5月19日(日)高野本の聖地
朝9時に出社。神保町ブックフリマ二日目。
土曜日と日曜日の神保町はまったく人の出が異なる。土曜日は家族連れや若い人たちが本やランチやコーヒーを求めて(キッチン南海やラーメン二郎は平日以上に行列ができていた)やってきており、東京堂書店さんの売り場も大混雑しているが、日曜日は古本屋さんもシャッターを下ろして閑散としている。その閑散とした神保町がなかなかよい。
昼に売場を離れ、来週26日に閉店する南柏のオークスブックセンターさんへ。高野秀行さんのサイン会のお手伝い。
このお店は「高野本の聖地」と呼ばれているけれど、そもそもは別の書店で働いていたTさんが、6年ほど前にオークスブックセンターに転職され、前売場でも展開していた高野さんの本をはじめとする内澤旬子さんと宮田珠己さんの著作を集めた「エンタメノンフ三銃士」コーナーを移転設営されたのだった。
さらにその前段階として、千葉の書店員さんが集まり、酒飲み書店員大賞というのを開催し、第一回目の受賞作が高野秀行さんの『ワセダ三畳青春記』(集英社文庫)だった。それはなんと2006年のことで、今から18年も前のことだ。
それまで高野さんの本は重版がかかることがなく、知る人ぞ知る作家だったわけだけれど、酒飲み書店員大賞受賞を契機にたくさんの人が高野さんの面白さに気づき、その後は講談社ノンフィクション賞を受賞したり、クレイジージャーニーに出演したりと大活躍、さらにファンが増えていくこととなった。
高野さんは高野さんで新刊が出ると2時間近く電車に揺られ聖地を訪問、100冊以上の本にサインをして帰るということを繰り返してきた。そのおかげで本は売れ続け、聖地は弾劾されることなく本日に至ったのであるが、聖地とは関係なく出版の世界は第三次出版不況の戦禍から逃れることができず、残念ながらお店の閉店を迎えることになってしまった。
サイン会に参加していただいた方に話を伺えば、埼玉や神奈川といった遠方から駆けつけてくださったファンの方もいたけれど、日頃このお店で本を買っていた地元の人も多く見受けられた。
しかもその人たちが高野さんの本を知ったのもこのお店の棚(聖地)のおかげで、そこで『イスラム飲酒紀行』(講談社文庫)といった仰天タイトルに惹かれて手を伸ばされたそうだ。
本があって、読者がいるわけではなく、本屋さんがあって、読者が生まれるのだ。
サイン会は2時間を大盛況で無事終了となる。
帰路、今週末は介護施設に預け放しにしている母親の顔が思い浮かぶ。