3月2日(日)新聞を買いに
硬い実家のベッドで4時半に目が覚まし、まんじりと時を過ごす。新聞がコンビニに配達されるのは何時だろうか。我が家に届く新聞は5時過ぎのような気がするが、果たしてコンビニには何時に着くのだろうか。
5時では早すぎるかもしれず、6時ならさすがに並んでいるだろうと考え、5時55分に家を出て、歩いて3分のコンビニに向かう。
母親の週末実家介護を始めてから約一年、母親を家にひとり残して外に出るのは、ゴミ出し以外で初めてのことだ。母親は8時まで起きないことは経験上わかっているのだけれど、つい駆け足になってしまう。いや駆けているのは早く新聞を手にしたいからでもあった。
なぜそんなに新聞を手に入れようとしているかといえば、本日発売の読売新聞で、高野秀行著『酒を主食とする人々』が紹介されるからだった。
ホームページの次週紹介する本で掲載されて以来、この日を楽しみにしてきたのだ。
小学校の校庭に植えられた樹木の枝に止まる鳥がうるさいくらいに鳴いている。青い空に白い雲が流れている。
コンビニの駐車場には何台もの車が並んでおり、店内に入るとコンビニ特有の匂いが鼻につく。
入り口脇に設置されたラックに目当ての新聞がさされていた。
昨日の新聞でないことを祈りながら日付を確認するとしっかりそこに本日3月2日の日付が印刷されていた。落ち着く意味も込めて缶コーヒーと一緒に買い求め、コンビニをあとにした。
家にたどり着くのも待てず、歩きながら四つ折りされた新聞のはじをめくり、書評ページがあることを確認する。一度目では見つけられず、もしかして掲載曜日を間違えたかと立ち止まり、もう一度最初からゆっくりめくり、該当のページを見つけた。
まるで年末ジャンボ宝くじの当選番号を確かめるかのようにそのページを開く。
そこには書影入りで、東畑開人さんによる大きな書評が掲載されていた。
すぐに読む。胸が熱くなる。もう一度読む。何度も頷く。
新聞を閉じて、家まで歩く。缶コーヒーが手のひらを温める。
これが、本を作る醍醐味だ。本を売る醍醐味だ。