« 前のページ | 次のページ »

10月31日(月)

 朝、スーツに着替えていると高校3年の息子から、「父ちゃん今日も仕事なの?」と驚かれる。

 息子は部活を引退した9月からサッカーショップでアルバイトをしており、仕事というものが少しわかりはじめたところなのだ。先日も4日連続アルバイトに入って疲れたとこたつで丸まって寝入ってしまったりして、父親である私が神保町ブックフェスティバルで土、日も出社し、8日連続(最終的には祝日までの10日連続となる)仕事に行くのに尊敬の眼差しで見つめているようだった。

 しかし私は子供から尊敬されたら人生終わりだと考えているので、Jリーグのシーズンの間、どれだけ働いていなかったか、試合の日は朝から心あらずで、試合のない日もやっぱり心ここにあらずで仕事に集中すること一切なく、それが今週末で今シーズン終了なのでここから一生懸命働かないとならないわけで、それでも一年間を平均にしてならしたら、たぶんまっとうな人の半分くらいしか働いていないことを切々と訴える。

 尊敬から蔑みとなった息子の眼差しに安心して出社。イベント(と飲み会)の翌日は、いつもより早く出社することという就職して最初の上司の言いつけを守り、9時前に出社。

 すでに事務の浜田が出社しており、神保町ブックフェスティバルで並べた本の整理をはじめていた。私は土日の間に社内で飲み食いしたペットボトルや空き缶を捨て、机を吹いて、床に掃除機をかける。

 片付けを終えたところで、飯田橋の双葉社さんへ。神保町ブックフェスティバルで『黒と誠』を先行販売させていただいたお礼に伺う。

 昨日日曜日には著者のカミムラ晋作さんに12時から閉店の6時まで長時間に渡ってサイン会を開催していただいたおかげで『黒と誠』が飛ぶように売れ、おかげで本の雑誌社の他の本もお客様に手にとっていただけ、感謝感謝お礼のしようがないほどなのだった。

 それもそもそもすべて、双葉社の営業のSさんより先行販売のお誘いや実際に二度に渡って納品していただいたからこそ。これぞ、まさに出版営業。私も見習っていかなければならない。

 会社に戻ると神保町ブックフェスティバルに出店していた大阪の出版社140Bの青木さんが来社していたので、定番の神田小川町の近定に行って昼飯。

 満腹で会社に戻ると神保町に遊びにきていた書店員さんが来社されたので、お茶。売り場ではなかなかゆっくり話せないので、最近読んだおもしろ本の話から発注方法などなどじっくり伺う。

 午後からは11月9日搬入の新刊、べつやくれい『カツ丼を名画にして、冥土で売ってそうな土産を作る生活』の初回注文〆作業。注文データと短冊を付け合わせ、ミスがないか確認した上で、取次店さんに送信。

 その作業に没頭していたところに新宿の紀伊國屋書店さんから『早稲田古本劇場』の追加注文が入ったので、急いで持参する。

 お店をゆっくり徘徊したかったもののとんぼ帰りで会社に戻り、4時からはZoomを使って本屋大賞の会議。20周年に向けて諸々調整。

 一息ついて通常業務を始めたのが夕方5時。深呼吸してから様々なメールを返し、18時半に業務終了。上野まで歩いて帰宅。

 白岩玄『プリテンド・ファーザー』(集英社)読了。前作『たてがみを捨てたライオンたち』(集英社文庫)では、もはや父性という幻想が崩れ去り、アイデンティティを失った男たちがいかに生きていくかを描き、同様に感じていた私に絶賛を浴びたわけだが、今作ではさらに一歩踏み込んで、子供は誰が育てるのかというところに突き進んでいく。

 シングルファーザー同士の高校の同級生が、ひとつ屋根の下で暮らすという異色の設定で、しかしそこを"異色"と感じてしまうのはなぜなのか? 男が育児をしているのはおかしいと思ってしまう自分がいまだにいるのではないか? そう思う人が大多数だからこそ、女性はありのままに生きれないのではなかろうか? 子供は母親が育てるのか? 父親も育てるのか? 親だけが育てるものなのか? 育児を通してこれからの男性性というものを考えさせられる小説だ。飛鳥井千砂『見つけたいのは、光。』(幻冬舎)と合わせて読みたい。

« 前のページ | 次のページ »