4月7日(金)
夜、11時27分、父死す。
まさか先週会ったときにはこんな結末が待っているとは予想だにしなかった。これからリハビリに励み、たまには車椅子に乗せて外出ができる日もくるのだろうと思っていたのだけれど、父の寿命は尽きてしまった。
「ツグに会えてうれしーよー」と幼児のように全身で喜びを表現していた六日ばかり前の父親の姿が駆け巡る。その前に会った病院の検査時には、車椅子を押しながら話していると、振り返って「ツグの声を聞くと安心できるんだよ」と涙ぐんでいたのを思い出す。
今、その父は、刻々と青白い顔になり、体温も失われようとしている。
かなしみが、打ち寄せる波のようにやってくる。泣き虫の私は、涙を堪えることができず、病院の床にぽたぽたと涙をこぼす。
母親、兄と薄暗い病院の待合室から葬儀屋さんに電話をする。
海が大好きだった父親に連れていってもらった伊豆の海水浴場を思い出す。父親の肩につかまり、まるで親子の亀のように沖合まで連れていってもらった。
今、目の前から父の背中は失われようとしている。この深く、大きな海を、これからは父なしで泳いでいなかれなけばならない。