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ハルさん
藤野恵美(著)
【東京創元社】
定価1680円(税込)
2007年2月
ISBN-9784488017316
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
小松 むつみ
評価:★★★★
人形作家のハルさんが、一人娘の結婚式の日に思い出す5つの謎の物語。ハルさんの回想として描かれる物語は、どれもほんわかと温かで優しい。そして、その物語にちりばめられた謎を、見事に解き明かすのは、なんと、若くして亡くなった天国の奥さんなのだ。
妻をなくしたハルさんと一人娘のふうちゃんの、二人暮らしのエピソードが、きめ細かく丁寧に描かれる。どちらかといえば頼りない、ぼんやりしていることも多いハルさんだが、幼い娘との、子どもらしい無邪気さを優しく包む、慈愛あふれるやり取りには、本当に心が温まる。
ミステリーといえばミステリーだが、いわば『日常の謎』タイプ。しかし、第一人者の某氏にも勝るとも劣らない、極上のほのぼのミステリーだ。
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川畑 詩子
評価:★★★
父ハルさんと、娘ふうちゃんの親子二人暮らし。ふうちゃんの成長を物語る日常の中の謎を軸にした、優しい物語。
ハルさんは人付き合いが苦手な上に繊細だから、いじめに関するテレビ番組や、学校から配られる夏休みの注意事項(夏休みは犯罪や事故に巻き込まれやすいので、親御さんはご注意を的な)とふうちゃんの行動がすぐに結びついてうろたえるし、胸を痛める。うろたえるのはふうちゃんを愛しているから。心を乱しながらも娘ふうちゃんの考えること、決めたことを信頼しぬく。それには相当な覚悟が必要だろう。かなり芯の強い人だ。
ハルさんに聞こえた亡き妻瑠璃子さんの声。「ふうちゃんが家から出ないで、安全な管理下にいれば、不安も気がかりもなく、心穏やかに暮らしていけるのかもしれない。でも、それは親の都合よね。」この一言がエピソードや謎よりも印象的だった。
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神田 宏
評価:★★★
妻に先立たれた人形作家。その娘の二人三脚のハートウォーミンな成長譚。まあ、大きな外れはないだろうとの思いを裏切らない。定型に落とし込まれた一章づつにちょっとした事件も盛り込まれて、それなりに楽しめた。それだけのはずだったが。意外や意外。キャラが立っているというか凡庸でいながらいい味を出しているのです。人形作家だからといって天才肌でもない父「ハルさん」や商売相手の「浪漫堂」。娘の「ふうちゃん」。それぞれが個性を持って生きているのだ。ミステリとしてよりジュブナイルっぽい作風に思えた。願わくばこの作品を読んだ10代の少年少女たちが素直に「よかった」と思える世の中であればいいが。
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福井 雅子
評価:★★★
娘の結婚式の日に、花嫁の父親であるハルさんが、天国の妻に語りかける形で娘と暮らした日々を振り返り、ほのぼのと心温まる5つのエピソードを回想する。
この本のレーベルがミステリ・フロンティアで、帯には「ミステリ」とか「謎」という言葉が使われているため、違うものを期待して読み始めてしまったが、これは謎解きでもなければミステリでもない。強いて言うなら、童話でありファンタジーである。非現実的だとかありえないなどと野暮なことを言ってはいけない。ほのぼのエピソードをそのまま楽しみ、一緒にふんわりした空気に包み込まれること、それがこの作品の正しい(?)読み方である。そうすれば、読後は心が温まり、幸福感に包まれること間違いなし。まるで寒い日のホットミルクのような作品である。ふうちゃんのかわいらしさが読み終わっても心に残る。
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小室 まどか
評価:★★
人形作家のハルさんは、一人娘のふうちゃんの結婚式にあたり、妻を亡くしてから今日までの、ふうちゃんの成長の過程を回想していた――。
ほんのりとふしぎな事件に絡めて、父と娘のあたたかな記憶と、ささやかなすれ違い、娘の成長に伴う関係性の変化が、ゆったり、やわやわとしたテンポで描かれている。文句のつけようのないいい話。だけど、それだけと言ってしまえばそれだけなのだ。
父と娘は、おたがいを思いやりあってはいるが、それぞれに葛藤を抱えても、ぶつかりあうことがない。どことなく遠慮しあっていて、親子関係としては不自然な感じで食い足りないのだ。結果、うがった見方をすれば、娘は父の言葉の端々や母の遺した言葉をヒントにやたらとしっかり独断的に成長していき、反面、父はいつまでも妻に頼って取り残されていってしまうようにも見える。せっかくのいい話。ほのぼの、だけで終わらないでほしかったといったらよくばりか。
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磯部 智子
評価:★★
帯に「ほのぼのミステリ」などとあると、ほのぼの出来ない人間には辛い。これまた男の子育て物語。人形作家のハルさんは妻と死別し男手ひとつで一人娘・ふうちゃんを育てるのだが、その課程で起こる日常のミステリを亡くなった妻・瑠璃子さんと共に(!)解き明かしていく。(う〜む……)娘の結婚式当日から回想するかたちで、先行きの不安がない完了した安心のなか物語は始まる。幼稚園で隆くんの玉子焼きを黙ってとったのは誰か、小学4年の時突然「家出」したのにはどんな事情があったのか、作家自身が若い女性であり、そう昔の事ではない思春期の少女の成長する姿も丁寧に書き込まれ、とても可愛らしい物語であることは否めないが、可愛らしいと感じるということは、読み手を揺さぶる、手に余るようなものではないということでもある。一通りではない片親だけの子育てを、こんなにも悪意がみえない善意だけの世界にしては、安心を求め信じたいことだけを見て生きようとする人間の頑なな子供っぽさばかりが気になってしまう。ね、ハルさん。
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林 あゆ美
評価:★★★
ハルさんは人形作家。妻の瑠璃子さんには早くに先立たれ、父親ひとりで娘ふうちゃんを育ててきた。そのふうちゃんも結婚することになり、ハルさんはお墓に向かって瑠璃子さんに報告する。
ふうちゃんの成長を思い起こしながら、その時々のミステリをやさしくあったかく解いていく。ヒントをくれるのは、意外(?)な人。ハルさんは、そのヒントを頼りに、ふうちゃんの謎をときつつ成長を見守ってきた。
大事な娘を思う気持ちが真面目に伝わってくる、心あったまるストーリー。現実の結婚式直前のふうちゃんに時を戻しながら、メリハリつけて回想されていく話に聞き入ってしまう。
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