12月14日(土)松永K三蔵『カメオ』
週末介護のため、実家へ。冷たい風が吹いており散歩はあきらめる。
母親の様子を片目に、松永K三蔵の新刊『カメオ』(講談社)を一気に読了する。
『バリ山行』(講談社)が芥川賞受賞作にしてサイコーオモシロ小説だったので、期待のハードルがぐんぐん上がっていたのだが、そのハードルを軽々超える面白さだった。本来、こちらがデビュー作らしいのだが、気づけば帯にある「行け!行け!カメオ‼︎」と私も叫んでいた。
カメオというのはひょんなことから主人公が世話をすることになる「眼が小さくぼやけたような顔」の珍妙な犬のことで、物語の後半はこのカメオの処遇をめぐって主人公が揺れ動いていく。
犬のカメオはもちろん、本来の飼い主であった亀夫も圧倒的な人物造形で、前作の『バリ山行』の妻鹿さん同様、この作家は、助演を描くのが憎いほど上手い。
そしてこれも『バリ山行』同様なのだが、サラリーマンというか職場や仕事の様子がとてもリアルで、生活をしっかり書けるというのは良き小説の大事な要素のひとつだ。
『カメオ』はまさしく著者が運動する「オモロイ純文」であり、松永K三蔵、唯一無二の面白さである。