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7月30日(火)誕生日

  • 漫画 本を売る技術
  • 『漫画 本を売る技術』
    矢部潤子,池田邦彦
    本の雑誌社
    1,760円(税込)
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35度。とろけそう。53歳の誕生日。

9時半出社。午前中、三つ折りした新刊案内を封筒に詰め、封をする作業に勤しむ。

午後、阿佐ヶ谷の八重洲ブックセンターさんから追加注文いただいた『漫画 本を売る技術』を納品に伺う。五冊入れてすでに在庫は二冊の三冊売れだった。店長さんが「(社販でなく)一般のお客様が買って行かれるんですよ」と驚かれている。

その後、営業。

義母がお祝いで買い求めてくれたケンタッキーフライドチキンで晩飯。インターンから帰宅した息子が、アイスクリームと私の好きな豆菓子(ポリッピー)を買ってきてくれる。さっそく豆を食う。自分で用意した誕生日プレゼントは、トラヴィスの新譜『L.A. TIMES』。

7月29日(月)代休

よく考えたら休んでなかったので、休みをとる。
気温は38度。蒸発しそうだ。

7月28日(日)友達

  • 陽炎の市 (ハーパーBOOKS)
  • 『陽炎の市 (ハーパーBOOKS)』
    ドン ウィンズロウ,田口 俊樹
    ハーパーコリンズ・ジャパン
    1,439円(税込)
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午前中、母親の近所の友達がおいなりさんを作ったからお昼ご飯にどうぞとやってくる。冷たいお茶を出して話に花を咲かせていると、また別の友達がやってきて、「つぐちゃん、いいもの見つけたのよ」と「ビオレ 冷タオル」を持ってくる。「外で仕事しているから大変でしょう」とくれるのだった。

そうして口々に私に感謝を伝えてくる。

目の前で車椅子に座っている女性は、私にとっては母親なのだが、この人たちにとっては親友なのだった。その親友が、たとえ土日だけでも自宅に居て、そこに遊びにこられるというのは、どうやらかけがいのないものらしい。

ドン・ウィンズロウ『陽炎の市』(ハーパーBOOKS)読了。どうも期待していた方向に話が進まず、ここまできて3作目を読むか悩む。

7月27日(土)介護生活28週目

  • 業火の市 (ハーパーBOOKS)
  • 『業火の市 (ハーパーBOOKS)』
    ドン ウィンズロウ,田口 俊樹
    ハーパーコリンズ・ジャパン
    1,440円(税込)
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朝9時。介護施設へ母親を迎えにいく。二週間ぶりの再会と帰宅。なんだか慈しむ気持ちがわいてくる。
35度と激暑のため父親の墓参りと散歩はとりやめ、クーラーの中で終日過ごす。そんな中隣町から親友のおばさんが自転車に乗ってやってくる。いやはや元気なこと。

ドン・ウィンズロウ『業火の市』(ハーパーBOOKS)読了。千街晶之さんの解説が読み応えあり。

7月26日(金)神宮球場

朝9時。お茶の水の出版健保へ痛風とコレステロールの薬をもらいにいく。半年ぶりの血液検査の結果、コレステロールと中性脂肪が劇的に下がっていてお医者さんとともに驚く。

この間、生活習慣や食生活を変えたということはなく、変化があったといえば1月から始まった週末介護と、この一ヶ月の間に6度出動したスッキリ隊くらい。もしや蔵書整理はコレステロールに効くのかもしれない。

るんるん気分で出社し、書店さん向けDMと新刊チラシを一気に作る。

夜、神宮球場にてヤクルト対広島を、小・中・高の同級生と観戦する。村上のホームランに興奮したものの、次の回に打者一巡で9点も取られ、試合は終わる。野球に集中しているのは私だけで、友達は生ビールのカップを重ね、子どもの頃から同じ関係性のもと同じ会話を続けている。もはやそれは古典落語というか、寄席にいるような緩さで、たいへん心地よい。15年前はこの緩さに苛つき、会うのを控えたのだけれど、私も50歳を過ぎて、すっかりどうでもよくなった。来月麻雀する約束をして、7回を終えたところで帰る。

7月25日(木)スッキリ隊出動

朝から麻布十番へスッキリ隊出動する。高級マンションながらなんとまさかのクーラーが壊れているとのことで、汗を流しながらの作業となる。

2000冊と伺っていた蔵書は、実は4000冊を越えており、本日だけではすべてスッキリすることができず、8月にもう一度作業することになる。

最後の運び出しのところに階段が10段あって、地味に疲れる。

7月24日(水)本を買う経緯

  • 家から5分の旅館に泊まる (スタンド・ブックス)
  • 『家から5分の旅館に泊まる (スタンド・ブックス)』
    スズキナオ
    太田出版
    2,090円(税込)
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  • 暗躍の球史 根本陸夫が動いた時代
  • 『暗躍の球史 根本陸夫が動いた時代』
    髙橋 安幸
    集英社
    2,200円(税込)
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  • だから、野球は難しい (扶桑社新書)
  • 『だから、野球は難しい (扶桑社新書)』
    橋上 秀樹
    扶桑社
    990円(税込)
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  • 転の声
  • 『転の声』
    尾崎 世界観
    文藝春秋
    1,650円(税込)
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本を4冊買ってきた。

①スズキナオ『家から5分の旅館に泊まる』(太田出版)
②高橋安幸『暗躍の球史 根本陸夫が動いた時代』(集英社)
③橋上秀樹『だから、野球は難しい』(扶桑社新書)
④尾崎世界観『転の声』(文藝春秋)

三者三様というか四冊四様、購入に至る経緯が違う。

①の『家から5分〜』は新刊が出たら必ず著者である。
②の『暗躍の球史』は伊野尾書店さんから、「好きそうな本が出ましたよ」と教えてもらった。
③の『だから、野球は難しい』は書店の平台で知った。
④の『転の声』は伊野尾書店さんが「面白い」と話していた。

分類してみると、①は「ファン」、②は「情報」、③は「発見」、④は「評判」ということになるだろうか。①が出るのを知ったのは、出版レーベル「STAND! BOOKS」のXのポストだった。本を買う動機はそれぞれで、ひとつでなく多岐に渡っている。

買う側でありつつ、売る側である私がすべきことは、①ファン作り、②SNSでの発信や広告、③書店さんへの営業、④面白い本や雑誌を作る、ということだろうか。

そして、ひとつのことをして満足感に浸るのではなく、やれる限りのことをすべてやらなければならない。何度も何度も何度も。

買うのは簡単、売るのは大変、しかし、どちらも楽し、というところか。

7月23日(火)中原一歩『小山田圭吾 炎上の「嘘」』

  • 小山田圭吾 炎上の「嘘」 東京五輪騒動の知られざる真相
  • 『小山田圭吾 炎上の「嘘」 東京五輪騒動の知られざる真相』
    中原 一歩
    文藝春秋
    1,650円(税込)
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中原一歩『小山田圭吾 炎上の「嘘」』(文藝春秋)読了。

小山田圭吾もCorneliusもフリパーズ・ギターも実はまったく知らないのだった。しかし2021年のオリンピック開幕を数日前に控えたある日突然、「小山田圭吾」という人が、炎上したことは知っている。「炎上」というものはそういうものだろう。

そもそもは興味本位でペラペラめくりだしたのだが、本物の、魂のこもったノンフィクションだとすぐに気づき、居住いを正して読み直した。

過去の雑誌記事で同級生をいじめたと証言をしていた小山田圭吾は、果たして本当にそんなひどいことをしたのか。著者はその真実を探るため同級生を探し歩き、確認していく。さらに、もししていないのあれば、なぜあのようなインタビュー記事が掲載されたのかも探っていく。

誰かが肉体的に殺された殺人事件ではないけれど、ひとりの人間が社会的に抹殺される事件であり、その現代的な事件を追った強烈なルポルタージュだ。ものすごく冷静に、しかし胸のうちに熱いものたぎらせ、著者は足を使って迫っている。
そして──。

一番かっこ悪いやつを炙り出している。ロックの雑誌を作っておきながら、いちばんロックじゃない人間を。

これぞノンフィクション。これぞルポルタージュだ。

7月22日(月)足元過ぎれば痛さを忘れる

  • 癲狂院日乗
  • 『癲狂院日乗』
    車谷 長吉
    新書館
    2,860円(税込)
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  • 私はヤギになりたい ヤギ飼い十二カ月
  • 『私はヤギになりたい ヤギ飼い十二カ月』
    内澤 旬子
    山と渓谷社
    1,980円(税込)
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5時半起床。こんなに寝たのは久しぶり。Z世代の娘から、「今日も会社にいくの?」と驚かれるが、まあ、行くのだろう。

朝から30度越えのなか出社。会社にたどり着くだけで本日終了の札を下げたくなる。

ごくごくと水を飲み、痛風に汗かきはよくないのだど思っていたら、『痛風の朝』のデザインをしてくれた小林渡さんから足が腫れた写真と「ついに痛風になってしまいました」というメッセージが届く。

これで親友から痛友になれたと喜んでいたら、なんと『北緯66.6°』の森山伸也さんからも「痛さに悶絶しています」と、やはり痛風発症の報告が届く。激暑は痛風を呼ぶのか。痛友が増えてうれしい、なんて言っていると自分も発症するので偉そうにアドバイスをして心配のフリをする。

昼、神楽坂の「アズーリ」にて、内澤旬子さん、地方小出版流通センターの畠中さんとランチ。お二人は旧知の仲なので、会話が弾む。

内澤さんと神保町へ。内澤さんが8月に新刊『私はヤギになりたい』を刊行する山と渓谷社に行くというので、山と渓谷社までご案内する。その後、会社に戻ろうとしたところ、椎名誠事務所の渡利さんが交差点に立っており、思わず声をかける。

椎名さんが更級日記千年紀文学賞の選考会議で学士会館に来ており、その会合の合間に椎名さんから預かったフロッピーディスクを、本の雑誌社に届けてくださったらしい。人間添付ファイル。椎名さんの最近の様子を伺い、道端でお別れ。

夜、新宿御苑の「大衆酒場 鳥の素揚げ ほしの本店」にて、古書現生の向井透史さんと仲良き出版社で酒を飲む。プロレス好きが3人おり、なんの会話をしていても気づけばプロレスの話になっているという、プロレスバミューダトライアングルもしくはプロレスブラックホールに吸い込まれて行く。

帰り際、向井さんから「出版関係者が4人いて、一切出版に関する話が出ないとは何事だ!」とたいそう褒められるが、「芳賀書店さんもこの激暑でお客さんが少ないらしい。エロが無理ならもう無理だ」という非常に尊い話を伺ったのだった。

ゲリラ豪雨と雷。

東京堂書店さんで車谷長吉『癲狂院日乗』(新書館)を購入した。

7月21日(日)BOOK MARKET2日目

春日部より浅草へ。「BOOK MARKET2024」2日目。本日も35度を超える激暑。

10時開店とともに売り場を浜田に任せ、舟和に芋羊羹とあんこ玉を買いに行く。妻と娘からお土産に所望されたのだった。

昨日を上回るすごい人出。特に2時から4時の間はお客さんが途切れず、先行発売していた『漫画 本を売る技術』と新刊『日記から』が売り切れてしまう。

内澤旬子さんが遊びにきてくれたので、『カヨと私』にサインしていただくと、すぐに一冊売れた。

5時無事終了。皆で協力して机と椅子を片付け、6時には完全撤収となる。出版強化合宿も昨夜で終えたので、浅草より自宅に帰る。

7月20日(土)BOOK MARKET初日

友と春日部より浅草へ。いよいよ「BOOK MARKET2024」始まるもすごい暑さ。今日は35度を超えるらしい。

こんな暑い中、果たしてお客さんはやってくるのかと心配していたが、10時オープンとともにどっと人がなだれ込み、夏葉社のブースには島田さんを囲む輪ができていた。

その後もたくさんのお客さんが来場され、浜田ともに昼ご飯も食べずに本を売り続ける。共に本を売る仲間がいて、自分たちが作った本が目の前で読者の手に取られる。こんな楽しいことはないだろう。あっという間に終了の5時。

友と東武伊勢崎線に乗って春日部に帰るが、その電車は足立花火大会に向かう浴衣姿の人たちで満員。それがなんとここからゲリラ豪雨と雷のため中止になってしまうとは。悲劇。

武里駅前でほか弁を買い求め、出版強化合宿二日目夜の部を迎える。

「BOOK MARKET2024」では、港区でいちばんちいさな出版社・ビーナイスのブースで、藤岡みなみ『時間旅行者の日記』(タイムトラベル専門書店)を購入した。

5歳から35歳までの日記がランダムに並んでいるとは天才的発想。浅生ハルミンさんの『三時のわたし』(毎日三時に何をしていたかを記した日記)にも衝撃を受けたが、それと並ぶ衝撃だ。

7月19日(金)出版強化合宿

直行で浅草・台東館へ。明日から始まる「BOOK MARKET2024」の設営なのだが早く着き過ぎたらしく、主催のアノニマスタジオ安西さんに笑われる。しかし尊敬する出版営業の亜紀書房の岡部さんの姿があり、早く来たことが間違いでなかったことを知る。

岡部さんとともに汗を流して机を運び出していると、出店する版元がぞくぞくとやってきて、あっという間に設営が終わる。

11時過ぎに事務の浜田が浜本の車に乗り込み、本を搬入。折りコン7箱がどこまで減るのやら。

昼にBOOK MARKETならここで食うと決めている本格博多とんこつラーメン「うりんぼ」でラーメンと煮蓋ご飯のセット。うまし。

食後、東京駅に向かい丸善丸の内本店さんに追加注文いただいた坪内祐三『日記から』を直納。会社に戻ってしばしデスクワークした後、出版友達を連れて春日部の実家へ。

今週末はBOOK MARKETのため母親の介護はお休みで、その代わりに地方より出張でBOOK MARKETに参加している出版友達に実家を宿代わりに使ってもらい、私も実家で過ごし、出版強化合宿を開くのだった。

夜、武里が誇るお好み焼きの名店「ひろしま天よし」にて、辛みそ玉を食す。10年ぶりくらいに食べたが、うまし。

夜遅くまで出版について語り合う。

7月18日(木)古本屋さんの不思議な商売

10年以上前、父親と話していた時に驚かれたことがあった。

「お前の商売は返品があるんだって?」
「あるよ」
「じゃあたとえば5000冊本を作って納品してもそのうち何割かは戻ってきたりするのか?」
「そうだよ。全体で平均すると4割が戻ってくるんだよ」
「そんなんで商売になるのか?」
「なるような、ならないような、だよね。」
「おっかねえ商売だなあ。オレの仕事はネジを5000個作って納めたらその代金は必ずもらえるからな」

父親は10代の時から機械部品の製造に携わり、四十になる頃、独立して町工場を営んでいた。

そして今、私は古本屋さんの仕事というのをスッキリ隊で垣間見ながら同様の思いを抱いている。

どれだけの蔵書を引き取っても、市場で値がつかなければ儲けにならない。儲けにならないどころか作業した手間が無駄骨になってしまうこともある。また量と儲けが比例せず、たとえば1000冊と50冊の整理を引き受けた際の儲けが、50冊の方が大きいときもあるのだった。

もちろん市場で売らずに自分のお店でコツコツ売るという方法もあるのだけれど、それでも市場で値のつかないような本は、均一棚でもなかなか売れない本だったりするだろう。

私はかつて父親に言われた「そんなんで商売になるのか?」と思うのだけれど、不思議なことに新刊書店よりは商売としては成り立っているようで、そこに古本屋さんの面白さが凝縮されているのだ。

本日、立石書店の岡島さんと出動し、先日来スッキリ隊で行ってきた1万5千冊の本の整理がやっと終了する。2024年の夏の思い出だ。

これだけ手伝っていても1万冊売ったら1万冊分の儲けがでる仕事に長年就いている私には、なかなか頭の転換ができないのだった。

ちなみに先週金曜日の搬出で、私は3万5290歩歩いていた。そのうち半分は重い台車を押しての歩行だ。しかし歩いた分儲かるわけではないのが古本屋なのだ、というのはすでに身に沁みてわかっている。

7月17日(水)七月堂のZINE

  • 活字のサーカス (上) (小学館文庫 し 2-17)
  • 『活字のサーカス (上) (小学館文庫 し 2-17)』
    椎名 誠
    小学館
    869円(税込)
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  • 活字のサーカス (下) (小学館文庫 し 2-18)
  • 『活字のサーカス (下) (小学館文庫 し 2-18)』
    椎名 誠
    小学館
    902円(税込)
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  • 断腸亭日乗(一)大正六―十四年 (岩波文庫 緑42-14)
  • 『断腸亭日乗(一)大正六―十四年 (岩波文庫 緑42-14)』
    永井 荷風,中島 国彦,多田 蔵人
    岩波書店
    1,265円(税込)
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  • 業火の市 (ハーパーBOOKS)
  • 『業火の市 (ハーパーBOOKS)』
    ドン ウィンズロウ,田口 俊樹
    ハーパーコリンズ・ジャパン
    1,440円(税込)
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  • 贖罪 殺人は償えるのか (集英社新書)
  • 『贖罪 殺人は償えるのか (集英社新書)』
    藤井 誠二
    集英社
    1,210円(税込)
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午前中、『漫画 本を売る技術』の見本と事前注文短冊を持って、市ヶ谷の地方小出版流通センターさんへ伺う。

七月堂さんが創刊したZINE「AM 4:07」を見せていただく。奥付に「印刷・製本 七月堂」とあり、スタッフのひとたち自身で、糸で縫って製本しているのだ。かっこいい。

自分はこのように本への愛情を持ち合わせているだろうか、あるいは作りたいZINEがあるだろうかと自問自答する。

午後、会社に戻り、校正ゲラの送付や著者献本の手配をしているとあっという間に時間が過ぎていく。

定時であがり、丸善お茶の水店などを覗いて

椎名誠『活字のサーカス(上・下)』(小学館文庫)
永井荷風『断腸亭日乗(一)大正六─十四年』(岩波文庫)
ドン・ウィンズロウ『業火の市』(ハーパーBOOKS)
藤井誠二『贖罪 殺人は償えるのか』(集英社新書)

を買い求め、慌ただしく帰宅する。

本日は、息子の学校が天皇杯でレノファ山口FCと対戦するのだ。

7月16日(火)うれしい悲鳴と哀しい悲鳴

  • 暗殺
  • 『暗殺』
    柴田 哲孝
    幻冬舎
    1,980円(税込)
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9時に出社。週末、浅草の台東館で行われるBOOK MARKET2024で販売する本を、社内の倉庫から選び出す。去年、一昨年の販売実績を参考にしながら準備する。

昼前に終え、『漫画 本を売る技術』の初回注文締め作業に勤しむ。たくさんの書店さんから注文いただき、いつも以上に時間がかかる。うれしい悲鳴をあげる。

しかし、トーハンの新刊入力システム「enCONTACT」の事前予約分を確認する前にデータを作ってしまい二度手間に。今度は哀しい悲鳴をあげる。

締め作業終えた後、「本の雑誌」8月号の追加注文をいただいた丸善丸の内本店さんに直納。

文芸書のランキングコーナーを覗くと、柴田哲孝の『暗殺』(幻冬舎)が1位だった。どうやらすごく売れているらしい。

7月15日(月・祝)イカフライ海苔弁当

朝、介護施設からのお迎えの車に母親を乗せ、週末実家介護生活26週目も無事に終える。

自宅まで走って帰ろうと考えていたのだけれど、雨のため電車で帰る。途中寄り道も考えたが、新越谷のVARIEは開店前で、すごすごと帰宅する。

昼にサミットでイカフライ海苔弁当を買い求め、かつてセブンイレブンで売っていたイカフライおかか弁当に思いを馳せつつ、ビールとともに食す。気づけば爆睡。

夜、バイト先に娘を迎えに行き、アイスを食して就寝。

7月14日(日)夏場所

午前中、雨。午後になって止んだので、父親の墓参りと車椅子を押しての散歩。紫陽花も終わり、庭先の花はぐっと減る。

お隣のYさんがお菓子をもってやってくる。大相撲夏場所が始まる。

晩飯はカレー。母親と二人分のカレー作るというのが結構難題で、母親はもうそんな食べるわけでもないし、私もおかわりするわけでもないから、実質1.5人前くらいなのだった。

しかしカレーというものは、作っていると知らずに量が増えていくというマジカルな食べ物で、何度かやってみて、結局残して捨てることになってしまっていたのだ。

時間と労力と材料の無駄と気づき、本日はレトルトのカレー1パックに、じゃがいもとウインナーを足して食す。これで十分。

7月13日(土)ハードボイルド

  • 死者だけが血を流す/淋しがりやのキング: 日本ハードボイルド全集1 (創元推理文庫)
  • 『死者だけが血を流す/淋しがりやのキング: 日本ハードボイルド全集1 (創元推理文庫)』
    生島 治郎,北上 次郎,日下 三蔵,杉江 松恋
    東京創元社
    1,650円(税込)
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昨日のスッキリ隊1万5千冊搬出により筋肉痛になるかと思ったのだけれど、どこも痛みはなく、朝9時にショートステイしている介護施設に妻と母親を迎えに行く。

本日は誰も来ず、母親は庭を眺めて過ごし、私はランニング、買い物、そして『ハードボイルド全集1 生島治郎』(創元推理文庫)を読んで過ごす。

7月12日(金)古本屋は流通業

 水曜日の続きで、スッキリ隊出動。本日は運び出し。先日に続き、神保町のがらんどうさん、そして古書英二のスッキリブラックにも助太刀願う。

 台車にがしがし本を山積みし、地下一階から地下三階の駐車場に運んでいく。トロッコで炭を運ぶかのような重労働。あっという間に全身から汗が噴き出す。

 夜6時、ハイエースで神保町の古書会館と四往復してほぼ運び出しを終える。

 古本屋さんが小売業でありながら、流通業であることを思い知る。

7月11日(木)大林堂書店

「いらっしゃーい。お帰り。今日は2冊ねー」

 常連さんが買い求める雑誌を覚えており、すぐに棚や取り置きスペースから差し出す弘明寺駅前の大林堂書店さんは、8月半ばに49年の営業を終える。

 いつも明るく応対している店主さんは、両親がはじめた本屋を25歳のとき突如引き継ぐことになった。本屋のことはもちろん、本のこともまったくわからなかった。接客業の経験もなかった。

「私、人見知りでね、一日一人は話しかけようって決めたの。天気のことでもいいからとにかくなんか話そうって」

 今ではこのお店を訪れるほとんどのお客さんと会話を交わしている。いやちょっとした会話をするためにお客さんはお店に来てるようでもある。

「お店閉めるって決めたらさ、レジの調子はおかしくなるし、FAXの8のボタンは押せなくなるし、トイレのタンクも壊れちゃったの。そういうもんなんだね。」

 お父さんが開業時に取り付けた間口いっぱいの看板は、取り外すのに10万円かかるとため息をつく。

「もうほんとコミックが売れなくなった。雑誌も女性誌が売れなくなって、今はNHKテキストとクロスワードくらいかなあ」

 そういう目の前で「文藝春秋」を買っていくおじいさんがいる。

「いらっしゃーい。病院行ってきた? ごめんね、今月はすんごく高いのよ。1450円。ある?」

 おじいさんは手のひらを開き、まるで子供のおこづかいのように千円札と450円をレジに置いた。

「あの人にも閉店の報告をしなきゃいけないんだけど、まだ来月号はお渡しできるからそのときにしようと思って」

 閉店を決めるまでも大変だったが、閉店を決めてからは家に帰るとどっと疲れがでて、何もする気が起きないらしい。

「お店を継いでから、とにかくお客さんのほしいと言った本を仕入れることを必死にやってきた」

 そう話す店主さんの手元には、お客様の探求書リストがあった。

 閉店のその日まで本を仕入れ、お客さんに届けることだろう。

7月10日(水)縛りデビュー

先週水曜日に下見に伺った都内某所へスッキリ隊出動する。

1万5千冊の蔵書整理ということで、神保町のがらんどうさんにも助太刀願う。立石書店の岡島さんと二人で縛り始めるが、これ、どう見ても縛り切れないだろうと思い、自宅でこっそり練習していた私も縛りに参戦す。縛りデビュー。

つつがなく100本ほど縛り、向井さんに「後は任せた」と三代目古書現生を襲名させられる。

6時まで作業をして、9割縛り終える。

7月9日(火)『百年の孤独』を代わりに刷る人

「本の雑誌」8月号搬入となる。今月も無事できあがりほっとする。特集は上半期ベストテン。

丸善お茶も水店さんから坪内祐三『日記から』の追加注文をいただき、納品にあがる。

各店で品切れとなっている『百年の孤独』は話題書とエンド台に一冊ずつ残っていた。「『百年の孤独』を代わりに刷る人」になりたい。

7月8日(月)スッキリ隊スクワット

8時半に介護施設の車が母親を迎えにきて、週末実家介護25週目も無事終える。

激暑の中、昨日行けなかった父親の墓参りをし、武里駅まで歩き、東武伊勢崎線に乗る。

本日は会社のある神保町ではなく、浅草駅に向かう。スッキリ隊に出動要請があり、ここ浅草で、立石書店の岡島さんの車に拾ってもらうのだった。江戸通りに立って車を待つ。気分は日雇い人夫だ。

約束通り10時半に岡島さんがやってきて、本日の出動要請地である立石に向かう。

道を順調に進み、11時前に三階建ての一軒家に到着。書庫が三階でありませんようにと祈るとその願いは叶ったものの、「玄関からは入れないので」と掃き出し窓を案内されたところで、嫌な予感が湧いてくる。しかも家主さんは「家の中が大変なことになってるので、本の雑誌のネタになると思います」というのだった。私はネタを求めているのではなく、本を求めているのだ。

吐き出し窓を開けると、そこは魔窟だった。

本棚から溢れた本が床に積まれ、六畳の部屋には足の踏み場もない。「まずはソファを出してください」と言われ、岡島さんと二人、ソファを持って、庭先に運び出す。これでソファ分のスペースが空き、やっと部屋に立つことができる。

本日はこの部屋全部の蔵書を整理するわけではなく、残すものと残さないものを判断しつつ、お預かりするパターンだ。家主の方がプリントアウトされた残すものリストを片手に整理を始める。

そうこうしているうちに浜本と古書現世の向井さんも現着。二人は部屋に入ることなく(物理的に入れない)、向井さんが掃き出し窓に座って縛る係、浜本がその縛られた本を庭先に積み上げる係と自ずと役割が決まるのだった。

しばらくして私は気づいたのだが、私一人が全身から汗を吹き出し、息を乱している。

それはなぜかというとみなほとんど座って作業をしているのだ。その中で私一人がA地点(分別され積まれた所)からB地点(向井さんが縛っている所)に本を運んでいる。

床に積まれた本を手に持ち、また床に下ろすという作業は、客観的に見てみると、要するにヒンズースクワットをしている状態にそっくりだ。しかもその手には約25冊の本が抱えられているわけで、一冊250gで換算すると6キロちょっとの負荷がかかっている。

そりゃあ汗も吹き出し、息も上がるというものだ。しかもこの部屋にはクーラーがなく、風もほぼ無風なのだった。

3週間後に53歳になる私。いったい何をしているんだ?という気持ちになりそうなものなのだが、実は心(頭)の中はアドレナリンが出まくりで、ランナーズハイならぬ、スッキリハイでめちゃくちゃ楽しい気分になっている。肉体労働大好きなのだ。

肉体労働のよいところは
一、身体を動かして気持ちいい
二、今日、家に帰ってトレーニングしなくていい
三、達成感がある
四、飯がうまい
五、水がうまい
六、よく眠れる
だ。

しかもスッキリ隊では
七、たくさんの本が見られる
が付け足される。

本日は約1500冊の本の整理となったのだが、それ即ち70本から80本の本の束であり、私は35度を超える室内で、6キロの負荷を抱えて80回ヒンズースクワットをしたこととなる。

本日のスッキリ飯は亀戸の焼肉三千里で、満腹ランチを食す。飯がうまい。

7月7日(日)競馬

朝からすでに暑く、今日は墓参りも散歩もあきらめ、終日、クーラーをかけた家の中で過ごす。こう暑いとさすがに母親の友達も遊びに来ない。

いくら本を読んでいても、一日中、家にいるのはさすがに暇で、息が詰まる。特に日曜日の午後はやりきれない気持ちになってくる。なにかないかと考えていて閃く。私には、競馬が必要なのかもしれない。

7月6日(土)ジョシュア・ハマー『ハヤブサを盗んだ男』

  • ハヤブサを盗んだ男――野鳥闇取引に隠されたドラマ
  • 『ハヤブサを盗んだ男――野鳥闇取引に隠されたドラマ』
    ジョシュア・ハマー,屋代通子
    紀伊國屋書店
    2,750円(税込)
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朝9時。いつものように妻と介護施設へ母親を迎えにいく。

あまりの暑さに散歩は取りやめ、父親のお墓参りだけして、あとは終日クーラーをかけて部屋で過ごす。

そんな中、読み進んでいた、ジョシュア・ハマー『ハヤブサを盗んだ男 野鳥闇取引に隠されたドラマ』(紀伊國屋書店)が面白すぎた。

バーミンガム空港のラウンジで不審な男を見つけ身体検査をしたところ、なんと腹に巻き付けられた靴下に14個の鳥の卵が収められていた。男はそれをアヒルの卵だと言い張るが、実際には孵化を目前に控えたハヤブサの卵だった......。

いやはやハヤブサの卵や雛を巣から盗み取り、アラブの富豪に密やかに売買されているなんてまったく知らなかったし、そのハヤブサを使ってレースをしていることもさらに知らなかった。

『ハヤブサを盗んだ男』は、そういう知らないことがたくさん詰まった面白さとともに、盗む側と捕まえる側が交互に描かれ、まさに帯にある「手に汗握る」構成になっており、読み物として大変優れたノンフィクションだ。

しかもこの犯人の強烈さといったら、そんじょそこらの犯罪小説や冒険小説の主人公以上なのだ。すごいよ、この犯人は。

鳥関連の面白本といえば、5年前に読んだカーク・ウォレス・ジョンソン『大英自然史博物館 珍鳥標本盗難事件』(化学同人)が超傑作だったのだけれど、この『ハヤブサを盗んだ男』もそれと肩を並べる面白さだった。

7月5日(金)誓い

午前中、企画会議。10月号の特集を決める。

昼、注文いただいた本を持って本の店&companyさんへ。こちらのお店は東大前駅が最寄り駅なんだけれど、神保町から南北線に乗るのはなかなか面倒で、地図を眺めているうちに神保町から都営三田線に乗り、白山駅で下車すれば、歩いていけると気づく。

というわけで納品すべき本を抱えて、炎天下の中、とぼとぼ歩く。いつか行きたい兆徳はすでに10人以上の人が並んでおり、本日もチャーハンにあ理つけず。

10分ほど歩いて、本の店&companyさん到着。2度目の訪問ながら笑顔で迎えていただき、暑さも忘れる。

それにしてもこのお店の本棚は綺麗だ。いや本棚が綺麗なのではなく、そこに並べられた本が綺麗なわけだが、びしっと背表紙が面を合わせて並べられており、端から端までゆっくり眺めていきたくなるとてもいい本屋さんだ。

納品を終え、しばしお話の後、今度は東大前駅から南北線に乗り、飯田橋へ。

9月号の特集のため、東五軒町に引っ越しされた河出書房新社へ取材に伺うのだけれど、その前に「創元 夏のホン祭り」を開催している東京創元社を覗く。

一階の倉庫を開放し、本やグッズを並べて販売しており、この暑さの中、レジには行列ができており、東京創元社の人気を思い知る。その行列のなかに北原尚彦さんの姿を発見する。

古き付き合いの取締役のYさんとお話をしていると、ご近所双葉社のOさんが差し入れを持ってやってくる。手ぶらできてしまった自分を恥じる。

昼ごはんに歩きながらチョコモナカジャンボを食し、新社屋になったトーハンを仰ぎ見、河出書房新社さんに到着。とっても綺麗で、立派な社屋にびっくり。こういうオフィスで働く人生が私には結局訪れなかったことに涙があふれそうになる。

それはともかく、こちらでインタビューしたある人の奥様が、なんと私が本の雑誌社に入社した頃、とある大型書店の文芸担当者だったと衝撃の告白をされ、腰を抜かすほど驚く。

当時の私は、今の100倍くらい書店さんを回っており、書店員さんとももっとしっかりコミニケーションをとっていたのだ。それが今では言い訳ばかり口にして、思ったように本屋さんを回れず、"炎の営業"など名折れもいいところだ。

あの頃お世話になった書店人さんにがっくりされないよう、そして若き自分に恥じぬよう、改めてしっかり本屋さんを廻ることを胸に誓う。

夜は、東京創元社を訪れていた書店員さんと飯田橋の「雅楽」で酒。〆のうどんが美味すぎた。

7月4日(木)予定変更

予定が変わり、終日会社にいることに。暑いから楽なのだけれど、精神的には不完全燃焼。

夕方、堀井憲一郎さんが来社。新刊の打ち合わせ。

7月3日(水)スッキリ隊下見

朝9時半、都内某所へ。立石書店の岡島さんと来週整理にあたる某企業の図書室を下見。約1万5千冊の本に圧倒される。こんな蔵書量は、目黒さんに蔵書整理依頼か。慌ててスッキリ協力隊の派遣を願う。

某企業を出ると突然の猛暑。会社に戻ると京都新聞の営業氏がやってきたので、先日見かけた新聞広告について伺う。謎が解け、スッキリする。

7月2日(火)共同販促

朝9時に出社。10時に山と渓谷社のTさんとKさんが来社。8月に発売となる内澤旬子さんの新刊『私はヤギになりたい ヤギ飼い十二カ月』の共同販促について検討する。

11時からオンラインで座談会を収録。午後、営業にでかける。

7月1日(月)タイトル

月曜日は介護ボケのため出力20%くらいでやり過ごそうと考えていたところ、書店さんから追加注文が入り、坪内祐三『日記から』と『神保町 本の雑誌』を持って、春日のあおい書店さんへ向かう。

外出間際に印刷会社から、『漫画 本を売る技術』のカバーの色校が届いたので、後楽園から池袋、そして有楽町線に乗り換え要町のデザイナーさんにお届けにあがる。

「お届けしますね」と伝えていたのだが、てっきりバイク便か宅急便がやってくるかと思っていたらしく、たいそう驚かれる。

これで本日ひと段落と考えていたところに高野秀行さんから電話。新大久保にいらっしゃるとのことで、急遽、池袋のコメダ珈琲で待ち合わせし、新作のタイトルについて検討する。

6月30日(日)紫陽花

午前中は、父親の墓参りの後、車椅子を押して散歩。紫陽花の時期も終わりか。

午後、雨が降ってくる。母親を見守りつつ、本を読んで過ごす。

6月29日(土)週末介護生活24週目

週末介護生活24週目。またもや、介護施設から連れて帰ると同時に母親の友達が2人やってきてびーちくぱーちくおしゃべり。終日、楽しそうに過ごす。介護認定通知書が届き、5から4に下がる。

6月28日(金)週刊新潮

雨。読者の大島さんが豊橋からやってくる。毎月2万円を上京資金と貯め、年2回東京にやってきて、古本やフィギアを購入するという。幸せそう。

デザイナーの金子さんから高野秀行さんの新作の口絵が届く。これが見た瞬間に電気が走るほどの出来映えで、すぐさま高野さんに転送する(高野さんからもすぐに興奮の電話がかかってくる)。

夜、浪漫房にて、長き付き合いとなる同文書院の営業Nさんの定年退職を祝う会に参加。お店に顔を見せたオーナーの太田篤哉さんが、「杉江がいつもお世話になってるから」と「雪中梅」の一升瓶をご馳走してくださり、帰りは千鳥足となる。

金子玲介『死んだ山田と教室』(講談社)の書評を書いた「週刊新潮」が届く。

6月27日(木)推し

昨日訪問した渋谷のHMVさんは、5階のCD売り場だけでなく、6階の書籍売り場のレジにも大行列ができていた。

も、も、もしかして...。渋谷の若者が文庫化された『百年の孤独』を求めて並んでいるのか!?と先頭に確認に行くと、「櫻坂 自業自得 購入列」とプレートが立っており、5階は5階で、「INI」というグループのCDを買い求める列だった。

HMVさんはこうして人気グループのCDやアイドルの写真集の発売時に特典等を求めて混雑することがよくあるのだが、それにしてもかつてないほどの混みようだ。

とても書店員さんに声をかけられるような状態ではなく、しばらく観察した後、お店を出る。

その夜、坪内祐三さんの『日記から』が無事出来上がったお祝いに佐久間文子さんとともに飲んだ古書現世の向井さんに聞くところによると、櫻坂とINIのCD発売日が重なってしまい、どちらもデビュー以来の発売週連続1位を途切れさせてはならずと、ファンの人たちが買っているのだという。

特典やサインなどが欲しくてたくさんCDや写真集を買うのは知っていたけれど、推しを1位にするために大量購入するということもあるのか。保存用と読む用の2冊買うレベルではないのだった。推しエネルギー恐るべし。

それでは果たして「推し」たくなるものとはどんなものだろうか。

私が浦和レッズの選手で思わず声をあげて応援したくなるのは、一生懸命がんばっている選手だ。

ラインを割って外に出ようとするボールを必死にスライディングして止めたり、ロスタイムの最後の最後まで前線からディフェンスラインまで走ったりするそんな姿に胸熱くさせられ、思わず大声で叫んでしまう。

きっと櫻坂やINIの人たちもそうして一生懸命歌ったり踊ったりあるいは今よりよいパフォーマンスになるよう努力している姿を見せているのだろう。だからこそ、これだけの人がレジに並んでいるのだ。

出版社として、あるいは営業として、いやひとりの人間として、推される側になりたいのであれば、そういう姿を見せていかなければならない。

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