8月30日(水)黒田未来雄『獲る 食べる 生きる』は僕の杖になった
黒田未来雄『獲る 食べる 生きる』(小学館)読了。
何度深く息を吐き出しただろうか。
何度自分の手を見つめただろうか。
何度心臓の音を聞こうとしただろうか。
ハンターが仕留めた獲物を食し、血と肉、すなわち命にするように、僕はこの本を読み、その言葉を、その想いを、僕の血と肉、人生にするだろう。
星野道夫さんの著作を耽読し、北方の自然への憧れていた著者はアラスカの犬橇家の元に飛び込み2週間を過ごす。数年後、とある縁からユーコンのダギッシュ/クリンギット族のキースと出会い、彼を師として狩猟のこと、自然のこと、人生のことを学ぶ。そして北海道で暮らし、狩猟の道を歩む。
まず、この冒頭5ページのプロローグを読んで震えた。こんなに短い文章なのにすべてが凝縮されている。これは狩猟の本であるけれど、生きるための哲学の書でもある。しかもとても表現力豊かで、時には詩的でもあるので、心の深いところに、まるで鋭利なナイフのように突き刺さる。しかしそれは苦しくなく自然と涙があふれてくるようなあたたかな痛みだ。
自分の人生を自分の力で生きる。いや自然のなかで生かされる。都市で生活している自分にはほど遠い世界のように見えるけれど、そうではない気がする。
これからきっと何度もこの本を読み、この本を「杖」として生きることになるだろう。