しみから自害を試みる。だが、天は生きろと云った。
地幽の星:薛永(病大虫) 祖父の代からの薬師。医師の安道全と組み、互いの卓越した知識と技術で病に挑む。
天暗の星:楊志(青面獣) 武挙合格、楊業の子孫。生粋の軍人の家系。顔を大きく覆う青痣がある軍人。巡検視とし勲を挙げなかった責を問われ、禁軍を追われる。
天間の星:公孫勝(入道龍) 河水沿いに砦を築上を試みたが捕らえられ地下牢に二年閉じ込められる。
地耗の星:白勝(白日鼠) 元は手癖の悪いこそ泥。安道全、林冲と一緒に脱獄する際、雪中で盲腸の開腹手術を受ける。
天異の星:劉唐(赤髭鬼) 赤い髭と碧い目を持つ、公孫勝の部下。致死軍編成の訓練を担当している。
地妖の星:杜遷(摸着天) 山寨で王倫に次ぐ二番目の地位に居る。王倫の有り様に不満を抱いている。
地魔の星:宋万(雲裏金剛) 山寨で王倫、杜遷に次ぐ三番目の地位に居る。杜遷と同じように、王倫に不満を持っている。

梁山湖に浮かぶ山寨。志し或りし者も、時と共に腐敗するのか。頭領の王倫は堕落していた。晁蓋は遂に義挙する。賄賂を強奪財し、山寨へ入りたいと申し入れるが…

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  水野 裕明
 
評価:★★★★★
 前巻からちょっと間が空いて、また読み出すと登場人物たちが久しぶりに会った友人の様に感じられた。それほど一人ひとりが巧みに描かれていて、親しめて、本当に読むたびにワクワクした、文句なく面白い1冊(というか全17巻あるらしいのだが……)。まだまだ梁山泊108人一人ひとりの紹介編及びそれぞれの出会い編でしかないのに、エピソードの一つ一つが実によく出来ていて、しかも全体の構造が“役人・時の権力者は腐敗していて悪であり主人公たちは義の戦いを行う”というように明快で、巻1、巻2と一気に読んで物語そのものを楽しめた。闘いを描きながら、同志の友情や人と人との出会い、夫婦の死別などを情感豊かに伝えられているところもスゴイ点ではないだろうか。北方謙三の作品は今回初めて読んだのだが、文体や語りにそれほどの癖もなく、非常に読みやすくこれから読み続ける楽しみがまた一つできたとうれしい限りであった。

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