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4月17日(月)プレゼント

 最近なにかと話題の徳間書店だが、その徳間書店発行の雑誌「GoodsPress(グッズプレス)」に連載していたエッセイが、ただいま発売中の5月号で終了した。あとで聞いたら、先方は書評を頼むつもりだったらしい。ただ、モノ雑誌なので、本を紹介しなだから少しだけモノに触れてくれればいい、という企画だったようだ。それを私が誤解して、モノに関するエッセイだと思ってしまった。ただし、本にも少しは触れると。つまり、編集部の企画が「本の紹介が中心で、モノに関するエッセイが少し」だったのに、依頼された私が「モノに関するエッセイが中心で、本の紹介は付け足し」と思ったのである。始まってみたら、それでもいいかとなって、見開きエッセイが20回続いたわけだが、とても楽しい仕事であった。

 実は私、昔から買い物が好きだ。だから、書きたいことがたくさんある。たとえば、キャリアカートだ。たとえば携帯椅子だ。いったいそれぞれ幾つあるのか数えたことがない。なぜキャリアカートや携帯椅子を必要なのかというと、朝早くから競馬場にいくので開門を待つ間、座るための椅子が必要なのである。さまざまな資料を山のように持っていくため、それらの荷物を運ぶためのキャリアカートが必要なのである。だから持ってないやつを見かけると、これは便利そうだどつい買ってしまう。

 あるいは、タオルマニアでもあるから、しょっちゅうタオルを買っているので部屋の中にはタオルが山のようにあったりする。なぜタオルマニアなのかという話を始めると長くなるので今回は割愛。つまり、買い物好きとはいっても、たいしたものを買っているわけではない。

「GoodsPress」から連載エッセイの話がきたとき、そういうふうに買い物好きであることをどこかで聞いて、私のところに依頼がきたのかと思ったが、そうではなかったようだ。私はてっきり「買い物日記」を書いてよろしい、との依頼だと思っていたので、ホント、楽しい仕事であった。

 先日、連載終了の打ち上げを新宿で行った。歌舞伎町の外れにある上海料理店で、一人では絶対に行けない路地の奥にある店で、いやあ、おいしかった。編集長の澤村尚徳さんと、カメラマンの佐々木和隆さん、そして私の担当をしてくれた寺田剛治くんと4人で、おいしい酒を呑んだ。

 えっと思ったのは、酒宴が始まって1時間くらいしたころで、寺田くんが「お疲れさまでした」と大きな袋を差し出したのである。なに?

 なんとなんと、開けてみたら外国製の携帯椅子であった。とてもカッコいい椅子である。
 いやあ、びっくりしました。

 私、この業界で仕事をして40年になるが、連載終了に際してプレゼントをもらったのは初めてだ。
 他の人はどうなのか知らないが、初体験である。なんだかすごく嬉しい。

 違うか、2回目だ。いまから30年ほど前、薔薇の花をもらったことがある。
 この話は以前も書いたかどうか記憶にないので、書いておく。玉川高島屋で椎名誠が読書会をやっていたことがある。

 女性限定の読書会だったが、1年ちょっとで終了。すると会員の有志が、この会を続けたいと玉川高島屋に交渉して会場を無料で借りたのである。月に1回、2時間の無料貸し出し。ただし、自分たちだけでするのもなんだから講師を呼びたいと考え、椎名時代に2回ほどゲストで行ったことのある私に声をかけてきた。

 この有志たちとの(20人ほどか)読書会は1年ほど続いたろうか。さすがにそれ以上の無料貸し出しは無理だったようだ。で、その後は会場を新宿に移し、男性会員も募集し、私は講師を10年ほどで下りたけれど、菊池仁が引き継いで20年、いまは神楽坂で開いている。

 二子玉川の最後の日、つばめグリルでみなさんと食事していたら、玉川高島屋の担当者(若い男性であった)から私あてに薔薇の花が送られてきた。もぐりの読書会である。玉川高島屋になんの寄与もしていないのである。それなのに花をもらうとはなんだか申し訳なかった。花は枯れるから、残らない。でも、あのとき花をもらったという記憶はずっと残り続ける。それがプレゼントの力だ。

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