年別
月別
勝手に目利き
単行本班
文庫本班
WEB本の雑誌今月の新刊採点【文庫本班】2007年9月の課題図書 文庫本班

災いの古書
災いの古書
ジョン・ダニング (著)
【ハヤカワ・ミステリ文庫】
税込945円
2007年7月
ISBN-9784151704093

商品を購入する
 >> Amazon.co.jp
 >> 本やタウン

  鈴木 直枝
 
評価:★★★☆☆
 毎月の翻訳小説の応酬に鍛えられたのだろうか。500ページを超える大作も遜色なく読み終えることが出来るようになった。いや、編集部の選書の巧みに磨きがかかったからに違いない。サイン本が鍵となる本書は素材への興味もさることながら、言葉を発することの出来ない少年が気になって「何かある、きっと何かある」と読む楽しみに先導されっぱなしだった。物語の発端は、蔵書の処分依頼。依頼主は妻の元親友。その夫は妻の元カレ。蔵書を処分する私は元警官。今古書店主。もうこれだけで一癖あって立派なミステリーなのに、まだ序の口という!嬉しすぎ!
 本の取引はコンピュータが主体となり、読みたい本ではなく売れる本が良書とされ高値がつく。店舗書店の終焉と金と欲の台頭が出版業界を牛耳る様子など哀しみも感じる。本に興味があるかのようで、朝刊のほかには活字に触れない人の多さもチクリと指摘。犯人の謎解き以上に本好きには、読みのポイントが多い。で、少年は?

▲TOPへ戻る


  藤田 万弓
 
評価:★★★☆☆
 毎回、古書に関する薀蓄で楽しませてくれる、古書店主クリフシリーズの第四作目。今回はサイン本がテーマで、マニアの方々からすると薀蓄度合いが少なくて物足りないようだが、一般人にはこれくらいで十分。550ページ超をぐいぐい読ませる勢いのあるミステリー。
 主人公は元警官にして「古書探偵」のクリフ、パートナーは知的なキャリア女性である弁護士エリン。熱血主人公にクールで繊細なパートナーというのは王道ミステリの味付けだろうけれども、おそらく作者のダニング(古書販売業者)は、本の薀蓄を披露するためにこのシリーズを作ったのでは?という疑惑が晴れない。クリフシリーズ第一弾「死の蔵書」は文句のつけようがない名作だったが、第四作ともなるとさすがにネタ切れなのでは。さすがの筆力で、最後のどんでん返しまで楽しませてくれるけれども、ミステリも薀蓄も中途半端になってしまった感がどうしても否めないのだ。ちなみに、一番面白かったのは、序盤のクリフの言葉を借りて作者がネット書店に対する見解を述べるくだりだったり。

▲TOPへ戻る


  松岡 恒太郎
 
評価:★★★★☆
 とにかく読み応えのあるミステリー作品。シリーズ累計七十万部もなるほど頷ける、古書にまつわるシリーズ第四弾。 
 古本屋の店主クリフが、彼女である弁護士エリンの依頼を受けて殺人事件の真相に迫る。
鍵を握るのは現場から沢山出てきた価値のある著者のサイン付き古書。
 ところが読み進めるうちに、この作品って日本の片田舎に場所を変えるだけで、そのまんま二時間サスペンスドラマに使えそうだななんて考えてたら、途中から頭の中ではクリフ役を船越英一郎が演じだした。そうなるといつの間にやらすっかり『古本弁護士 飛騨高山恋の道行き殺人事件 鑑定本が導く 仕組まれたトリックの謎』ってな様相を呈してきて随分野暮ったくなってしまった、実に申し訳ない。
そんなわけで、強引に船越英一郎主演で最後までお送りしてしまいましたがこのドラマ、なるほどね!なるほどね!と満足行くエンディングが待っておりますので、どうか御期待いただきたい。

▲TOPへ戻る


  三浦 英崇
 
評価:★★★★☆
 「古本屋なのに、事件を解決させられる人」と言えば、日本では、かの妖怪シリーズ(京極夏彦)で知られる京極堂こと中禅寺秋彦が有名な訳ですが。やっぱ舞台がアメリカだと、普段はロクに動かないのに、ラスト100ページ延々しゃべり倒したりするタイプより、夜の山中で一夜を張り込みに費やしたり、トラブルをしばしば腕力で解決したりする方がふさわしいのかな、と。

 シリーズ4作目、とのことですが、特に前作まで読んでいなくても問題なく読めました。恋人の弁護士・エリンの旧友・ローラが、夫を猟銃で殺害した件について、調査を依頼された古本屋・クリフ。ローラは犯行を自白しているものの、どうもいろいろ裏に事情を抱えているらしく……ローラの家からサイン入りの稀少本が大量に発見され、事件は一層複雑な様相を呈してゆきます。

 この落とし方って、どこかで……と思ったら、ある意味、妖怪シリーズの某作(おい)。古本屋って奴はもう(違います)

▲TOPへ戻る


  横山 直子
 
評価:★★★★★
古書店主クリフシリーズの一冊。
彼の恋人エリンは昔、本を集めている男の人と付き合っていた。
彼女自身は有能な弁護士として猛烈に忙しく日々を送っているのだが、ある時クリフにある事件にまつわる屋敷の本を鑑定にしてくれないかと持ちかける。
事件と言うのが、彼女の元カレが殺され、しかも容疑者が元カレの現在の妻なのだ。
その妻はもともとエリンとは親友で…。
とまぁ、たいそう込み入ったワケアリ関係の登場人物がずらりと出揃う。

その問題の本というのが、量も半端ではなし、どうやらすべて貴重なサイン本ばかりらしい。
クリフは本の鑑定をすべく、殺人現場に赴くが…。
彼はエリンに頼まれた以上のことを、つまり大胆不敵で向う見ずな行動を立て続けに起こすので、ハラハラ、ドキドキしっぱなし。
面白かったのは彼が古書フェアに出かけるシーンで、そこで並べられた本の描写やサイン本を手に入れるくだりなどわくわくしながら読んだ。
途中で「エリンには申し訳ないと思っている。本のことになると、私の目の色が変わると理解してもらうまでだ。」
なんて言われると、恋人でもない私が「ユルス、ユルス」なんて言ってしまいそうで困った。^^;
それにしても、である。二転三転して、真犯人が分かった時にはゾッとした。
最後の数10ページはジェット機並みの速さで読み飛ばし、最後の一行に大いにうなる。
まさに、その通り。

▲TOPへ戻る


WEB本の雑誌今月の新刊採点【文庫本班】2007年9月の課題図書 文庫本班

| 当サイトについて | プライバシーポリシー | 著作権 | お問い合せ |

Copyright(C) 本の雑誌/博報堂 All Rights Reserved