11月1日(火)
神保町ブックフェスティバルの間、会社が空いているのでもしよろしければ古本市でもしませんか?と『早稲田古本劇場』の著者である古書現世の向井さんをお誘いしたわけだけれど、よくよく考えてみればすずらん通りすぐ近くとはいえ、休日にはほとんど人が通らない道に面した雑居ビルの5階で古本市を開催したところで、もしお客さんがひとりも来なかったらどうしたらいいだろうと前日に運び込まれたたくさんの古本を前に大きな不安に包み込まれたのだった。
向井さんには先に謝っておいたほうがいいかと思い、「お客さん来なかったらごめんなさい」と頭を下げると、向井さんは笑ってこう答えたのだった。
「元々何もしなけりゃ休みで売上0なんだから」
向井さんの言葉に心底ほっとし、そしてこうした精神が楽しいことをどんどん増やしていくのだと改めて思ったのだった。結果はこの試みを面白いと思ってくださった読者の方が多数おり、古本市も盛況だったとのこと。
その在庫の引き取りが水曜日のため、会社の会議机に山と積まれたその古本を前に、上京された内澤旬子さんと打ち合わせ。イラストの取り扱いについて検討する。
打ち合わせ後、急いで『おすすめ文庫王国2023』に関するデスクワークをこなし、御茶ノ水駅から中央線に乗って、国分寺へ。『本の雑誌血風録』と『本の雑誌風雲録』を漫画にした『黒と誠』に刺激を受け、ある本の漫画化に向けて動き出しているのだった。本日は1話目、2話目を前に漫画家さんと原作者さんと交えて、感想を言い合う。
その後、すっかり取りはぐれていた昼飯を食べるためにとある人気店らしいラーメン屋に入る。私はどんなラーメンでも基本美味しく食べるのだけれど、ひとつだけ許せないラーメンがあって、それはぬるいラーメンなのだった。
でてきたラーメンがまさしくそのぬるいラーメンで、なぜかチャーシューもゆで卵も妙に冷えきっており、それが汁によって温められることなく、ぬるいさを倍加させているのだった。こういうラーメンを出すお店はもしかして店主が猫舌なんだろうか。唯一温かみを感じる麺を頼りに食し、涙ながらに店を出る。
ワクサカソウヘイ『出セイカツ記』(河出書房新社)を読み始める。
「ただささやかに生活しているだけで、これ以上のものを望んでいるわけでもないのに、なんだか漠然と生きづらい」という著者が、その不安の根っこに対抗するため、サバイバルとまではいかないまでも、海から食料を調達してみたり、断食や不食をしてみたり、石を売ってみたりする。
まったく同様の不安にかられ毎日を過ごしている私にも膝を打つような思考に納得しつつも、さすが宮田珠己さんを氏と仰ぐ著者だけに、アタマのおかしさに大笑いしてしまう箇所があちこちに散りばめられており、大いに楽しむ。