« 前のページ | 次のページ »

1月29日(月)2日間ありがとう

朝、介護施設のお迎えの車を待っていると、突然母親が、「2日間ありがとうございました」と車椅子の上で頭を下げた。

どう返事をしていいのかわからなかった。2日間疲れなかったといったら嘘になる。自由になるはずの時間を無駄にしたと思わないこともなかった。

でもこれは感謝されることなのだろうか。母親からありがとうと言われたくて、週末実家で暮らしているわけではなかった。こうしたいと思ったのは自分自身だったのだ。

ずいぶん間が空いてから私は笑いながら答えた。

「こちらこそ、結婚して家を出ていくまでの26年間、ありがとうございました」

母親もぼかーんとしたあとに笑った。そして「そうね」とつぶやいた。

母親を見送り、父の墓参りをして、半蔵門線直通の東武伊勢崎線に乗って会社に向かう。

介護の人から出版社の人に頭を切り替えるもなかなかうまくいかない。あの閉じ切った小さな家とこの広い世界がうまく結びつかない。10時半に着いて12時過ぎまでゆっくり馴染ませていく。

午後、書店さんにPOPを届けに向かう。その後、先日会社まで本を仕入れにくださった書店さんに改めて伝票に番線印をもらいにいく。以前は手書きでも大丈夫だったのだけれど、どうやらそれでは本伝に切り替えられなくなり、取次店さんから返送されてきたのだった。

無事、番線印をいただき、会社に戻る。

会社にこの「炎の営業日誌」を愛読しているという版元営業の方がいらっしゃる。2年ほど前に編集から営業に異動になられたそうで、その時出版営業という仕事が皆目見当つかないときに上司に薦められ読み始めたそう。そして、「出版営業って面白いかも」と思えたそうで、いまや残念ながら介護日記化してしまっているこの日記だけれど、そうやって読んでいただけたことがとてもうれしくなる。

夜、新宿に行き、古書現世の向井さんと新年会。愉快な夜を過ごし、3日ぶりに家に帰る。

« 前のページ | 次のページ »