1月28日(日)母と散歩
スズキナオ『思い出せない思い出たちが僕らを家族にしてくれる』(新潮社)読了。胸がいっぱいになる。素晴らしい。
私は去年の春に父を亡くし、その四十九日を終えた翌週母が脳梗塞で倒れ、半身不随になってしまい、現在、週末だけの介護同居生活を始めたところだ。
それはそれで仕方なしと受け止めて暮らしているのだけれど、つい数年前まで当たり前にあった父も母も健康で、ヨーカドーへ買い物に行った帰りにラーメンを食べたり、埼玉スタジアムで孫である娘や息子とともに三代揃って浦和レッズを応援していた日々が、今更ながらとても愛おしいのだった。
だからそんな家族のほんとになんでもない平穏な日々が綴られているこのエッセイ『思い出せない思い出たちが僕らを家族にしてくれる』はたまらないのである。
夫婦や子供たちの話、父や母の話、山形の親戚の話、どれもドラマというほどのことはほとんどなく、どの家庭にもあるであろう自然体の家族のぬくもりが詰まっている。読了後、思わず本を抱きしめてしまった。
★ ★ ★
今日初めて、母親の車椅子を押して散歩に出かけた。
40年前は、母親と並んで歩くなどこの世でいちばんの恥だと思っていた中学生で、ヘンテコリンにハンドルを立てて後ろに立ち乗りできるように改造した自転車で友達と二人乗りしてふらふら徘徊していたその道を、今、車椅子を押している。
40年前の私が、今の私を見たらなんと思うだろうか。「超だっせえ」と唾を吐いて追い越していくだろうか。