1月20日(土)本に救われる
寝たのか寝てないのかわからないまま朝を迎える。
実家で過ごすこと、母親と一緒にいることに緊張する要素などどこにもないはずなのに、布団に入っても一日は終わらなかった。
もしかしたら30年近く続いた暮らしと異なる生活リズムを受け入れるのに心が拒絶反応を起こしているのかもしれない。
こんな生活を果たしていつまで続けられるのだろうかと思いつつ、柴崎友香『続きと始まり』(集英社)を読み出すと、心がふわっと軽くなった。本はいい。ページをひらけば音も立てず別の世界に包み込まれる。本に救ってもらっている。久しぶりにそれを実感した。
7時半になり、母親をお越し、トイレや洗顔などの世話をして、食卓で向き合う。
すると母親の頬をぽたぽたと涙がこぼれ落ちる。そして「家に帰れてよかった」と私を見つめるのだった。
午前中、母親の友達が来て、午後には妻と娘がやってきた。夜にはまた母親と2人になった。
工事が済んでおらず、テレビがまだ映らないためおしゃべりする以外することがない。そのおしゃべりは同じことの繰り返しで行ったり来たりしている。
左半身に麻痺が残る母親が日常生活でできないことはトイレに入ることくらいで、他はほとんど手間がかからないのだった。
だから別にそれほど負担にならないかと考えていたのだけれど、しーんとする家の中で常に話し相手になるというがとてもしんどいのだった。
母親も同様に感じているのか、「テレビが早く映るといいね」と黒い画面を見つめていた。
病院からそのまま特養に入れず、週末は実家で共に暮らすという、わざわざ自分に負担を強いたこの新たな生活に果たしてどんな意味があるのだろうか。
きっと答えがわかるのはずっと先だろう。