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9月1日(月)思い出

ビュフェ形式の朝食を、昨日の試合で芝がところどころめくれたピッチを眺めなからとる。まさに強者どもの夢の跡。

雨が降り出す中、始発のココウォークからバスに乗り、空港を目指す。

空港はたくさんの人で、妻と娘はお土産売り場を肩を並べて歩き、はしゃいでいる。

一昨年死んだ父親はことあるごとに私の娘が小学生の時に2人で行った山登りの話をした。

あれはどういう理由だったのかもう思い出せないのだけれど、低山ハイクが趣味だった父親が「山に登りにいくけど一緒にいくか?」と誘い、娘も何だかわからず頷いたのだろう。

とある休日に2人はリュックサックを背負って電車に乗り、栃木の大平山へ向かい、無事山を登って帰ってきたのだ。

「あいつは一度も泣き声を言わず歩いたんだよ。しっかり頂上まで登ってすごい体力だ。それで帰りに蕎麦屋に寄って蕎麦食べたんだけど、一杯ぺろっと平らげてさ。楽しかったなあ」

父親は遠くを眺めるようにしてその日のことをことあるごとに語った。そして、あの頃父親は、山に登るほど元気だったのだ。

私は妻と娘のその後ろ姿を眺めながら、ああ、俺は死ぬ時にこの旅行を思い出すかもしれないと考えていた。

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