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6月19日(金)

 9時に立石書店の岡島さんが大きなバンを運転して迎えにくる。本日は本の雑誌スッキリ隊の出動要請があり、東松山へ約4000冊(実際には2000冊ほどだった)の引き取りに伺うのであった。同じくスッキリ隊の浜本と古書現世の向井さんは、浜本の車で向かっており、現地で落ち合うことになっている。

 10時半現地到着。着くまで雨が降っていたのに作業をはじめたら雨がやむ。ありがたし。

 母屋と広い庭に建つ6畳ほどの2つの物置小屋に本がたくさん収納されていた。床に山積みされた本が整理する本だそうで、部屋を分担し岡島さんと向井さんが紐で縛り、私がせっせとバンに運ぶいつもの役割分断で作業に取り掛かる。

 せっせと本を運んでいると岡島さんから「杉江さん、本当に無駄がないですよね。あと何回かしたら僕らより立派な古本屋さんになれますよ」と褒められ、とてもうれしい気持ちになる。50歳も間近になると仕事で人から褒められることなんてそうそうなく、しかも自分が最も得意とする単純肉体労働を認められるのはこの上ない喜び。

 2時間半で作業終了。約2000冊(100本)の本を引き取らせていただく。

 スッキリ隊の第2の楽しみはランチであり、念入りに調査したところ東松山はデカ盛りの町ということで、そのひとつ恵比寿屋食堂で昼食を取る。向井さんは分厚いソースカツが4つそびえ立つ恵比須カツ丼、岡島さんは240グラムのトンカツが2つ乗った恵比須カツカレーを注文。怯んだ私と浜本は、ふつうのカツカレーを頼む。味、量、値段ともに大満足大満腹。

 店の前で浜本、向井さんと別れ、また岡島さんに自宅まで送ってもらう。

 その車中、岡島さんから古本屋さんの商売についていろいろ伺う。きっと私が聞いていることは、これから古本屋さんになろうとしている人がいたらお金をいくら出してもなかなか聞けない古本屋の商売の肝みたいなことであり、なんだかひとりで話を聞いているのが幸せでありつつ、もったいない気持ちになる。それにしても岡島さんや向井さんと居ると心底楽しい。

 家に帰ると、この秋刊行予定で編集にあたっているとある書評集の組版が届く。大好きな文章を書く人のはじめての著作なので、武者震いがしてくる。

6月14日(日)

  • 幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)
  • 『幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)』
    高野 秀行
    集英社
    572円(税込)
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 雨降る中、電車に揺られ、辺境スタジオへ向かう。

 本日スタートの「高野秀行辺境チャンネル」の放送。こちらはZoomウェビナーを利用してのオンラインイベントなのだけれど、私は仕組みは思い浮かべられるもののIT能力がなく、その部分は高野さんの右腕のワタル社長にお願いす。

 ふたりで2時間ほどかけてセッティング終了となったところに高野さんから電話が入る。

「あのさ、辺境スタジオってどこだっけ?」

 あわててワタル社長が駅からの道順を教えるも、高野さんの口から飛び出したのは別の駅の名前であった。

 これまで何度も辺境スタジオに来ているはずなのにどうして別の駅で降りてしまうのか。コンゴのテレ湖にはたどり着くのに、都内某駅から徒歩5分のマンションにはどうして着けないのか。そういえば以前高野さんが言っていた「アフリカに行くのも新宿に行くのも一緒」ということは、こういうことだったのか。

 本来降りるべき駅名を伝え、そこで降りたら一歩も動かず改札に居ていくださいと指示し、ピックアップするべく駅に向かう。今回はオンラインイベントのためITの問題が最も懸念されていたのだけれど、それ以前に高野さんが来ないというまさかの自体が勃発するとは。

 講演45分前に高野さん到着。一安心。あとはスタートと同時にITトラブルがないことを祈りつつ、どうにか2時間、高野さんのデビュー作『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)について語りあかしていただき無事終了......と同時に辺境スタジオのネットが原因不明の不通に。再起動してもつなげ直しても一切つながらず。

 高野ITバミューダトライアングル恐るべし。まあ、それ以前にオンラインイベントなのに登壇者3人が同じ場所にいるのが恐るべしなのだが。

6月13日(土)

  • 平畠啓史Jリーグ56クラブ巡礼2020 - 日本全国56人に会ってきた - (ヨシモトブックス)
  • 『平畠啓史Jリーグ56クラブ巡礼2020 - 日本全国56人に会ってきた - (ヨシモトブックス)』
    平畠 啓史
    ワニブックス
    1,650円(税込)
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 大雨の中、電車に乗って某所へ向かい、旅本がずらりとならぶ本棚の撮影に立ち会う。かなり自分の蔵書と重複しているものの、知らなかった本がたくさんあり、つばを飲み込む。

 5時に帰宅。浦和レッズ対FC町田ゼルビアのトレーニングマッチ最後の一本だけYou Tubeで見る。アシスト前にピタリと足元におさめた新人武田のトラップにしびれる。もしやこれは...。

『平畠啓史Jリーグ56クラブ巡礼2020』(ワニブックス)を読んで心を整える。

6月12日(金)

 終日テレワーク。
 夕方、12キロランニング。
 娘と長友の体幹トレーニング。

6月11日(木)

 見本出しのため、『本の雑誌の坪内祐三』の見本を持って、取次店のトーハンさんに直行。先月はテーブルをひとつ置いての受付だったのだけれど、本日は4つの窓口が開いての対応となっている。ただし窓口にはビニールシートが設置され、感染対策が取られていた。日販さんと楽天ブックスネットワークさんは郵送で見本出し。

 その後訪問した地方小出版流通センターのKさんから「これ売れてるんだよ」と千種創一歌集『千夜曳獏』(青磁社)を教えていただく。うううう、なんてかっこいい本なんだと思わず手が伸びる。こんな造本ありなのか!と興奮していると、その前に同じく青磁社から刊行されている『砂丘律』という本も見せていただき、さらにさらに痺れる。

 午後、自粛中行うことのできなかったスッキリ隊の活動で、スッキリグリーンの岡島さんとともに某所へ蔵書整理に伺う。おおよそ1000冊の本をお預かりする。

6月10日(水)

  • 本の雑誌445号2020年7月号
  • 『本の雑誌445号2020年7月号』
    本の雑誌編集部
    本の雑誌社
    734円(税込)
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 7時に出社。電車は相変わらずほどよい感じ。

 在庫表をみながら7月1日より那須ブックセンターさんで開催いただく本の雑誌創刊45周年45点フェアの選書をする。

 45点あれば余裕だろうと思っていたものの、45年のうち半分以上の23年は本の雑誌社に所属しているわけで、その間に出た本は一点一点思い出があり、選ぶとなると困難極まりない。「那須ブックセンターに全点!」と送りつけしそうになる気持ちをぐっとこらえ、45点選ぶ。

 9時過ぎ、昨日一昨日に引き続き、事務の浜田、編集の高野が出社したので、本日の出社上限に達する。以降整理券配布。

「本の雑誌」2020年7月号搬入。今月の特集は献辞。

 午後、事前注文の〆作業を行っていると製本所より『本の雑誌の坪内祐三』の見本が届く。胸が張り裂けそう。言葉が出てこず、あふれでてくるのは涙ばかり。

 16時、腰につけているカイシャカウンターが週30時間を超え、ピーピー鳴り出したので、今週のオフィスワークは終了となる。BOOKS青いカバさんに「本の雑誌」を納品に行って、直帰。

6月9日(火)

  • アロハで猟師、はじめました
  • 『アロハで猟師、はじめました』
    近藤康太郎
    河出書房新社
    1,760円(税込)
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    HMV&BOOKS
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 7時に出社。電車は変わらずのほどほどな乗車数。ただしマスクは暑く、苦しい。

 9時過ぎ、昨日に引き続き、事務の浜田、編集の高野が出社したので本日の出社上限に達する。以降整理券配布。

 定期購読者分の「本の雑誌」7月号が、ひとあし早く製本所から届いたので、ハリハリツメツメ作業に勤しむ。

 午後、高野秀行さん、小林渡さんと今週末に行なうオンラインイベント「辺境チャンネル」の打ち合わせをZoomでする。第1回というかテスト版なので第0回と銘打っているのだが、デビュー作である『幻獣ムベンベを追え』について振り返りとことん語っていただく予定。

 それにしてもこちらのチケットは告知9時間で売り切れてしまい、高野さんの人気ぶりにひれ伏す。次回以降、枠を広げて対応しなければと渡さんと猛省す。

 書店さんからフェア結果のメールが届く。こちらのフェアはコロナが広がり出し、緊急事態宣言されるギリギリにスタートし、その告知すら「お店にきてください」と言えなくなっちゃいましたねと書店員さんとともに苦笑いしていたのだけれど、なんとふたをあけてみたら何度か追加注文していただくほどの売行きにビックリ。

 いやその売行きには理由があって、多くの書店さんが緊急事態宣言を受け休業していたなか、このお店は独立店舗だったのでその間もずっと営業を続けられ、その結果、県下のお客様がたくさんやってきていたそうなのだ。

 フェアの売上は大変うれしいけれど、このコロナで大変な中、売っていただいたことにただただ電話口で感謝することしかできず、苦しい。

 そしていつぞや、いやきっとあれは一年ほど前にサンブックス浜田山さんでフェアしていただいたときに編集の高野がこぼした言葉が頭に蘇る。

「うちはいい本たくさん作ってるから並べてもらえれば売れるんですよね!」

 あのときのフェアもたいそう売れて、だから彼女にとってはその喜びと誇りから出た言葉だったと思うのだけれど、それは裏返せば日頃並べてもらいきれてない営業の私の責任であるわけで、「並べてもらえれば売れる」という言葉は営業にとってたいそう重い言葉であり、また編集のその誇りを胸に営業しなければならぬと思ったのだけれど、それがこうしてまた同様の結果を見て、改めて決意を胸に燃やすのであった。

 5時に整理券を手にした浜本が、今月の新刊『本の雑誌の坪内祐三』の刷り出しを見にやってきたので、社内の重量、もとい定員がオーバーしたため、終業。神保町から上野まで歩いて帰る。

 帰宅後、風呂に入り、夕食を食べ、近藤康太郎『アロハで猟師、はじめました』(河出書房新社)を読む。

6月8日(月)

  • 果てしなき輝きの果てに (ハヤカワ・ミステリ)
  • 『果てしなき輝きの果てに (ハヤカワ・ミステリ)』
    リズ・ムーア,竹内 要江
    早川書房
    2,420円(税込)
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    honto
  • 52ヘルツのクジラたち (単行本)
  • 『52ヘルツのクジラたち (単行本)』
    町田 そのこ
    中央公論新社
    1,760円(税込)
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    honto

 通勤で利用している京浜東北線は先週よりだいぶ人が増えている感じ。マスク率は100%。蒸れて暑い。

 7時に出社。名古屋のらくだ書店本店さんでまもなく開催いただく「本の雑誌」バックナンバーフェアの看板を作る。もしや半日、あるいは終日かかるのではないかと予想していたものの、パソコンからぴったりのイラストを発見、あっという間にコピーも浮かび、できあがってしまう。社内にカラープリンターがないので、セブンイレブンに行って出力。きれいに貼って発送完了。肩の力が抜けた9時過ぎ、事務の浜田と編集の高野が出社。出社3人体制のため、本日の出社が上限に達する。

 明後日搬入の「本の雑誌」7月号の部数確認のため各取次店さんに電話をかける。それぞれの部数を記した配本連絡表を製本所さんへFAX。

 郵便物を出しに郵便局に向かうと、今月下旬に閉店するすずらん通りのキッチン南海の行列が、白山通りにあるココカラファインまで伸びていておののく。結局、ここまでではないしてもいつも行列ができていたため、行列が苦手な私はキッチン南海とは縁のない人生だった。無念。

 昼、北上次郎さんとZoomを繋げて、「北上ラジオ」収録。リズ・ムーア『果てしなき輝きの果てに』(早川書房)と寺地はるな『水を縫う』(集英社)。どちらも素晴らしき傑作。ただし「北上ラジオ」がなかったら読まなかった可能性も高く、テキストに選んでいただいた北上次郎さんに深く感謝する。

 午後、注文いただいた『本を売る技術』を丸善丸の内本店さんへ納品。またフェアしていただいている千駄木の往来堂書店さんへも追加分納品。額に汗がにじむ。終業。

 帰宅。風呂に入って夕食後、お茶の水の丸善Yさんにおすすめいただいた『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ(中央公論新社)を読み進む。

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