« 2026年5月 | 2026年6月 | 2026年7月 »

6月29日(月)ジンギスカン

くもり。5時起床。ランニング6キロ。すっきり。ソーセージを載せたトーストとヨーグルトの朝食。

通勤読書は、羽鳥好之『尚、赫々たれ 立花宗茂残照』(ハヤカワ文庫JA)。北上次郎絶賛の帯どおりたいへん面白い。それにしても北上次郎推薦帯はいつまであるだろうか。

9時半出社。早速、昨日凍結されてしまったXのアカウントの回復と乗っ取りされたアカウントを取り返すための文章や資料をこさえてXに送る。といっても英語などできぬのですべて娘に書いてもらったのだった。マスク少年対イーロンマスク。同じマスク同士なのでよきに計らいたまえ。

今週とある雑誌の座談会に出席しおすすめ本を語ることになっており、そこで使う本を送ろうとすると編集の松村が浜本が持って帰ったという。持って帰った? それ俺の大切な本なんだけど。しかも今日送らなきゃいけないんだけれど。なぜ持ち主に無断で持ち帰るのか。

しかも浜本は本の扱いがたいへんぞんざいで以前貸した本を風呂で読んだのかと思うほどボロボロにされ、その怒りで「人の本は汚すな!」という特集(2016年6月号)を組んだほどなのだ。それ以来、私の本は浜本に触れさせぬようにしていたのだが、上半期ベストの資料として松村に預けていたものを勝手に持ち帰ったらしい。

今日中に返してもらってくれというと、浜本から今日は函館にいて返せないので松村が買って渡すようにと返事があったらしく、松村が三省堂か東京堂で買ってくる。私としては「私の本」が欲しいのだが、もう相手にしていても気が狂いそうなので、その本を他の本と一緒に段ボールに詰めて送る。

今後この本を手にするたびに、この嫌な気持ちを思い出すことになるのだろう。大好きな本に嫌な思い出が付着してしまって大変残念だ。読みたい本は買え。人の本を勝手に持ち帰るな。二度と俺の本に触るな。

午後、とある新聞の記者さんが世田谷ピンポンズさんの著者インタビューにやってくる。どこかよい撮影スポットはないか訊かれたので、カメラマンさんと連れ立ってラドリオのある路地へ。ザ・神保町の風景に記者さんもカメラマンさんも満足な様子で、世田谷ピンポンズさんをパチリ。

その後、たくさん付箋を立てた本を手にした記者さんがとてもよい雰囲気でインタビューしてくださり、記事の掲載が大変楽しみとなる。

インタビュー立ち会いを終えた後は、埼玉県某所のジンギスカン屋さんに向かい、編集の近藤とともに栗原康さんと酒。深夜2時に日本対ブラジル戦があるというのに飲み会をセッティングしてよいのだろうか。そもそもW杯期間は飲み会禁止なのではないのか、と思いつつ、じゅうじゅう肉を焼く。近藤の閃きによって新たな企画が動きそう。よき飲み会。

6月28日(日)世田谷ピンポンズさんの日

5時起床。雨。走れず。悶々とする。

会社に行くと電気がついており、誰がいるのかと思ったら事務の浜田が出社していた。経理を電子帳簿にするのに大変らしい。会社の面倒をすべて浜田に背負わせており、首を垂れる。

昼過ぎに梅屋敷の葉々社さんへ。本日は2階のスペースに世田谷ピンポンズさんの著作を並べてなかばお店番のようして著者本人が本を売るイベントなのだった。

途中、葉々社さんの棚をじっくり眺め、小指『宇宙人の部屋』(ROADSIDERS)と奥山淳志『動物たちの家』(みすず書房)を購入。

18時にて閉店。晩飯は家で冷しゃぶ。

6月27日(土)Yシャツを買いに

4時起床。疲労のためベッドを抜け出せず。

午前中、娘を職場に送ったのち浦和美園のイオンへ。Yシャツの左腕のまったく同じケ所に穴が空くという不可思議な出来事があり2枚のシャツをダメにしてしまったので購入する。無印良品は1980円で、ユニクロは3980円だったので、無印良品で購入。イオンの海苔弁を買って帰り昼飯とする。

午後は磯部涼『脱法』(大洋図書)を読む。主に2010年以降の脱法ドラッグの実情をルポした本なのだが、私の人生ではまったく関わることのない世界で、1ページ目から最後のページまで衝撃の内容だった。身近にありながら知らない世界というのはあるものだ。レイヤーが違うのだろう。

夜、娘を迎えにいく。息子もついてきたのでサッカーのスパイクを見ながら、これはメッシが履いているやつ、これは父ちゃんの好きなシェルキが履いているスパイクなどとレクチャーしてもらう。スパイクオタク。

6月26日(金)裏のフェア

4時起床。雨。走れず。卵を茹で、パンとヨーグルトの朝食。

昨日、浜田に「試合観てから出社しますか?」と訊かれたが、通常どおりに出社。電車も特に空いて様子もなく、周囲のスマホもゲームやSNSなどが映し出されていた。

午前中、引き続き乗っ取りとなりすまし認定を受けたXの対応。その間隙を縫って悩みに悩んでいた服部文祥さんの新刊帯コピーを決断し、デザイナーの松本さんに送る。

昼、ファミマに行き、ハムカツたまごパンとコーヒーを買って昼食をとっていると、信濃八太郎さんが新刊『ミニシアターをたずねて』にサインしにやってくる。お世話になったのでと築地和田久のかつお削り節をいただく。一冊一冊丁寧にイラストを描き込んでおり2時間半で80冊。信濃さんは表参道の山陽堂書店に向い、夜はトークイベント。満員御礼とのこと。

夕方、元助っ人の慎吾君が定期購読してくれている「本の雑誌」を受け取りにくる。

夜、銀座の教文館さんへ。7月から始まる新潮文庫の裏の100冊フェアに推薦した本のPOPを届ける。

6月25日(木)高野秀行『メソポタミアのボート三人男』

  • メソポタミアのボート三人男
  • 『メソポタミアのボート三人男』
    高野 秀行
    集英社
    2,420円(税込)
  • 商品を購入する
    Amazon
    HMV&BOOKS

4時起床。雨。走れず。バナナとヨーグルトの朝食。

昨日改めて作ったXのアカウント(Honnnozasshi)がなぜかなりすまし判定を受け、凍結されてしまう。せっかく一晩で2000人以上の人にフォローいただいたのに。異議申し立てを受け付けているようなので、英語で異議を申し立てる。そんなことをしているうちに午後になってしまう。

昼食は豊はる。食べてみたかったチャーシューは売り切れていたので、いつも通りパイカきしめん。

営業に向かおうと小川町を歩いていたところに高野秀行さんから電話。これから神保町に行くので会社にいるかと聞かれ、それならばと会社に戻る。40分ほどして高野さんやってきて、何かと思ったら新刊の『メソポタミアのボート三人男』の献本リストに私を入れるのを忘れていたとのことで、慌てて持ってこられたという。当然買う気でいたので申し訳ない。

夜、この秋刊行予定のモルック本の再校ゲラができたので校正家さんに送る。

6月24日(水)高水湧基『まちかど給水塔図鑑』

  • まちかど給水塔図鑑
  • 『まちかど給水塔図鑑』
    高水湧基
    創元社
    2,200円(税込)
  • 商品を購入する
    Amazon
    HMV&BOOKS

4時起床。くもり。ランニング6キロ。バナナとヨーグルトの朝食。

8時に出社。出張精算書を作成。先週から挙動がおかしかったXの本の雑誌社アカウントが完全に乗っ取られてしまう。ログインできず、メールアドレスも書き換えられてしまった。不覚。松村、浜田、近藤と全員で復旧対応するが、Xから冷たい宣告を受けどうすることもできず。Instagramでの発信を強化していたところだったので、もうInstagram1本でもよいかと思うが、なかなか諦めきれずマスク少年のアイコンを眺める。

11時、創元社の編集の方がやってきて、Podcast「POP王の愛と自由と平和な本がたり」で、高水湧基『まちかど給水塔図鑑』を紹介したお礼を言われる。いやいやまったく影響力のないPodcastなのでわざわざ申し訳ない。ただこの本が素晴らしいことは声を大にして伝えたい。そしてまた出版社としてこういう丁寧な姿勢を学ばねならぬ。

2時に表参道の山陽堂書店さんへ。今日から始まった信濃ハ太郎さんの「ミニシアターをたずねて」原画展を眺める。原画とジークレー約40枚の展示が素晴らしい。信濃さんの絵にはあたたかみとほんの少しの寂しさがある。

それを終えたのち副都心線で西早稲田に移動。古書現世の向井さんに『ミニシアターをたずねて』を届ける。そもそもは向井さんが信濃さんのお父様の蔵書整理を頼まれたところからの縁でこの本ができたのだった。感謝。

6月23日(火)水まんじゅうと自転車

朝、噂に聞いていた大垣名物水まんじゅうを駅前の金蝶園総本家にて買い込む。注文すると地下水で冷やされている水まんじゅうに流水をあてぷるぷると抜き出し、容器に入れてくれる。すぐさま食べたい気持ちをこらえ、養老鉄道に乗り込む。

その養老鉄道は自転車を乗せられるようで、こどもを連れたお母さんがママチャリごと電車に乗って行く姿に驚く。生活の電車。

昨日に引き続きNさん宅で、松本さんと写真を見続ける。

午後、松本さんの粘り腰のおかげで、素晴らしい写真と出会え、達成感を得る。大垣駅を後にし、浦和に帰る。帰宅後、水まんじゅうを冷蔵庫で冷やし、食す。美味い。

6月22日(月)大垣

母親を介護の車に乗せると急ぎ足で駅へ向かい、急いで東京駅へ。デザイナーの松本さんと合流し、11時12分発ののぞみ27号に乗って一路岐阜の大垣を目指す。

13時32分、無事大垣に着くと、写真家・増山たづ子さんの著作権継承者であるNさんが車で迎えにきてくださり、さらに一路Nさんのご自宅へ向かう。

この秋刊行予定の増山さんの本に使う写真をセレクトする......といっても増山さんはその生涯で10万枚以上の写真を遺されており、その大部分は現在これまたこの秋に広島で開催される写真展のため貸し出されており、本日は残ったアルバムの中で必要なものがあるか確認作業をする。

本を一冊作るというのは地道なことの繰り返しだ。それをできるのはこの本を世に出したいという想いひとつなのだった。

松本さんと夕方5時半過ぎまで諸々の作業をし、残りは明日ということになる。大垣駅のクインテッサホテルに宿泊。

6月21日(日)成人式の着物

雨が上がったので母親と散歩に行こうかと準備していたところへ、母親の友達がやってくる。

開口一番、タケダさんの旦那さんってまだ生きてたっけ?と尋ねてくる。聞けばその旦那さんが以前着物の販売の仕事に携わっていた時に娘の成人式の着物を選んでもらったそう。時が流れその着物を今度は孫が成人式で着ることになり、良いものを選んでくれたおかげとお礼を言いに行きたいというのだった。

その旦那さんとは母親の散歩中に挨拶していたこともあり健在も健在なのだが、振袖を作って30年以上経ち、また感謝を伝えにいくというおばさんの心意気に、そういうものなのか?と軽く驚く。

日本代表戦を終えてしばらく経った頃、家のピンポンが鳴る。玄関を開けるとまたおばさんが立っており、お礼に行ってきたという。

旦那さんは報告を聞いて涙を流したそうだ。

それはそうだろう。自分が選んだ振袖が長い時を経って、また人の役に立つというのだから。そしてそれをわざわざ報告に来てくれる人がいるというのだから。

私が作り売る本も、そういうものであって欲しいと願うのと同時に、何年経っても感謝の心を忘れないおばさんのような人にならねばならないと胸に刻んだ。

6月20日(土)沢木耕太郎『途上の王国』

  • 途上の王国 ⼀号線を北上せよ モロッコ天涯編 (SWITCH LIBRARY)
  • 『途上の王国 ⼀号線を北上せよ モロッコ天涯編 (SWITCH LIBRARY)』
    沢木耕太郎
    スイッチ・パブリッシング
    2,310円(税込)
  • 商品を購入する
    Amazon
    HMV&BOOKS

週末実家介護のため9時に施設へ母親を迎えにいく。

沢木耕太郎『途上の王国 一号線を北上せよ モロッコ天涯編』(スイッチ・パブリッシング)読了。

10代の終わり、本を読み出した頃、気づけば『深夜特急』をむさぼるように読んでいた。

誰かに薦められたわけでもなく、書店で導かれるように手にしていたのだろう。

あれから30年以上の月日が経ち、また私は沢木耕太郎の新刊を手にしている。

ページを開いて数行読んだ瞬間に思い出したのは「憧れ」だ。旅への憧れ、自由への憧れ、沢木耕太郎への憧れ。最新作を読んでもその憧憬はまったく変わらない。

沢木耕太郎、やっぱりすごい。

6月19日(金)古典籍

午前中、オンラインの座談会を収録してから出社。すぐに内田剛さんがやってきて、Podcast「POP王の愛と自由と平和な本語り」を収録。

古書会館で開催されている「新興古書即売展」を覗くも、いまだスッキリ隊でも目にしたことのない和綴の本や軸物が多く、すぐさま退散。古書の世界の奥深さを垣間見る。

6月18日(木)Jr

代休。目を覚ますと雨の音。気が済むまで走るはずが予定が崩れる。

昼、整形外科に超音波を当てに行っていた息子を迎えにいき、ついでにバーガーキングにで、スパイシーワッパーセットを買い求む。やはりでかい。私はJrで充分。

6月17日(水)初対面

午前中、地方・小出版流通センターさんに注文短冊と見本をもって訪問する。

午後、信濃八太郎さんがやってきて、初の著作『ミニシアターをたずねて」と対面。信濃さん、「いやあー、いやあー」と言ったまま言葉が出てこず。

夕方、8月刊行の服部文祥さんの新刊の校正ゲラが届く。校正家さんの細やかな鉛筆書きを見ているとなんだかうれしくなる。

それにしても今年は、5月から12月まで毎月本を作ることになっており、もはや営業でなく編集だ。

6月16日(火)ハイフン

昼、AISAの渡さんが、高野秀行さんと内澤旬子さんのZINEの在庫を引き取りにやってくる。

午後、印刷会社から今月の新刊、信濃八太郎『ミニシアターをたずねて』が届いたので、初回注文〆作業に勤しむ。日販のデータ登録の際にハイフンを削除し忘れており全件エラー。初歩的なミス。改めてデータを作り直し、再登録。

ひと段落ついたところで、気分新たに10月刊行予定の単行本につける座談会をまとめる。文字量を半分くらいにせねばならず思い切りよくカットしていく。

6月15日(月)雑誌

夕刻、新幹線に乗り、京都から帰る。

今回のイベントも「本の雑誌」のたくさんの読者の方にお越しいただいた。

周りで共に本の販売をしていた出版社の人たちは、本の雑誌社のブースに目掛けてこられるお客さんの多さに目を白黒させていたが、それは「雑誌」という双方向性をもったものを作っているおかげであって、また椎名さんや目黒さんが長年培ってきた読者との距離感のおかげなのだった。

雑誌というものは本当に不思議なものだと思う。そして実は今こそ雑誌が必要とされているのではないかと思ったりする。とにかく「本の雑誌」を大切に作っていかなければならない。

6月14日(日)助っ人来訪

朝9時半、昨日に引き続き、大垣書店イオンモールKYOTO店さんに集合する。出張のよいところは通勤時間がないことだ。ホテルを出たらすぐ仕事。本日も徒歩5分で職場に着いた。日頃、毎日往復2時間以上通勤時間に費やしているのがバカらしくなる。365日、毎日出張がよいのではなかろうか。

昨日と同じ位置に立って、売り子となる。午前中はお客さんも少なく、土曜と日曜でこんなに差があるのかと肩を落としていたものの、昼過ぎから昨日同様の賑わいとなり、売上も上々。

そういえば昨日は12時から14時に急にお客さんが途絶え、これは豪雨でも降っているのでは心配したのだけど、なんのことはないみなさんお昼ご飯を食べているのだった。当たり前のことではあるのだけれど、人間こんな時間通りにお昼を食べるものなのかと驚いたのだった。

本日は元助っ人アルバイトの小山さんと谷口くんが、それぞれたまたま京都を旅行していてこのイベントを知り(片方はInstagramで、片方は大垣書店本店に貼ってあったポスターを見て)、もしや私がいるのではと覗いてくれたのだった。

まさかの京都での再会にうれしく喜びあったのだけれど、こうして会うことができるのも「本の雑誌」が続いているからなのだ。そして続いていられるのは、読んでくださる方がいるからで、その奇跡のような連なりに感謝と感動を覚える。

6時までしっかり本を売り、2日間のお祭りは終了となる。大垣書店のH店長から売上目標達成しましたとうれしい報告もあり、心地よい疲労を覚える。

夜はたまたま福岡から旅行に来ていた書店員さんと飲む。

6月13日(土)始発電車から2本目

朝5時22分、始発から2本目の武蔵野線に乗って、6時42分の新幹線に乗る。

はたして出張というのはいつから業務になるのだろうか。通常の出勤であれば通勤時間は業務に含まれないが、出張となれば現地に着くまで3時間も4時間もかかるのだ。

それを単なる移動時間といわれては相当な拘束時間になるのではなかろうか。もし移動時間も勤務に相当するのであれば、本日私は午後2時には8時間労働を終え、お役御免となるのだが、まあ現実には6時まで大垣書店イオンモールKYOTO店の売り場に立ち、「会いにゆける出版社フェス」に参加するのだった。もちろんそれについてまったく不満などなく、この日を指折り数えていたほどだ。

8時51分、京都に降り立つとすぐに駆け出し、駅前のイオンモールに向かう。集合時間の9時にギリギリで間に合う。

オープン前の店内で、他の版元の方々と机を運び、本を並べる。180センチの机の半分が本日の本の雑誌社書店である。お隣は朝日出版社で、あちこちのイベントで顔を合わせることの多い営業の橋本さんと並んで開店を迎える。

京都新聞に記事が掲載されたおかげか、あるいは昨年と展開場所が変わった影響か、売り場はたくさんの人で賑わう。わが本の雑誌社のブースにも「本の雑誌」をお読みいただいている方や昨年の下鴨中通ブックフェスにご来場いただいた方などやってきてくださり、18時の終了時間まで楽しく過ごす。

京都の定宿であるアルモントホテルにチェックインし、任務終了。

6月12日(金)本屋の人生

  • 本屋の人生
  • 『本屋の人生』
    伊野尾宏之
    本の雑誌社
    1,870円(税込)
  • 商品を購入する
    Amazon
    HMV&BOOKS

午後、中井の伊野尾書店改めBOOKSHOPトランスビュー大江戸中井店さんに納品に伺う。お店は来週火曜日のオープン予定で、その店名通りトランスビュー扱いの本が多く並ぶ独立系書店となるようだ。

その売り場に立つのは元々ここで3月まで伊野尾書店を営んでいた伊野尾さんで、終わるはずだった「本屋の人生」はひょんなことからまた続くのだった。

半ば埋まった棚を見ながら伊野尾さんが話す。

「先週あたりから棚詰めを始めたんだけど、本を棚に並べていると、あー自分の仕事ってこれだったなあって」

店を閉めて2ヶ月近くは閉店業務と開店の準備で本を触ることはなかったのだろう。とりあえず家業を継いで本屋になった伊野尾さんだが、いまやすっかり本屋なのだった。

6月11日(木)代休

代休。「無理をしない」は、本の雑誌社の社是だ。だから無理をしないで休む。出版スケジュールなんて知ったことではない。責任感は時に命取りになる。責任を持つのは自分の人生だ。

そういえば先日とある人から、平日のたとえば水曜日を休みにするとか決めちゃったらどうですかとアドバイスいただいたのだ。確かに月に2回週末にイベントに出ると、4日分代休が貯まるわけで、平日に固定で休んでもいいのかもしれない。

6月10日(水)人を残すは一流

紀伊國屋書店イトーヨーカドー木場店さんを訪問する。こちらのお店はかねてより辻村深月さんを応援しており、この度『ファイア・ドーム』の刊行により、ますます売り場を盛り上げているのだった。

書店員さんからその売り場の話を聞いていると、不覚にも涙がこぼれ落ちそうになってしまった。

もちろんその情熱あふれる売り場そのものにも感動したのだけれど、このコーナーをはじめたときの上司とのやりとり、そしてその熱をこめた売り場の大切さを教えてくれた上司というのが私もかつて大変お世話になった書店員さんであり、さらにこの書店員さんがはじめて勤務したお店というのが、こういう情熱にあふれた売り場を展開し、私もそこでデビューしたての朝井リョウや西加奈子の作品を手にしたお店だったのだ。

そうして脈々と売り場作りの礎が残されているということに私は感動したのだった。

お店を出たところで堪えきれず涙がこぼれ落ちてしまった。

6月9日(火)凪良ゆう『多類婚姻譚』

  • 多類婚姻譚
  • 『多類婚姻譚』
    凪良 ゆう
    講談社
    2,090円(税込)
  • 商品を購入する
    Amazon
    HMV&BOOKS

「本の雑誌」7月号が無事できあがり、浜田、近藤、助っ人アルバイトと封入作業に勤しむ。

娘から借りた凪良ゆう『多類婚姻譚』(講談社)がとてもおもしろかった。

「結婚」がテーマになっており、愛とは何か?共に暮らすとは?とページをめくりながら考えさせられるが、結婚は当然社会と切り離すことはできないわけで、だからまさしく「今」が描かれており、これは「現代」小説の傑作でしょうと胸が打ち震えた。大好きな金原ひとみに通じるおもしろさなのだだ。

電車に乗ってインスタにすごいスピードでいいねつけてく人とか、丸善に納品に行く時に私の横を歩いて追い抜いていく丸の内で働くビジネスパーソンとか、それこそスタバでノートパソコン叩いている人でもいいんだけど、とにかく自分とまったく接点を感じられないというか、出会うことも話すこともないだろうなあと思う人たちがたくさんいて、でもそれは興味がないわけじゃなくて、みんなどうやって生きてるのかなあっといつも思っていた。毎日どんなことにため息き、どんなことに微笑んでいるのかと。

『多類婚姻譚』は5篇からなるゆるやかな繋がりのある連作短編集でいろんな人が出てくるのだか、その一人ひとりが私の隣でインスタを見ている人やスタバで座っているような人に思えてくる。

凪良ゆうが現代小説のトップランナーに躍り出た。

6月8日(月)縁

  • ミニシアターをたずねて
  • 『ミニシアターをたずねて』
    信濃八太郎,信濃八太郎
    本の雑誌社
    2,750円(税込)
  • 商品を購入する
    Amazon
    HMV&BOOKS

実家より出社。2週に一度の介護だとずいぶん気持ちが楽だ。楽な分母親に優しくなれる。

午後、表参道の山陽堂に赴き、6月の新刊信濃八太郎さんの『ミニシアターをたずねて』の原画展の打ち合わせ。

思い起こせばそもそもこの本は、昨年の6月に亡くなられた信濃さんのお父さんの蔵書整理を古書現世の向井さんが頼まれ、人手が足りないということで私もお手伝いにあがったのだった。それまで信濃さんとは面識はなく、ただ西村賢太さんの本の装画を描かれているイラストレーターであり、そういう意味でファンであったので喜んでお手伝いしたのだ。

その際、本の雑誌社の杉江が来るということを伝え聞いていた信濃さんが、WOWOWシネマのnoteで連載していた原稿を書籍にいたいと考えており、それをプリントアウトして用意していたのだった。

私はマーケティングなんてできないので、こうした縁で本を作っている。先月刊行した世田谷ピンポンズさんの『都会なんて夢ばかり』と『感傷は僕の背骨』も、尾道の「古本屋 弐拾dB」の藤井さんにご紹介いただいたのだった。

6月7日(日)母親の生活史

[断片的な母親(昭和15年生まれ)の生活史]

「小学生のときにさ、池上の踊りのお師匠さんちにもらわれていったのよ。えっ? 貧乏で食べるものがなくて口減らしよ。上のお姉さんは三鷹の家にもらわれていった。昔はみんなそうだったのよ。私は踊りが上手かったらしくて、子供の居ない踊りのお師匠さんが跡取りにしようと思ったのよ。でもさあ、お金持ちだったけど、踊りなんかおもしろくないじゃん。ひと月もしないうちに逃げて帰っちゃった。ダイニケイヒンコクドウをね、走って帰ったの」

宮本輝『湾』(新潮社)読了。

美しい装丁に惹かれ手にしたが、久しぶりに文学作品を堪能。

6月6日(土)暇

2週間ぶりの週末実家介護。本日はケアマネと介護施設の人が来ての面談というかケアプランの見直し。

母親が施設は暇だと嘆き、それに対して施設の人が麻雀やトランプなどを提案している。

家にいる方が暇だと思うし、そもそも暇でない老人というのがどれほどいるのだろうか。暇が欲しくて老人になったのではないのか。

暇が嫌ならZINEをこさえて文学フリマに出店したらどうか。老ZINE。

6月5日(金)浅田美代子

午前中、企画会議。ページを埋めることを優先する人との戦い。おもしろくなければページなどいくら埋めても仕方ないのだ。

昼、古書会館で開催されている萬書百景市に来た北原尚彦さんが来社。50年くらい記しているらしい北原さんの日記の記録力におののく。私ももっと克明に記しておくべきだった。

北原さんが帰った後、私も萬書百景市を覗きにいき、春名徹『漂流 ジョセフ・ヒコと仲間たち』(角川選書)を買い求む。

午後、青入れ。

今日まで続いた朝日新聞「語る」の浅田美代子さんがめっちゃくちゃかっこよかった。

「私ってもともと重さがないから、仕事もそのまんまで続けたい。周りの人に気を使われるような立場には、絶対になりたくないんだよね。」

「重くなって、良いことなんてない。周りから、ちゃんとダメ出ししてもらえなくなったら、もう進歩はないじゃん。この年齢になって言うことじゃないかもしれない。でも、私はこれからも進歩できたら良いなと思ってる。だから、このまま軽い感じでやっていきます。どんな仕事もおもしろがって。」

こういう人になりたい。

6月4日(木)辻村深月『ファイア・ドーム』

  • ファイア・ドーム (上)
  • 『ファイア・ドーム (上)』
    辻村 深月
    小学館
    2,090円(税込)
  • 商品を購入する
    Amazon
    HMV&BOOKS
  • ファイア・ドーム (下)
  • 『ファイア・ドーム (下)』
    辻村 深月
    小学館
    2,090円(税込)
  • 商品を購入する
    Amazon
    HMV&BOOKS

辻村深月『ファイア・ドーム』がついに発売となったので、いそいそと三省堂に買いにいく。もちろん上下巻同時購入の特典「クリアスリーブ」もいただく。

『ファイア・ドーム』は、小学館の楫野さんが直接プルーフを持ってこられたので、ほとんどプルーフは読まない私もその熱意に打たれ読んだのだが、あまりのおもしろさに唖然茫然とした。

そしてこんな超絶面白い物語を無料で読んだら杉江家は末代まで祟りにあう、いやそんな畏れよりもできれば5セットくらい買い込み布教してまわりたいと、改めて本の発売を楽しみにしていたのだ。

そうして手にした『ファイア・ドーム』はずしりと手に重く、その存在感がたいへんうれしい。面白さと重力は比例するのだ。

おそらく今後30年、いや50年は、『ファイア・ドーム』を超える小説は出てこない。その誕生の瞬間を今、迎えているのだ。

6月3日(水)台風

めずらしく予想通り台風接近で大雨、午後に予定されていた打ち合わせも早々にキャンセルとなる。武蔵野線はがんばっているようだが、そのがんばりがいつまで続くのかわからぬため、終日在宅勤務とする。

6月2日(火)身体

12時にブックジャーナリストの内田剛さんがやってきて、Podcast「POP王の愛と自由と平和な本語り」の収録。

13時に元流水書房、前図書新聞の秋葉さんがやってきて、しばし雑談。

15時に三鷹へ赴き、デザイナーの松本さんに『ミニシアターをたずねて』の色校を渡す。

17時半に府中に向かい、AISAにて高野秀行さんのZINEを引き取る。

全部オンラインや郵送を使えば済むことだけれど、私は自らの身体を使うことを好む。

6月1日(月)返品

とある書店にて。

「この間ね、70代くらいの老夫婦がお店に来たのね。手に紙を持っていて、この本ありますか?って。

それがさ、3日前に自分が返品した本だったんだよ。一年ちょっと並べていて、売れないから返しちゃったの。自分でハンディで売上データを確認して、もうしょうがないって返品したの。そのときの様子もありありと思い出せるわけ。

それをさ、3日後に訊かれるんだよ。お取り寄せしましょうかって聞いたんだけど、遠くから来てるからいいって。

書店員50年以上やってるけどすんごく悔しくてさ。眠れないくらい悔しいの。」

5月31日(日)自宅で過ごす日曜日

昨日まで出張だったため今週は週末実家介護はお休みだ。自宅で過ごす日曜日は相当久しぶり。週末といえば母親の介護で実家にいるか、イベントで本を売っているかのどちらかなのだから。

6時に起きてランニング。思い切り走る。もう走れないと思うまで走る。

走りながら思うのは結局施設にいる母親のこと。3年前に脳梗塞を患い、今は平日を施設で、土日を実家で過ごしている。それで幸せなのか。母親の幸せとはいったいなんなのか。

しかしその週末介護も疲れたので、そろそろ完全に施設に預けようか考えている。するとどこかからか罪悪感が湧いてくる。その罪悪感はいったいどこから湧いてくるのか。自宅で過ごすことが幸せで、施設で過ごすことは不幸せなのか。それは誰にとって幸せで誰にとって不幸せなのか。自分の人生の終わらせ方を考えていなかった母親自身が悪いのではないのか。

そんなことを考えているうちに20キロほど走っていた。

« 2026年5月 | 2026年6月 | 2026年7月 »