7月1日(金)
笹山敬輔『ドリフターズとその時代』(文春新書)読了。これは評伝の傑作である。
「ザ・ドリフターズはその存在の大きさに比して、正当に評価されていないのではないか。私はずっとそう感じてきた。」という文章からはじまる「はじめに」をとにかく読んでしい。
そこから伝わってくる深い愛情はもちろん、たった4ページでありながらたいへん客観的な視点でもって、示唆に富む考察鋭い文章なのだった。そしてこの『ドリフターズとその時代』は、それが全編に渡って貫かれている一冊なのである。
ドリフターズがすごいのは、誰か一人というわけでなく、みながそれぞれ、人によっては地味ながら輝いていたというか、そもそもバンドなので全員のアンサンブルによってコントが成り立っていたわけで、この本は見事にそのアンサンブルを描いている。誰か一人を中心とした評伝ではなく、いかりや長介、荒井注、加藤茶、仲本工業、高木ブー、志村けんといったドリフターズ全員を、あるいはその舞台を作る裏方である6人目のドリフターズも過不足なく取り上げられており、網羅的にドリフターズを知ることができる、まさしく決定版の傑作評伝であろう。
土曜の8時、欽ちゃん派の兄といつもケンカして、そのうち母親が隔週ごとに変わりばんこに見なさいと解決策を提示し、それでも兄貴に「先週、全員集合見ただろ!」と騙され、不貞腐れながら欽ちゃんを見ていた六畳間の畳のヘリの柄まで、まざまざと思い出したのだった。
紀伊國屋書店新宿本店さんに西村賢太『誰もいない文学館』を直納。地下通路を通っていけるので、非常にありたがい。