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10月16日(金)

  • 夢幻の街 歌舞伎町ホストクラブの50年
  • 『夢幻の街 歌舞伎町ホストクラブの50年』
    石井 光太
    KADOKAWA
    1,760円(税込)
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『夢幻の街 歌舞伎町ホストクラブの50年』石井光太(KADOKAWA)読了。色物を見る目で読み出した(そういう部分もかなり満足させられるが)自分を恥じたいくらい、素晴らしいノンフィクションだった。

 歌舞伎町のホストクラブの歴史と成り立ちを、老舗ホストクラブ「愛本店」とその創始者愛田武氏を中心に紐解き、ホストクラブにはいったいどんな人々が集まり、そしてどんな思いで営まれているのか──お金と欲望が極端にまみえる場所であるけれど、そのお金や欲望を産み出すコンプレックスというのは多かれ少なかれ誰でも持ってるものであり、自分の暮らしや会社でもこれを薄めたものが毎日起こっているわけで、それに気づいた瞬間、さらに夢中になって読み進んでしまった。

 一生足を踏み入れることのない世界を知り、そして自分の足元を照らす。これぞ、ノンフィクションを読む醍醐味であろう。大満足のノンフィクションだった。

 本日は日暮里まで歩いて帰る。神保町で『寿町のひとびと』山田清機(朝日新聞出版)を、千駄木の往来堂書店さんで、『エクソダス アメリカ国境の狂気と祈り』村山祐介(新潮社)と『酒ともやしと横になる私』スズキナオ(シカク出版)を購入。

 おもしろそうなノンフィクションが出すぎで、本屋さんに行くのが怖くなってきた。

10月15日(木)

 毎週木曜日は電話当番日。8時に出社。といっても事務の浜田、経理の小林も出社してきたので、注文のあった新宿の紀伊國屋書店さんに『英国ロックダウン100日日記』の直納へ伺う。月曜日にmp直納したばかりだというのに、もう追加とはうれしいかぎり。

 その納品先で仕入れのレジェンドHさんと久しぶりにお会いでき、諸々お話しているうちに、これこそが私が20数年続けてきた日常だという想いがこみ上げてきて泣きそうになる。

 本のこと、世の中のこと、あるいは家族のことなど様々なことを親しき中でも緊張感を頂きながら会話し、必要とあればすぐに本を届ける。その根底にあるのは本を一冊でも多く売りたいという気持ちとそれに応えたいという願い。This is 出版営業。

 渋谷に移動して営業を続けていると、とある書店員さんから電話が入る。今月いっぱいで定年退職になるというご挨拶。コロナであろうがなかろうが時間は残酷にもどんどん過ぎ去っていく。スマホ片手に涙があふれる。月内にご挨拶に伺う約束をして電話を切る。

10月14日(水)

 今月の新刊『暗がりで本を読む』の見本を持って、市ヶ谷の地方・小出版流通センターさんを訪問。コロナの中で、各取次店さんが郵送での見本受付となっているけれど、地方・小出版流通センターさんくらいは毎月顔を出し、いろんな話を伺わねばならぬという思いとともに、個性的な本が集まっているのでそれらを目にして自分も頑張らねばと奮い立たせるため、4月以降も訪問しているのであった。担当のKさんと長話。

 見本出しを終え一息ついたときには、神楽坂の入り口の路地を入ったラーメン屋・黒兵衛にて味噌ワンタン麺もしくは塩ワンタン麺を食し、至福の時を過ごすのだけれど、なんと黒兵衛、このコロナの中閉店してしまっていたのだ。こんなにコロナが憎いと思ったことはなく、あの最後の一滴まで美味しかった味噌ラーメンがこの世から消えてしまったとは涙が止まらず......。

 というわけで特に区切りになる食事もなく虚しさを抱えたまま有楽町線に乗り、池袋へ。その後、西武池袋線に乗り換え所沢へ。9月2日に所沢駅にオープンしたグランエミオ所沢にできたTSUTAYA BOOKSTOREを覗く。

 午後ののんびり時間だというのに、レジに行列ができ、店内もそこかしこにお客さんがたくさんいる。カフェや雑貨売り場が併設されているもののお店はスタンダードな作りで、本や雑誌が買いやすそう。こんなに賑わっている本屋さんを見るのは久しぶりだ。

 秋津の立ち飲み酒場を覗きつつ、直帰。

 DAZNにて浦和レッズ対柏レイソルを観る。久しぶりに手応えを感じる内容に拳を握ってしまう。すでに10月だけれど、そして第22節だけれど、やっとミシャサッカーから脱却し、大槻サッカーが浸透、表現できるようになったということだろうか。

 それにしても柏レイソルの10番、江坂はやばすぎる。大好きなアストン・ヴィラのグリーリッシュみたいで、相手チームながら惚れそうになる。

10月13日(火)

  • 飼いならす――世界を変えた10種の動植物
  • 『飼いならす――世界を変えた10種の動植物』
    アリス ロバーツ,斉藤 隆央
    明石書店
    2,750円(税込)
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  • 生還 ―『食人』を冒した老船長の告白
  • 『生還 ―『食人』を冒した老船長の告白』
    合田 一道
    柏艪舎
    1,870円(税込)
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    honto

 9時半に出社。
 今週は火曜日ですでに気力が雲散霧消してしまったらしい。

 来週10月19日(月)が平日休配日となると9月半ばに取次店さんから連絡があり、休配だけならまだしも窓口業務もお休みとかで、突如それにまたがる見本出しが一日早まることになったのだった。

 できることなら本作りというのは搬入日より先に先に進行しているのでもう少し早く連絡いただけると助かるのだけれど、何かしら諸事情があるのか私が単にその情報を見逃していたのかもしれず、まあ、とにかくゴタゴタ言ってないで目先の校了日のことを考えねばならぬのであった。

 ちょうど我が編集担当本、徳永圭子『暗がりで本を読む』が21日搬入なので、慌てて印刷所に見本が一日早まるんだけどと相談したところ、C社のT氏は、「では校了を一日早めてください」と、当然といえば当然、1足す1は2みたいなことを言ってきて、鬼の目にも涙はあるものの、C社のT氏の目には涙はなく、私の目に涙がいっぱいこぼれ落ちた。

 というわけで、死にものぐるいで校了を一日早めた『暗がりで本を読む』を、涼しい顔をしたC社のT氏が見本を届けにきたのだが、もうこの『暗がりで本を読む』が素敵なのなんの、その美しさを見たらC社のT氏への恨みつらみは一切消えて、次回こそは校了日を無視してやろうと頑なに誓ったのであった。

 そうこうしているとちょうど東京にいらしていた徳永さんが会社にやってきて、自著とご対面。

 初めて本を出す人がその初著書を手にされる瞬間というのは何事にも代えがたいというか、編集担当としては責任がありすぎてとても見ていられない気分なのだけれど、クラフト・エヴィング商會さんが素敵な装幀にしてくださったおかげで、胸を張って手渡すことができる。

 いつも冷静な徳永さんも「きゃーきゃーきゃ」と声をあげて喜んでくださり、なんだかほっとしたのであったが、まあ、私の場合、二足のわらじというか、いい意味でポリバレント、要するになんでも屋なので、ここからは営業マンとして対応せねばならず、息をつく暇もなく、出版に終わりはないのであった。

 というわけで営業として最初にすべきは神頼み。帰りに神田明神に寄って重版出来祈願を真剣にす。

 その足で上野まで歩き、明正堂アトレ上野店さんで本を購入。1冊作ったら10冊買っていいマイルールに従い、ひとまず2冊を利用。

『飼いならす 世界を変えた10種の動植物』アリス・ロバーツ(明石書店)
『生還 「食人」を冒した老船長の告白』合田一道(発行:白艪舎/発売:星雲社)

 コロナ以降の我がニューノーマルの暮らしのなかではじまった「なるべく徒歩帰宅」のおかげで、この明正堂アトレ上野店さんが私の普段使いの本屋さんのひとつになったのだが(日暮里まで歩くときは古書ほうろうさんと往来堂書店さんが、王子まで歩く際はBOOKS青いカバさんとブックス王子さん)、だんだん身体に馴染んできて、とても使い心地というか買い心地がよい感じになってきて幸せだ。

10月12日(月)

  • おべんとうの時間がきらいだった
  • 『おべんとうの時間がきらいだった』
    阿部 直美
    岩波書店
    2,090円(税込)
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 7時に出社。

 9月からはほとんど毎日出社するようになっているのだが、月曜日は7時出社、火曜日は7時15分出社、水曜日は7時30分出社と早出するものの、木曜日には心がくじけて9時半出社となり、金曜日は会社に行くのにも相当な気合を入れねばならぬわけで、新型コロナが蔓延しニューノーマルな暮らしになったところで、私の筋金入りの怠け心はそうやすやすと変わるわけではないのだった。

「本の雑誌」11月号搬入。今月の特集は、「出版で大切なことはすべてマンガで学んだ!」。なんといっても我が座右の書は『編集王』だ。

 今月の巻頭グラビアで撮影させていただいた明屋書店中野ブロードウェイ店さんが、バックナンバーフェアを開催していただけるとのことで、セブンイレブンのコピー機でフェア看板をプリントし、貼りパネに貼って持参。それとともに追加注文をいただいた新宿の紀伊國屋書店さんに『英国ロックダウン100日日記』を直納。またコロナ禍で助っ人アルバイトの出社を制限しているため、直扱いの書店さんや古本屋さんにできたばかりの「本の雑誌」を届けて廻る。「本の雑誌」は創刊45周年らしいが、やっていることはまるで変わっていないのだった。

 阿部直美『おべんとうの時間がきらいだった』(岩波書店)読了。

 大嫌いな飛行機に乗るときに唯一楽しみにしているANAの機内誌『翼の王国』の人気連載「おべんとうの時間」の書き手である著者の半世記なのだけれど、これがすごい本だった。

 ルーティーンが崩れると怒鳴り散らす父親、その父親の言うがまま耐え忍ぶ母親、留学するまでそのがんじがらめの家族のなかで怯えながら暮らし、そして夢だったアメリカ留学の先では、コミュニケーションの壁にぶち当たる。その中心にはいつも食事があり、その食事(お弁当)から家族というものを見据えていく。

 相当の覚悟を持って向き合い、そして吐き出された、家族という一見簡単そうに見えて最も理解不能な関係性に迫った素晴らしい本だ。

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