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7月1日(金)

  • ドリフターズとその時代 (文春新書 1364)
  • 『ドリフターズとその時代 (文春新書 1364)』
    笹山 敬輔
    文藝春秋
    968円(税込)
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 笹山敬輔『ドリフターズとその時代』(文春新書)読了。これは評伝の傑作である。

「ザ・ドリフターズはその存在の大きさに比して、正当に評価されていないのではないか。私はずっとそう感じてきた。」という文章からはじまる「はじめに」をとにかく読んでしい。

 そこから伝わってくる深い愛情はもちろん、たった4ページでありながらたいへん客観的な視点でもって、示唆に富む考察鋭い文章なのだった。そしてこの『ドリフターズとその時代』は、それが全編に渡って貫かれている一冊なのである。

 ドリフターズがすごいのは、誰か一人というわけでなく、みながそれぞれ、人によっては地味ながら輝いていたというか、そもそもバンドなので全員のアンサンブルによってコントが成り立っていたわけで、この本は見事にそのアンサンブルを描いている。誰か一人を中心とした評伝ではなく、いかりや長介、荒井注、加藤茶、仲本工業、高木ブー、志村けんといったドリフターズ全員を、あるいはその舞台を作る裏方である6人目のドリフターズも過不足なく取り上げられており、網羅的にドリフターズを知ることができる、まさしく決定版の傑作評伝であろう。

 土曜の8時、欽ちゃん派の兄といつもケンカして、そのうち母親が隔週ごとに変わりばんこに見なさいと解決策を提示し、それでも兄貴に「先週、全員集合見ただろ!」と騙され、不貞腐れながら欽ちゃんを見ていた六畳間の畳のヘリの柄まで、まざまざと思い出したのだった。

 紀伊國屋書店新宿本店さんに西村賢太『誰もいない文学館』を直納。地下通路を通っていけるので、非常にありたがい。

6月30日(木)

 ゲラを届けに行って、ゲロを吐きそうなる。

 というのも本日、8月刊行の古書現世・向井透史さんの『早稲田古本劇場』の再校ゲラが出来上がったのでお届けにあがったわけだが、それと同時に都内某所への買取のお手伝いすることになっていたのである。その買取が向井さん曰く、「これ以上ない」レベルの困難極める買取であり(実際日下三蔵さん家も真っ青な魔窟であった)、しかも気温が35度を超える激暑であり、さらにそこはエレベーターのないマンションの2階なのだった。

 せめてもの救いはそれでも2階ということなのだが、2階とはいえ10数段のステップを登り降りするわけで、そこを70本、約1400冊の本を運び下ろしていると、Tシャツは絞れるほどびしょびしょとなり、毎日ランニングして鍛えているはずのふくらはぎもパンパンとなり、意識朦朧としてくる。まるで中学校の部活が如く、「あと●本」とカウントダウンしながら最後の本の束を運び下ろしたときの達成感たるや、やはりそれも中学校の部活以来の達成感なのだった。

 夕刻、車で早稲田の古書現世に戻り、すべての本を店内に運び下ろす。向井さんはここからさらに本の束をひもとき、改めて組合の交換会に出品できるよう整理し直すわけである。おそらくそれは朝方まで続くのだと思われる。

 古本屋さんの本を愛する様子は、あきらかにわれわれ新刊流通の仕事に関わっている人間とは異なる。なにやら深く、そして広大な感じがする。面白いとか面白くないとか、たくさん売れるとかテレビで紹介されたとかそういうものとまったく関係なく、もっと長い年月を通じた本というものと対峙している感じがある。

 向井さんは『早稲田古本劇場』のなかで、「古本屋というのは表面的には小売業だが、実は流通業でもあるのだ。店というのはいろいろな形で本を動かす拠点なのだ。」とおっしゃっているのだが、それはまた換金する方法が様々あり、それを日々本を目の前にして選択していく仕事でもあるのだろう。

 どうにかゲロを吐かずに肉体労働を終え、心地よい疲労を覚えつつ帰宅。

6月29日(水)

 猛暑続く。9時半に出社。続いて出社してくる社員を、フル・マラソンを終えたランナーの如く拍手で出迎える。無事出社できてコングラッチュレーション!

 2時過ぎまで避暑という名のデスクワークをし、その後、池之端の古書ほうろうさんに納品に伺う。いつ来ても素敵な古本屋さんでしばし棚を眺める。大塚和義『草原と樹海の民』(新宿書房)を購入。

 根津神社にて、内澤旬子さんの『カヨと私』が無事出来上がったことをご報告し、売れ行き繁盛及び重版祈願のお参りをする。

 往来堂書店の笈入さんとお話。やはりあまりの猛暑に人出が減っているらしい。

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