7月18日(木)古本屋さんの不思議な商売
10年以上前、父親と話していた時に驚かれたことがあった。
「お前の商売は返品があるんだって?」
「あるよ」
「じゃあたとえば5000冊本を作って納品してもそのうち何割かは戻ってきたりするのか?」
「そうだよ。全体で平均すると4割が戻ってくるんだよ」
「そんなんで商売になるのか?」
「なるような、ならないような、だよね。」
「おっかねえ商売だなあ。オレの仕事はネジを5000個作って納めたらその代金は必ずもらえるからな」
父親は10代の時から機械部品の製造に携わり、四十になる頃、独立して町工場を営んでいた。
そして今、私は古本屋さんの仕事というのをスッキリ隊で垣間見ながら同様の思いを抱いている。
どれだけの蔵書を引き取っても、市場で値がつかなければ儲けにならない。儲けにならないどころか作業した手間が無駄骨になってしまうこともある。また量と儲けが比例せず、たとえば1000冊と50冊の整理を引き受けた際の儲けが、50冊の方が大きいときもあるのだった。
もちろん市場で売らずに自分のお店でコツコツ売るという方法もあるのだけれど、それでも市場で値のつかないような本は、均一棚でもなかなか売れない本だったりするだろう。
私はかつて父親に言われた「そんなんで商売になるのか?」と思うのだけれど、不思議なことに新刊書店よりは商売としては成り立っているようで、そこに古本屋さんの面白さが凝縮されているのだ。
本日、立石書店の岡島さんと出動し、先日来スッキリ隊で行ってきた1万5千冊の本の整理がやっと終了する。2024年の夏の思い出だ。
これだけ手伝っていても1万冊売ったら1万冊分の儲けがでる仕事に長年就いている私には、なかなか頭の転換ができないのだった。
ちなみに先週金曜日の搬出で、私は3万5290歩歩いていた。そのうち半分は重い台車を押しての歩行だ。しかし歩いた分儲かるわけではないのが古本屋なのだ、というのはすでに身に沁みてわかっている。