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7月26日(日)病院
昨日、イベントがあったおかげで今週は母親の介護は休み。今週だけでなく来週も文学フリマ香川で、再来週はBOOK MARKETがあるため介護は休みで、母親は一ヶ月介護施設にいることとなる。浮かんでくる罪悪感をランニングで蹴散らす。
夜、仕事から帰ってきた息子が、同居している義母に声をかける。
「ばあちゃん、明日、病院何時に行くの?」
夢中でうなぎを食べていた義母は「えっ?」と聞き返した。
息子が改めて大きな声でゆっくり聞く。
「びょ、う、い、ん、何、時、に、行、く、の?」
「ああ、明日は9時45分よ」
「わかった。おれが車で送っていくから」と息子は笑顔を向ける。
「明日は仕事ないの?」
「午後からだから大丈夫」
義母は風呂場に向かう息子に両手を合わせて頭を下げていた。
7月25日(土)わざわざ
夜、中延の隣町珈琲にて世田谷ピンポンズさんと又吉直樹さんのトークイベント立ち会いがあり、その前に丸善丸の内本店さんと有隣堂大井町店さんを覗くと、どちらも大盛況で、しかも若い人が多い。平日の売り場と全然ちがう景色だ。
銀座の教文館さんもおっしゃっていたが、どこも土日型になっているということなのだろうか。いまどき平日に本屋さんに行ける余裕の人なんて限られているということか。
そもそももはや日常に本屋さんはなく、「わざわざ」いくところになっているということだろう。
わざわざいく本屋さんに出向く本を作らねばならない。
7月24日(金)インターン
本の雑誌社でインターンをしたいという学生がやってる。本の雑誌社では求人をしておらず、なのでインターンというのを受け付けていないのだが(そもそもインターンというのがなんなのかもわかっていない)、それでも仕事の話を聞きたいというので2時間ほどお話しする。
きっと私の子供も、こうしてどこかで大人のお世話になっているのだろう。
7月23日(木)100万部の秘密
昼、お茶の水のディスクユニオンでザ・クロマニヨンズ「JAMBO JAPAN 2025-2026」を購入する。
一昨年だかにラジオから流れてきた「キャブレターにひとしずく」を聴いて魂が奮い立ち、しかしザ・クロマニヨンズはApple Musicなどのサブスクはやっていないので、その一回しか聴けずにいたのだ。この度、ライブ版が発売になったと知り、来週に迎える自身の誕生日プレゼントとして買い求めた。
丸善津田沼店を訪問しSさんと話していると、「杉江さんも一緒に飲んだことのあるS出版のIさんからこの間、連絡あってさ。彼女が作った本が、11年かけて100万部達成したんだって」と教えていただく。
そういえばネットのニュースか何かで見たかもと思っていると、「そうやって時間かけて売り続けるってすごいよね。俺たちすぐ見切っちゃうし」と話しを続ける。
言われてみれば2ヶ月や3ヶ月売れなければ私ももうダメかと見切ってしまいがちだし、たとえ売れたとしても11年間販促し続けるのは並大抵の思いではできない。たしかにそうだなあと感心しながらも、実は私は別のところに深く感心したのだった。
100万部の報告をわざわざ書店員さんにするS出版のIさんすごくない!?と。
たとえ本を売り出すときにお世話になったとしても11年も前なのだ。書店員のSさんもその間にあちこち異動されていたし、そのS出版Iさんも本を作っているのだから営業から編集に立場も変わってると思うのだ。
それが100万部達成という最も華やかなときに、初めの一歩を踏み出した頃を思い出し、きちんと報告できるだろうか。
こういう丁寧な仕事をしているからこそ、その本は100万部に辿り着いたのだろう。
来週には私も55歳になる。まだまだ学ぶことばっかりだ。「キャプレターにひとしずく」を垂らし、「フルスイング」でがんばろうと思う。
7月22日(水)大失態
とあるかなり大事な会議があり、そのためにひと月前から資料を読み込んでいたのだが、メールに記されていたMicrosoft Teamsのリンクを踏んでオンラインを繋ぎ、いざ自己紹介をしようと思ったら、音声が伝わらないのだった。
「杉江さんの声が聞こえてません」という声は聞こえるのに、私の声はそこにいる10人以上の人たちに聞こえていない。おそらく口をぱくぱくする映像だけが流れているのだろう。
パソコンを立ち上げ直したり、いろいろとしてみたが結局繋がらず、本部に電話を繋いで、その電話の音を拾ってもらうというIT原始人のような状況で、1時間の会議を終える。
のちに落ち着いて調べてみればMacの「セキュリティとプライバシー」の設定だったのだが、時すでに遅し。
7月21日(火)人身事故
激暑。38度超え。そんななか必死に仕事をして帰ってきたのに、南浦和駅で乗り換えるべく、武蔵野線のホームに上がると人で妙な空気が漂っている。すぐに構内アナウンスがあり、武蔵野線が人身事故で止まっており、復旧までには30分以上かかるという。さらに動いたとしても電車は相当遠くにおり、すぐにはやってこないと。
こんな茹だるような暑さの駅のホームに30分も1時間もいたらひっくり返ってしまうだろうと、すぐさま京浜東北線のホームに戻り、浦和駅からバスでの帰宅を試みる......が東口のロータリーには長蛇の列ができているのだった。
歩く、しか、ない、のか。
浦和駅からとぼとぼと、いまだ30度を超えるアスファルトの歩道を、1時間歩いて帰宅する。その横を「さいたま東営業所行き」のバスが追い越して行く。......。空いている。そうか、この行き先のバスは乗る人が少ないのか......。
7月20日(月・祝)クーラーの下
3連休だと気付かぬ様子で、母親は介護施設の車に乗っていった。私もすぐに実家を後にし、自宅に帰る。久しぶりの休日だ。
といってもランニングできるような気温ではなく、結局実家にいるのと一緒でクーラーの下で横になり、本を読む。
夜、三日間、外で働いていた息子が帰ってきて同じようにクーラーの下で寝ている。隣にそっと寝てみるが、息子の胸板は私の何倍も厚く、足もずっと向こうにあった。
7月19日(日)激暑
8時前に朝食の準備をして母親を起こす。朝飯食べ終えた後、すぐに母親の車椅子を押して父親のお墓参りと散歩に出かける。
この時間ならばと思ったものの、日陰以外は汗が流れ落ちる暑さで、予定の半分で帰宅。カルピスを買って母親に飲ませる。しばらく散歩は控えたほうがよさそうだ。
終日クーラーの下で母親を見守りながら、読書。
7月18日(土)二勤一休
8時に家を出て介護施設にいる母親を迎えにいき、実家へ。介護は3週続くとものすごく面倒くさく感じる。二勤一休制を導入しよう。
病院の往診があり、先々週実施したアルツハイマーのテストは16点とかなり悪化していた。しかし血液検査は問題なく、血圧などはかえってよくなっており、薬がひとつ減らすことに。
午後は母親の親友がセブンイレブンで売っているGODIVAのアイスを差し入れにもってきてくださる。
7月17日(金)マルチタスク
出張精算をし、手書き原稿の打ち込みとZINEの入稿、上半期ベストテンのランキングボード作成・送付などに一心不乱に取り組んでいると、内田剛さんがやってきてPodcastの収録、大阪から読者の人がやってきてお話、京都新聞の営業と雑談など、マルチタスクもいい加減せよと夕方会社から逃亡する。
銀座の教文館さんを訪問し、店長のTさんに購入予約いただいていた『文庫千趣』をお届け。坪内祐三さんのイベントにも駆けつけていたT店長は真四角のそれを受け取ると満面の笑みを浮かべた。
7月16日(木)祇園祭
午前中から京都に移動し、打ち合わせ。
京都は祇園祭ということで、すごい人出であった。一番人気という長刀鉾を案内していただき、大丸の享保二年という暖簾をくぐる。「粽(ちまき)買わないんですか?」と聞かれたが、それは移住してからのお楽しみ。
ホテルが高いので、今日は泊まらずに帰る。
7月15日(水)版元営業的快挙
8時21分東京駅発のぞみ239号に乗って新大阪へ。本日は近鉄南大阪線河堀口にある本屋さんBOOK'N BOOTHにて、高野秀行さんのイベントがあるのだった。
大阪、猛暑。東京もかもしれないがとにかくこの日の大阪は暑かった。
そんな中、JR大阪駅の連絡橋口から出、北側に降り、ルクアの脇を歩いていくと阪急梅田駅、すなわち紀伊國屋書店梅田本店の真正面に出ることを知る。版元営業的快挙大発見。
その紀伊國屋書店梅田本店さんは11時前から大混雑で、おそらく日本で一番活気のある本屋さんだろう。売り場も工夫・整頓されており、とても本が買いたくなる。この日は、紀伊國屋書店梅田本店が選んだ「第1回うめ推し小説大賞」というのが発表されており、町屋良平『IDOL』(太田出版)がどどどーんと展開されていた。
いつか紀伊國屋書店梅田本店さんで推されるような本を作ってみたい、という欲望がふつふつと湧いていてくる。
夕方、140Bの青木さんと合流し、BOOK'N BOOTHさんへ。なぜに青木さんとともに行くかというと、それは2013年の『謎の独立国家ソマリランド』のイベントをMARUZEN&ジュンク堂書店梅田店で開催したことから話が繋がるわけで、ここでは割愛するけれど、深い縁と情があって、われわれはイベントのお手伝いをするのだった。今日、何がうれしかったかというとその2013年のイベントに来られていた方が本日のイベントにも来ていたことだ。
打ち上げではしゃぎすぎ、終電で北浜のホテル、フォーポイント フレックスに帰る。
7月14日(火)ROTH BART BARONのSUMMER TOUR 2026
夜、パーシモンホールで、ROTH BART BARONの「SUMMER TOUR 2026」を観る。
今回はトランペットの竹内悠馬さんのコーラスに圧倒される。力強さと繊細さを兼ね備え、ヴォーカルの三船雅也さんの美しい声にさらなる力を与えている。ドラムの工藤明さんともどものハーモニーに引き込まれる。アンコール終えてもみな立ち去らず、ダブルアンコールとなる。
7月13日(月)直納
実家のある武里から神保町へ。10時9分に出社。パソコンの電源を入れる前に事務の浜田が「今日忙しいですか?」と聞いてくる。
月曜日に忙しくないビジネスパーソンなどこの世にいないだろうと思ったが、浜田は「新宿の紀伊國屋書店さんから『口開け酒場ひとり呑み』の注文がありまして、なんだか週末で売り切れてしまったと」。そこまで聞いたところで30冊をトートバッグ二つに詰めて両肩にかけて会社を飛び出した。
10時55分、紀伊國屋書店さんの地下にある仕入れに納品。紀伊國屋書店さんは本日電気設備の点検だとかで、開店は12時だそう。売り切れ時間を極力減らせたことに満足して帰社。
12時半に祥伝社の営業であるB氏が来社。宇佐美まこと『白と黒のソナタ』の重版が上がったということでわざわざ持ってきてくれたのだった。その帯には私のコメントとして「2026年のベスト1確定!」がデカデカと印刷されている。しばし本の売り方について談義。
午後は丸善丸の内本店さんに追加注文いただいた「本の雑誌」8月号を直納に伺う。半年ほど前に毎月追加になるのでと定期部数を増やしていただいたのだが、先月の7月号と今回とさらに追加をいただく。うれしい。
その後、銀座の教文館さんではじまった「新潮文庫真夏の"裏"50冊」フェアを覗きにいく。
7月12日(日)麻宮好『四十年目の春』
朝起きたら浦和レッズの柴戸海が契約解除されていてなんじゃそりゃと叫ぶ。
掃除を後回しにして朝早く母親の車椅子を押して、父親のお墓参りと散歩。それでも足を止めると汗が噴き出す。そろそろ散歩も難しい季節。
持ち帰った仕事もやる気が出ず、「最後泣いちゃいました。」と精文館書店中島新町店の久田さんからおすすめいただいた麻宮好『四十年目の春』(祥伝社)を読む。泣き虫の私は最後どころかそこかしこで涙をこぼしてしまった。
『四十年目の春』は、たくさんのLOVEが詰まった小説だ。家族愛、兄弟愛、そして夫婦愛。時代小説の良さが、存分に発揮されている。
清四郎という弱き父親に、わが父の姿を思い出す。それに輪をかけて弱い私も重ねてしまう。まるで自分のことのように感じられる小説だ。
そこかしこに大切な言葉も散りばめられており、これは何度も読み返す本になるだろう。
7月11日(土)追いかけっこ
週末実家介護のため、朝、施設に母親を迎えに行く。かれこれ2年半、こうしてほとんどの週末を介護で過ごしているのだった。
自転車に乗って一の割のマルエツに買い物に行き、並びにある惣菜屋さんのあけぼので今晩のおかずにメンチカツとコロッケを買う。
帰宅途中、母親の親友であるWさんとばったり。Wさんは毎週にように母親のところに遊びにきていたのに、今年に入ってからほとんど顔を見せずにいたのだが、足を悪くしたのと来週には心臓弁膜症で手術するらしい。
母親より元気だった人が追い越すように体調を崩していく。80代とはそういう時間なのだ。
7月10日(金)正味
4時起床。朝ラン6キロ。本日のランリス(ランニングリスニング)は、ぼくみんのPodcast。『本をひらく』の共著者大森皓太さんが出演しており、ゲームの話が大変面白い。
走りはじめは清々しい空気だったが走り終えるころは汗滴る真夏。シャワーを浴びて、ゆで卵とトーストの朝食をとりながら、W杯フランス対モロッコを観戦。
観戦中、精文館書店中島新町店の久田さんから「3年前に出た『月のうらがわ』がよかったので時々気にしてたんですけど、新刊の『四十年目の春』(麻宮好/祥伝社)がまた、すこぶるよきで!最後泣いちゃいました。」とメッセージが届く。この最強のフランスを観ていない人類というのが多く存在することを思い出す。
2リットルのペットボトルの水をすずらん通りのツルハドラッグで買って(84円)、9時57分に出社。
午前中は細々としたデスクワークに勤しむ。
2日ほど昼メシを抜いたので、奮発してみさち屋でとんかつと唐揚げの定食。100円値上げで1200円となっている。ランチスタメンからメジャーリーグに移籍してしまった。
午後、駒込のBOOKS青いカバさんに「本の雑誌」の納品にあがると、久しぶりに店主の小国さんがいらして長話。
小国さん、常々思っていたのだけれどと、版元は新刊と既刊の正味を変えたらいいのではと。刊行から何年も経った本は版元も書店も売るのが大変なんだからそれは正味を下げて互いに売る気を掻き立てたら良いのではと。
なるほどすごいアイデアだ。倉庫に眠っている本は結局いつまで経っても表に出ることは少ない。置いておくだけでお金はかかるのだから版元にとってはかなりの負担になっており、ならばたとえば刊行から2年ごとに正味が2%下がっていくとか、刊行から5年経った本は正味をどーんと下げるなど刺激を与えるのは必要かも。
最近営業に出ていると正味の話になることが多い。このような提案のほか、実際に正味の交渉となることもある。今のところみんな独立系書店での話だけれど、営業を続けて30年以上になるがこういう感じははじめてだ。わくわくしてくる。
カバさんを後にして、汗をかきながら目黒さんのお墓まで歩いていく。線香をあげ、本の雑誌8月号をお供えする。煙が青い空にすっと上がっていく。
7月9日(木)校正ゲラ
4時起床。昨日に引き続き某所から依頼を受けている案件にとりかかる。
それやりながら夜のうちにデザイナーの松本さんから届いていた新刊の装丁ラフを著者の服部文祥さんに転送する。服部さんも早起きなのですぐに感想と提案が返ってくる。編集者であり、かつては版元営業もされていた服部さんだけに注文のしにくいタイトルに不安を覚え、書名と副題を入れ替えることとする。『本のある世はすばらしい How wonderful life is while Books're in the world.』。
8時過ぎまでかかって、どうにかすべて終える。
9時半に出社。もはや今日の仕事は終えた気分なのだが、就業時間はこれからなので、仕事に励んでいると、服部文祥さんから再校の著者校が戻ってくる。あれれ、ゲラをB4用紙に出力して送ったはずなのになんでこんな小さな荷物なんだ?と首を傾げながら封筒をあけると、なんとなんと紙を切って折って貼って四六判に製本されているのだった。こんなゲラ(著者校正)見たことない‼︎ これは写真を撮ってXでポストせねば!と思ったけれど、先日三宅香帆さんが校正ゲラをポストして炎上していたので、ぐっと堪える。刊行イベント等があったら是非とも展示し見ていただきたい。
驚いていると八戸から読者の方がいらっしゃる。八戸の本屋さんの様子とヴァンラーレ八戸の話を伺う。
13時に倉嶋紀和子さんが来社され、本日搬入の『口開け酒場でひとり呑み』にサインをしていただく。「隙あらば呑む」という座右の銘をしたしめつつ130冊で1時間15分。早い。
そのサインしている間に信濃八太郎さんがやってきて、個展会場での売上伝票を届けてくださる。6日間で28冊の売上。信濃さんは日本一の版元営業かもしれない。
みな帰られたところで、今度は宮崎から読者の方がやってくる。推し活ついでというので何を推し活しているのかと伺うと佐野元春だという。そういえば今夜丸の内のコットンクラブでスポークスポークンワーズがあったのだった。しばし佐野元春談義に花を咲かせる。
夕方、『口開け酒場でひとり呑み』と『ミニシアターをたずねて』を持って神田明神へ。売れますように、重版かかりますようにと神頼みに勤しむ。
7月8日(水)キャッチフレーズ
朝4時起床。本日は朝ランを取りやめ、某所から依頼を受けている案件に向き合う。
8時までやって会社へ。9時45分出社。梅雨明け、だろうか。暑い。
午前中、会議。10月号の特集は「往復書簡」に、そして昨年神保町ブックフェスティバルに向けてこさえた(雨で売ることができなかった)ZINE 『神保町日記』を今年も製作することが決まる。
午後、中井の伊野尾書店改めBOOKSHOPトランスビューさんに直納に上がる(伊野尾宏之『本屋の人生』、高野秀行『チャットGPT対高野秀行 キプロス墓参り篇』『伸びしろマンがゆく!』)。
伊野尾さん曰く、来店客数は若干減っているが客単価は上がっているそう。お店の半分以上はトランスビュー扱いの本が並んでおり、それはかつての伊野尾書店ではあまりなかった本で、それらを数冊と重ねて買っていかれるお客さまを見ながら、以前の店作りを少し反省しているようだった。
本屋さんとは異なるけれど私もイベントで本を売っていて思うのは、お客さんは本当に何を買うかわからないということだ。データでもこちらの思惑でもなく、もはや「縁」というしかない。
電車に揺られながら昨日の飲み会で『ミニシアターをたずねて』の著者である信濃八太郎さんに言われた言葉が頭に浮かんでは消える。
個展会場から遅れてやってきた信濃さんは、生ビールをぐいっと喉に流し込むと、「僕、杉江さんのキャッチフレーズを考えてきたんです」と言うのだった。キャッチフレーズなんて求めていないし、そもそも発表する場もないのだから必要ないのだ。頼んでもいない余計なことをすると書いて信濃八太郎と読む、みたいなもんだろうか。
信濃さんはビール片手に学芸会で発表するがごとく声をあげた。
「理由は二の次、杉江由次(すぎえよしつぐ)」
完璧でしょうと微笑みを浮かべ、また生ビールをぐいっと飲み干す。
「理由は二の次」......。
たしかにそうかもしれない。
7月7日(火)「本の雑誌」8月号
4時起床。朝ラン6キロ。9時に出社。
本日は「本の雑誌」8月号が出来上がってくるのだけれど、その前に表参道のOPAギャラリーからいただいた追加注文(『ミニシアターをたずねて』)をもって納品にあがる。
急いで会社に戻るとすぐに中央精版印刷のTさんが「本の雑誌」を積んでやってくる。雨もギリギリセーフで、アルバイトの鈴木くんとともに台車に乗せ替え5階まで運び上げる。
3時過ぎまでツメツメ作業に勤しむ。
夜、編集の近藤と月島にいき、「肴や味泉」にて信濃八太郎さんと倉嶋紀和子さんと新刊刊行記念お祝い会。お二人とも信濃さんの師である安西水丸さんとこの居酒屋で酒を組み合わしていたそうで、楽しい夜となる。
7月6日(月)東京ブックツーリズム
5時起床。W杯ブラジル対ノルウェーを観る。ハーランドのゴールに雄叫びをあげる。7時過ぎに階下にいくと母親が起きて、着替えていた。
武里駅から出社。いつもは直通運転している半蔵門線で神保町まで来ているのだが、今日は気分を変えて北千住で千代田線に乗り換える。その千代田線、大変混んでおり、ぐぐっと押されて乗車すると背後にいたおばあさんが手をモゾモゾさせ、あろうことか私の尻を思いきりつねってきたのだった。おばあさんは逃げるように次の町屋駅で降りていったが、いったいなんだったんだろう。
10時27分に出社。昨日まで実家でやっていた校正チェックの不明点をメールやら原稿やらいろいろと付き合わせて確認していく。
午後、都営三田線で白山下車、そこから歩いて本の店&companyさんを訪問。先月、通り一本向こうから移転されたばかりなのだが、今度は白山駅からも本駒込駅からも近く、そして千駄木にも歩いていける。さらに人通りの多い道に面しているので、よき移転となったのではなかろうか。この移転先も実はお客さんの縁で見つけられたそうで、日々実直に暮らすということが大切なのだと教えていただいたよう。
このあたり、ブックツーリズムができる楽しいエリアになってきている。たとえばまず都営三田線で千石に向かい、旅と暮らしの本屋 アンダンテ、BOOKS青いカバを覗き、白山に移動。そこでは南天堂書房、本の店&companyを訪問し、千駄木に歩いて降りていけば往来堂書店、ひるねこBooks、まもなく再オープンするgururiがある。そこから不忍池を歩いていけば古書ほうろうがあり、不忍池をめぐって上野駅に出れば三省堂書店が駅にある。おそらくまだ私の知らない本屋さんもあるだろうし、ブックツーリズムで1日存分に楽しめるエリアだ。
7月5日(日)薬飲んだっけ?
くもり。朝食を食べ終えて庭を眺めていた母親が、「私、薬飲んだっけ?」と聞いてくる。母親が飲む薬は毎朝6錠ほどなのだが、それはさきほど自分で飲んだのだった。
昨日の往診で行われたアルツハイマーの検査もほとんど「わからない」と答えていた。今日が何日か、自分の年齢、自宅の住所(なぜか古い住所を答えていた)みんかあやふやになっている。脳梗塞で倒れて3年が過ぎ去ったわけだが、ボケに関してはだいぶ進んだ様子。
午前中、父親のお墓参りと散歩に出かけるが途中で雨が降り出し、車椅子を駆け足で押して帰宅。
雨が止んだ午後、母親の友達である伊藤さんがやってきて、話しているうちに昨日話しかけられた美容師さんが、中学の後輩だと教わる。
夜は10月に刊行する本の校正ゲラをチェック。校正は、一対一で抜かれた後にしっかりカバーしてくれるセンターバックのような存在で、大変心強い。しかしもう少し自分も責任を持って原稿と対峙しなければと深く反省する。
内澤旬子さんから突如原稿が3本届いて仰天す。
7月4日(土)美容院
くもり。二週間ぶりに母親を介護施設に迎えにいく。母親は私を見るなり、「あー、やっと帰れる」と深く息をつき、玄関を開けると「やっぱり家はいいねえ」ともらす。すぐにデリートボタンを押してわが記憶から消す。
ついてきた娘とアルゼンチン対カーボベルデを観てからランニングへ。
午前中、ケアマネさんがやってくる。特養に入るとそうそう帰宅はできないと教えられる。お金に余裕があれば有料老人ホームがおすすめだと言われるが、お金に余裕があるわけではない。
午後、往診。往診のお医者さんと看護師さんが大変人間味あり、母親はこの人たちに看取ってもらいたいと思う。
往診終えて、母親を美容院へ連れていく。通っていた美容院が実家から数十メートルということに介護をはじめて深く感謝する。
髪を切った母親を迎えにいくと美容師さんが、「この間テレビに出てましたよね」と言ってくる。テレビ?? と首を傾げていると本屋大賞のことで、そういえば朝のワイドショーに映り、友人知人たちが騒いでいたのだった。
しかしちょろっと映っただけでよくわかったなと思うが、母親が元気なときに息子が本屋大賞に関わっていると自慢していたのかもしれない。
7月3日(金)10日で100冊
晴れ。暑い。ランニング6キロ。
昨日訪れた山陽堂書店さんからメール。原画展用に100冊納品していた『ミニシアターをたずねて』が売り切れるかもとのこと。お安いご用と追加の納品に伺う。それにしても2750円もする本がものの10日で100冊売れるとは。それもこれも連日会場に立ち、お客さんにお声掛けくださっている信濃八太郎さんのおかげ。ありがたいかぎり。
副都心線に乗って池袋へ。婦人之友社に伺い、「婦人之友」9月号に収録される座談会に出席。お相手は夏葉社の島田さん、アノニマ・スタジオの安西さん、BOOKSHOP TRAVELLERの和氣さんで、お題は「本屋さんが好き! ワンダーランドへのいざい(仮)」である。何時間でも話せそうだった。
7月2日(木)酒造力
雨のちくもり。午前中、地方小出版流通センターさんへ『口開け酒場でひとり呑み』の見本を持って伺う。
午後、明日から信濃八太郎さんの個展がはじまる表参道のOPAギャラリーに『ミニシアターをたずねて』を納品にあがる。ちょうど信濃さんが設営にきており、書き下ろしたイラストを白い壁に並べている。
それ終えて共に山陽堂書店さんへ。こちらの個展は土曜日までで、明日明後日は歩いていける距離で、信濃さんの個展が各々開かれているのだった。
改めてミニシアターをイラストを眺めていると、この本のデザインしてくれた松本さんが階段を上がってくる。偶然の出来事。信濃さんに紹介すると、信濃さん素晴らしいデザインのお礼で頭を下げている。
表参道を後にして大宮へ。FM NACK5のTHE SEITARO★RADIO SHOW「1700」の出演を終えた高野秀行さんと府中から駆けつけた渡さんと酒造力大宮西口店で酒。
2時間半以上ビジネスの話をしていたはずなのに、帰る時に高野さんに言われたのは、「こんなにバカ話して笑ったのは久しぶりだ」だった。
7月1日(水)謎のクレーム
晴れ。代休。ランニング15キロ。心身ともにすっきりする。
妻は仕事のち、スターダスト☆レビューと杉山清貴&オメガトライブのコンサート。娘と息子も仕事。結局、私ひとりとなる。
娘を職場に送りつつ、浦和美園のイオンへ。旭屋書店さんで本を買っていると、隣で何やら包装を頼んでいた客が、ラップで包んだ本(デアゴスティーニの車のやつ?)が自立しないとクレームをつけ包み直しをさせている。なんで本が立たなきゃいけないんだ? 意味わからん。
突如Xからメールが届き、凍結されていたアカウント2号(@Honnozasshi)が復活する。どうやらアイコンとアカウント名、そして説明が元のアカウントに似ていたのがいけなかったらしい。
凍結解除を喜んだものの、いまだ元のアカウントは乗っ取られたままで、そちらをどうにかしてほしいと改めてメールを返信。
夜、娘を職場に迎えにいき、コンサート帰りの妻も迎えにいく。息子は自力で帰宅。
6月30日(火)小指『宇宙人の部屋』(ROADSIDERS)
日曜日にイベントで訪れた梅屋敷の葉々社さんで吸い寄せられるように手にした小指『宇宙人の部屋』(ROADSIDERS)がとてつもなくすごい本で、まさしく魂が震えた。
アルコール依存症の人の本というのは中島らもの『今夜、すべてのバーで』など名作がたくさんあるけれど、この『宇宙人の部屋』はそのアルコール依存症の人を彼氏(しかも二人)にもつ人が書いた記録で、その苛烈さ強烈さはもちろんのことだが、相当自身と向き合い客觀的な視点で描かれており、胸を鷲掴みにされるのだった。
私は酒に酔う人が嫌いだ。嫌いだからすっぱり縁を切るようにしているが、それができず甲斐甲斐しく面倒を見てしまう人がなかにはいる。どうせ酔いが覚めたらおぼえてないんだからほっとけよと思うのだが、それが度を超えると共依存という関係になり、この本はアルコール依存症の本でありながら、共依存から抜け出せない著者の叫びでもあるのだった。
あとがきを読むと本来は普通の出版社から商業出版物として刊行される予定だったが、「売れる」ために改変されたり、煽り帯をつけられそうになったため、刊行一カ月前に出版を取りやめたそうだ。
取りやめて、都築響一さんが出版してくれたのだが、その決断は間違っていなかったと思う。本当にすごい本とは、たとえ取次流通に載らなくても、こうして必ず出会えるのだから。
杉江由次 著作紹介
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- 『サッカーデイズ』
- 小学館文庫
- 2016年2月上旬刊行
- やりたいことはただひとつ。子どもとサッカーがしたい。父と娘の熱くて愛おしい日々を綴るエッセイ、待望の文庫化。
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