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11月28日(月)

 中村計『笑い神 M-1、その純情と狂気』(文藝春秋)読了。

 これはあの、前人未到のノンフィクション賞4冠を成し遂げた鈴木忠平『嫌われた監督』(文藝春秋)と同レベルの超傑作ノンフィクションであり、そしてまた同種の、目標を達成するために狂気に取り憑かれていく人間の様を描いたノンフィクションでもある。

 私はテレビを観ないので、この本の中心人物である「笑い飯」という漫才コンビを知らなければ、その笑い飯や現在の漫才コンビがそこで優勝することを目標としている「M-1」というのもまったく知らないのだけれど、それでも380ページあっという間に一気読みだった。

 なぜならここで描かれているのは「人間」だからだ。自分と他人の評価の間で揺れ動き、それによって狂わされていく人間なのだ。誰だって大なり小なり毎日他人の評価や視線を気にし、どこかで狂わされて生きているわけだから、ここに普遍があるのだ。

「人を笑わす」というとても困難な営みにのめり込み、狂うほど真剣になっている人たち。笑いとは、漫才とは......。その深淵が覗ける狂気のノンフィクションだ。

★   ★   ★

 というわけで出社後すぐに大阪出身のお笑い大好き新人編集の前田君に貸し与える。感想が楽しみ。

 午前中は、年間ベストの書店掲示用のパネル作りに勤しむ。午後はできたばかりのパネルを持って書店さんに配って歩く。

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