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10月26日(火)

 JPROの『「定期誌・増刊」登録について出版社説明会』をオンラインで拝聴する。JPROというのは出版社の刊行情報登録サイトで、いまはここに一ヶ月半前までに書誌情報を登録しておかねば新刊を受け付けてもらえないこともある、という大変重要なシステムなのだった。

 しかしその質疑応答では、各社その情報を誰が登録するのかという質問がでていて、いやはややっぱりそうなのだと深く納得する。

 本の雑誌社の場合、ISBNコードの管理から進行、ホームページの更新、新刊の〆、見本出しとすべて私がやっているので、そのままJPROの登録も私がやっており、それでなんら支障がないのだけれど、それなりに人数いる出版社であれば、これらすべて全部別の担当者だったりするわけで、しかも刊行点数が多ければ多いほど登録も大変になり、ここ10年でとても重要になってきている書誌情報の管理だけをする部署が必要なのではなかろうか。そこでは書誌情報に加え、使える画像なども一元管理し、さらに反響の詳細もチェックしておき更新していくという感じか。

 まあもうそんな部署は大きな出版社ならばとっくにあるのかもしれないけど、今や書誌情報こそ出版の扇の要というか、その見せ方次第で売れ行きにずいぶん差が出てくるのでとても大切だと思っている。

 ただこれが、単に登録するだけだから簡単な仕事だと思って、新入社員や社歴の浅い人にやらせようとすると失敗するかもしれない。

 なぜなら情報の大元である編集者から内容紹介や目次、表紙データをもらうのはなかなか一筋縄ではいかないからだ。

 編集者側からしたら当然ながら正確な情報を出さねばならぬと考えギリギリまで粘りたい気持ちもわかるし、また、これらの情報を求める時期というのが編集作業上最も忙しい時期と重なるため面倒くさくなるのもわかるのだけれど、かえすがえずもこれらは売るために最も必要な情報なわけで、これらをしっかり表に出さないと結局一生懸命作ったものが売れないという、苦労も水の泡になってしまいかねないのだった。

 そうした編集部に対して、私ぐらいうるさく、めんどくさい人間が言ってやっと出てくるものであり、あるいは机の上から推察して勝手に登録したりするものであり、これを経験の浅い人や新入社員にやらせたら病んでしまうかもしれない。何度も催促するというのは心に負担を与えるものなのである。

 なので情報管理部は会社で一番強面の人を集めたほうがいいだろう。もしくは編集データがクラウドに上がっていて誰でも引き出せる状態になっているとか。

 あと、JPROの登録も結局、諸々情報ができる度に改めて入力し直すので、一冊でだいたい3回は書き直す感じなのだった。さらに各社販売サイトはJPROで済むけど、自社サイトも同様に作らねばならないし、最近はストアーズ等の自社直販サイトのページも作らなきゃならないので、やはり思ってるより大変な仕事なのだった。

 それでもなんでやるかと言ったら「売るため」であり、「売れる」からなのである。

 書誌情報がないというのは、本屋さんの棚に並んでないのと一緒であり、目次やカバーを入れてやっと棚差し、その他諸々いろんなことをして平積み、バズって多面展開というイメージだろうか。編集作業をギリギリに進行すればするほど売れる機会を損失している可能性もあるのだった。情報がなくても売れるのは村上春樹ぐらいなもんだ。

 というわけで書誌情報早くください。

10月18日(月)

 昨日、フットサルを2時間やった上に夕方5キロほど走ったので腿裏がパンパンに張っている。

 そのフットサルでは、チームメイトで高校1年からの親友のシモザワ君に、「どうして俺たちこんなにサッカー好きなのに高校のサッカー部入らなかったんだろう?」と訊ねてみたところ、「杉江は入学式の日に入らないって言ってたけど、俺は一応サッカー部の体験入部には行ったんだよ。でもこれは(レベル的に)ついていけないと思って入らなかったんだ」と言われ、そういえば体験入部に行かない?と誘われたことを薄っすらと思い出したのだった。

 私は小学校のときに隣の家のお兄ちゃんにサッカーを教わり、すっかりその魅力に取り憑かれ、中学校でサッカー部に入部したのだけれど、その3年間、相手チームではなくサッカー部の顧問と不毛な戦いを続けてしまい、高校に入ったときには二度と部活なんてやるものかと誰よりも早く帰宅することを目指す帰宅部に入部したのだ。

 そこでは私の才能が遺憾なく発揮され、学内新記録を次々塗り替えるに至ったわけで、そうして結局、体験入部でサッカー部に入ることを断念したシモザワ君も私と帰宅部でペアを組むことになり、二人で団体戦に出場、ペアでも学内新記録を次々更新していたのだった。

 そんな我々のフットサルに昨日は部活が休みで暇そうにしている高校2年の息子を連れていった。

 息子は、幼稚園の運動会ではひとりだけ後ろに走っているのではと思わされるほど同級生に引き離され、騙すようにして入団させてしまった小学校のサッカー少年団でもピッチにいるよりもベンチに座っているほうが長い控え専属の選手であり、要するに運動神経のにぶい下手っぴだった。

 それでも息子はなぜだかサッカーを辞めることなく、中学でも続け、そしてあろうことか私やシモザワ君が挫折した高校でもサッカー部に入部した。

 しかもその高校のサッカー部というのが高校選手権を真剣に目指すようなサッカー部で、おそらく入部した中で息子はどんけつレベルであっただろうし、1年生のときの練習も半年はずっと走ってばかりなので体力的にも相当きつかったと思うんだけど、家に帰ってきたら「腹減った」と言ってどんぶり飯三杯も食って、あとはつらいとかやめたいとか一切言わず、雨の日も風の日も毎日毎日部活やって帰ってくるのだ。

 そんな部活を続けて約2年が経った息子は、本日の試合でキレキレのドリブルと切り替えしを見せ相手選手を翻弄、時にはアウトサイドにかけてぐにゃりと曲がる絶妙なスルーパスを出し、そうして10点以上のゴールを決めたのだった。そこにいたのは何をやっても下手っぴの息子ではなく、立派な立派な完璧なサッカー選手だった。

 帰りの車の中で息子は一言「腹減った」とつぶやいて居眠りを始めた。その寝顔を見つつ、私はサッカーだけでなくすべてのことで、この息子に勝てないと悟ったのだ。

10月15日(金)

 4時半起床。今日こそ休足日にしないとまた足底筋膜炎が再発してしまう。ぼんやりとYou Tubeをはしごする。気づくといつも立ち食いそば屋さんや町中華の厨房を映している動画を延々と見続けている。

 9時半出社。電車も町ももうすっかりコロナ前に戻ったよう。テレワークというのは結局一部の職種、一部の企業以外根付かないものなんだろうか。

 午前中は読み終えた大竹聡さんの原稿を整理する。

 午後、神田村に仕入れにいらした伊野尾書店の伊野尾さんをお茶にお誘いし、楽天BNから日販に協業で移った本屋さんの現状と、最先端の出版営業"ビッグブラザー"営業について伺う。

 「杉江さんみたいな"昭和の営業"はどんどん減っていきますよ」と言われ、薄々感づいてはいたけれど、自分の仕事のやり方はとっくのとうに時代遅れになっていたのだ。

 頭抱えつつ、その後、すっかり夜の帳の下りる中、BOOKS青いカバさんに『東京の古本屋』を直納する。

10月14日(木)

 4時半起床。本日は休足日のためランニングには行かず。11月17日発売の逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)のプルーフを読み進む。

 9時半出社。午前中は引き続き、大竹聡さんからお預かりしている原稿を読む。読みながら本のかたちを考える。考えるけれど正解はない。これでいいのかなと悩みながら正解を自分で作り出すしかない。

 午後、渋谷のHMV&BOOKS SHIBUYAを訪問し、Yさんとお話。本屋さんのこと、書店員さんのこと、出版流通のこと、いろいろと示唆に富む話を聞けてうれしく思っていたら、別れ際にさらにうれしいお話が聞ける。「最近、レジでお客様から『いい品揃えですね』って褒められることが増えているんです」と。

 そうなのだ。ここHMV&BOOKS SHIBUYAさんは、何度か改装されて現在は本の売り場が6階に上がっているけど、いつも手の入ったピカピカの売り場を作っているお店で、大好きな本屋さんなのだった。こちらのお店と日本橋の製品生活さんのはもっともっとたくさんの人に知ってもらいたい本屋さん。

 帰宅後、休足日の予定がなんだか走りたくなり、6キロラン。月に向かって走る。

10月13日(水)萬来の餃子を焼く

 4時半起床。雨が屋根を叩く音がするのでランニングはできないか...と残念に思い、ひとまず、本誌12月号の特集記事の原稿を書く。6枚。日が昇ってきたので外に出てみると、雨はやんでおり、慌ててジャージに着替え、ランニングへ。しかしながら走り出してすぐまた雨が降り出す。もはや濡れてしまったのでそのままランニング6キロ。

 9時半出社。午前中は昨日に引き続き、大竹聡さんから預かっている原稿を読む。

 午後、駒込のBOOKS青いカバさんに「本の雑誌」11月号を届けにいく。店主の小国さんは、水曜日は経営員として古書会館に行っているため不在。アルバイトの方に本誌を渡し、しばし店内を徘徊し、『線路工手の唄が聞えた』橋本克彦(JICC出版局)と『秘境ナガ高地探検記』森田勇造(東京新聞出版局)を買い求める。ほくほく。

 その後営業して、直帰。家に帰ると、妻が餃子を焼いてくれと言ってくる。先週末に実家に帰った際に、春日部市民の"おなかの友達"萬来で、冷凍餃子を買ってきていたのだった。

 とりあえず2人前を焼いていると、再開した大学の授業から帰ってきた娘が風呂から上がるなり、「お腹空いた」といって食卓にどかっと座る。ちょうど餃子が焼き上がったのでその前に並べるとすぐに箸を伸ばす。


 残り2人前も焼かなくてはと餃子をフライパンに並べていると、妻が茶碗を持ってご飯をよそいに来る。部活を終えた息子も帰ってきたのかと思ったら、娘がお代わりしたのだという。

 娘を見ると、大きな口を空けて餃子を頬張っている。

 なんだろうか。年頃の娘がご飯をたくさん食べている姿を見ると、なんだか妙にうれしくなる。小さい頃の、無防備だった娘を思い出すからだろうか。これが息子だとどこまで食べるのかお釜の残りが心配になるから不思議だ。

 ふわふわとフライパンと蓋の隙間から漏れる湯気を眺める。

10月12日(火)逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』のプルーフを読む

 4時半起床。今日は足の休息日なのでランニングはしない。先日早川書房のYさんが「できたばかりなんです」ともってきてくださった第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作、逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』(11月17発売予定)のプルーフを読む。

「傑作です。新人でこんなに書けるなんてちょっと信じられないレベルです。」とYさんは言っていたが、早川書房は販促が上手いよなあと思う。

『ザリガニの鳴くところ』や『三体』なんかもそうだったけれど、年に1、2作本当にこれぞといったときだけこのようにしてプルーフ製作し、しかも書店員さんだけでなく、書評家さんにも配られているので、事前の話題作りはもちろん、刊行後の各媒体での書評掲載となり、しっかり売上を作っている印象を受ける。

 9時半に出社。事務の浜田は健康診断へ出頭。肝臓の数値はいかに?

 午前中、大竹聡さんからお預りしている原稿を読み進み、単行本収録分とそうでない分と選り分けていく。相変わらず飲んで飲んでとことん飲んでるわけだが、すっかり酒を飲まなくなった私ですら無性に酒が飲みたくなってしまう。

 午後、御茶ノ水の丸善さんに『東京の古本屋』の追加注文を届ける。その後、千駄木の往来堂書店さんに伺い、協業搬入となった「本の雑誌」がきちんと届いているか確認する。無事平積みさせれており、ひと安心。笈入さんとしばし出版システムの話など。

10月11日(月)はじめての協業搬入

  • ヤマケイ文庫 山びとの記―木の国 果無山脈
  • 『ヤマケイ文庫 山びとの記―木の国 果無山脈』
    宇江 敏勝
    山と渓谷社
    1,100円(税込)
  • 商品を購入する
    Amazon
    HonyaClub
    HMV&BOOKS
    honto

 4時起床。2時間ほど読書(宇江敏勝『山びとの記』ヤマケイ文庫)し、日が昇ってから(6時頃)ランニングへ。6キロほど走る。

 夏の猛暑で走る気力が衰え、週20キロ程度のランニング量に落ちていたのだけれど、涼しくなったので週40キロペースに戻す。土日で25キロ、平日は3日で15キロといったところ。ついでに長友の体感トレーニングも復活し、だいぶ身体のキレが戻ってきた。

 まあ身体がキレたところで注文が増えるわけではないのだが、体力が衰えると心も弱まり、心が弱まると浦和レッズの敗戦に耐えられなくなってしまうので、我が人生にトレーニングは欠かせない。

 9時半出社。「本の雑誌」11月号が搬入となる。今号から取次店の楽天BNと日販の協業がはじまり、これまで楽天BNに搬入していたほとんどの分が日販扱いとなる。部数確認したところでしっかり日販に上乗せになっていたので、定期分の融合がきちんとできていると思われひと安心したのだった。

 本の雑誌社に入社した頃(1997年)は、トーハン、日販、地方小、大阪屋、栗田、太洋社、鈴木、柳原と取次店に搬入していたものが、ついにほぼ2社になってしまうとは...。

 巻頭のグラビア「本棚が見たい」に登場いただいたくまざわ書店武蔵小金井北口店さんに追加分30冊をお届けにあがる。

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