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3月31日(木)

 朝、洗面台で並んで歯を磨いていた息子が、目の前の鏡を見ながら「俺、なんか背が伸びてない?」とポツリともらすのであった。

 言われてみれば鏡に映る息子と私にはずいぶんと差があり、それにしてもこれほどの差はおかしいだろうと、「これは遠近法だよ」と言いながら足元を見るも、二人の足の位置は横並びである。いや、どちらかというと私の方が前に出ているのだった。

 そこで歯を磨くのをやめ、しっかり横に並んで鏡を見つめると、息子は「父ちゃん、ちっちゃ!」と言いながら大笑い。「おい!」っと横を向けば、たしかに私の首は息子と視線を合わすために、だいぶ上を向いている。息子と顔を合わすのにこれほどまで見上げる必要があったとは。

 うううう。記憶にあるかぎりだと一年くらい前は、私が身長163センチに対して、息子が168センチくらいで、四捨五入して人に「身長170センチ」と言えるのを羨ましがっていたのだ。

 ところが今、隣に立ち、鏡に映る息子は自称170センチどころか、どう見ても175センチ近いのではなかろうか。こんなことがあっていいのだろうか。なんだか大地が割れ、その隙間から地底どこかに一気に墜落していく気分。

「父ちゃんも牛乳飲めば背が伸びるよ」と息子は私の肩を叩いて階段をあがっていく。

 いろんな意味で疲れを引きずったまま、9時半に出社。すぐに準備をして、市ヶ谷の地方小出版流通センターさんへ。市ヶ谷の土手は桜満開で多くの人がスマホ片手に桜を撮影している。担当のKさんと『本屋大賞2022』の初回搬入部数の打ち合わせ。

 昼過ぎに会社に戻り、6月刊行で進めている内澤旬子さんのヤギ飼い暮らしを描いた『カヨと私』の編集作業に没頭。

 夜は雨。私より背の低い娘を車で迎えにいく。

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