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4月30日(火)本談義

「眠れないからなんか本貸して」と言ってきたのは、週末に実家に泊まりにきた母親の親友の85歳のおばさんだった。

実家にせっせこ運び込んでいた本の中から、同年代の物語だしと、藤野千夜『じい散歩』(双葉文庫)を渡すと、布団を敷いた客間に入っていった。

翌朝、朝食の用意をして、母親とおばさんと3人で食卓を囲むと本の話となる。

「借りた本、すごく読みやすいからもう半分読んじゃった。しょうもない3人の子供がいて大変よね。このお母さんちょっとアルツハイマー入ってるんじゃない?」と、本当に読んだことがわかる感想を語りだす。

「いつもはね、藤沢周平とか読んでるの。時代小説が好きでね。前は市が尾にも本屋さんが3軒あったんだけどみんな閉店しちゃったのよ。だから今は三ヶ月に一度神保町の日大病院に検査で行った時に、古本屋さんの店先にある3冊100円の文庫本を買って、何度も読み直してるの」

おばさんが帰るとき、『じい散歩』とともに、『高瀬庄左衛門御留書』(砂原浩太朗/講談社文庫)を渡した。おばさんは「ええ?! もらっていいの? すごくうれしい!」と言って、カートにしまった。

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