12月13日(金)空気感
昨日、飲んだ作家さんが、「今年出した新刊、まだ誰も感想言ってないところに杉江さんがいきなり激唱してくれて、あれでみんなこの本褒めなきゃって空気になりましたよね。だからそれ以降みんな褒めてくれてすごく感謝してます」と言われたのだった。
私にそんな影響力があるわけがなく、それは単にたまたま私が早くつぶやいたのがこの作家さんの目に触れただけなのだが、実はここのところ自分がずっと考えていたことのひとつがこのことだったのだ。
ここ最近、「この本褒めていいんだという空気感つくる」のと、「早く読んで感想つぶやかなきゃという空気感をつくる」のがとても大事だと感じている。
ベストセラーになっていく本を見ているとそうした空気感ができたものが多く、気づけばSNS上でやたら褒められている本があるのだった。
少し前までは、そうしてハリボテで褒めてもきちんと否定する感想がでてきたと思うのだけれど、最近は否定的意見言うのはNGみたいな雰囲気にもなっており、Amazonの一つ星すら増えない感じなのだった。
その空気感を作るのが営業やプロモーションの仕事なのではないかと、こそこそと研究しているところだった。
しかし、先日『本を売る技術』の矢部潤子さんとお茶した時に、矢部さんから言われた言葉がずっと頭に残っていた。
「書店員も、営業も、本の前では誠実じゃないとね」
結局、誠実に本を作って、誠実に本を売る。それを本の神様がきっとどこかで見てる、と信じるのが一番いいのだと考え直すに至った。
なぜなら、私が角田光代さんの『方舟を燃やす』(新潮社)をいの一番に激唱したのは、そういう小説だからなのだった。