8月30日(土)佐世保
羽田発全日空663便にて空の人となる。長崎空港まで飛び、そこからバスに乗り、佐世保を目指す。10年ぶりくらいに夏休みを取り、妻と娘とともに20年ぶりくらいに旅行するのだ。
その朝、京浜東北線が人身事故により運転見合わせとなり、再開直後の満員電車に乗ったところ娘が具合悪くなり、途中下車するというアクシデントがあった。
田端駅のホームのベンチに座り青白い顔をした娘を見て、今日の旅行の手配をすべてし先頭に立って歩いていたけれど、実はとても繊細で弱い部分のある子だったと思い出した。
私はいつもそんな娘をオロオロした気持ちで見守り、娘が一日中一度も嫌なことがなく笑顔でいられることを祈り、幼稚園や学校に送り出していたのだ。
数本電車をやり過ごし、反対ホームにきたがらがらの山手線に乗り、モノレールも各駅で座って羽田空港に着く頃には、娘も元気を取り戻した。
今回の佐世保行きの発端は、とあるアーティストのライブチケットがなかなか取れなかったことだった。関東近郊のチケットはあきらめ、旅行も兼ねて地方の公演を取ろうと決意し、ツアーリストから佐世保を選んだのだった。
なぜ佐世保だったかというと、「楽しんで生きないのは、罪なことだ。」という私の人生に爆弾のような言葉を授けた作家の故郷であり、その本の舞台だったからだ。
佐世保は長崎空港から大村湾をかすめ、2時間ほどバスに揺られ着いた。駅の目の前に港があり、ここにエンタープライズが寄港することに反対した話がその小説に描かれていたのを思い出す。
昼に長崎ちゃんぽんを食べ、いざライブ会場のアルカス佐世保に向かう。
ここではまた、私の人生を支える続ける「つまらない大人にはなりたくない」と歌ったアーティストのステージを観る。なぜかわからないけれど、「SOMEDAY」と叫びながら泣いていた。