11月1日(水)友達
僕の部屋は溜まり場だった。小学校のときから僕が結婚して家を出ていくまで、毎日誰かが来ていた。夜遅くまで、いや朝まで部屋で大騒ぎしていたけれど、いまになって思えば、それを許してくれていたのは両親の優しさであり、どれだけ感謝してもしたりないのだった。
その優しいひとりであった父親が死んで、誰にも伝えてなかったのにどこかから聞き及んだ友達から飲もうと連絡があった。
8月の暑い最中に神宮球場の外野スタンドに集まり、中学、高校の同級生と酒を飲んだ。10年、20年ぶりに会った友達は何も変わらず、そして会って数秒で元の関係になっていた。
それ以来、毎月集まるようになった。会いすぎのような気がするけれど、僕が結婚して家を出るまで毎日一緒にいたのだから、これでも寂しいくらいだ。
今夜も森下のもつ焼き屋に集まり、アホな話ばかりして酒を飲んだ。そんな中、仲間のひとりがポツリと漏らした「俺たちみんな努力する才能がなかったよね」というのはまさしく的を得ていた。
誰も出世もせず、一流にもなれなかった。でも、それでいい。それがいい。