大阪を守る闇組織「在天別流」物語
文=東えりか
いよいよ来週から『プリンセス トヨトミ』の映画が公開される。大阪の町には大きな影の存在がある。あの壮大な物語をどのように料理したのか、とても楽しみだ。
しかし大坂の町を影で支え続けてきた一族といえば「在天別流」である。といえば「ああ、あれか!」と思い出される人も多いだろう。かつてNHK連続時代劇『浪花の華〜緒方洪庵事件帳』で栗山千明演じる東儀左近、彼女が属したこの集団もまた、千年の昔から大坂を守る人々であった。
原作『緒方洪庵 浪華の事件帳』シリーズ(双葉文庫)は男装した美少女が戦うその物語は"萌え"るとともに史実の狭間を描いた小説としても型破りの面白さでファンも多い。
その左近を主人公にした待望の新刊『遠き祈り』(双葉文庫)が発売された。今回緒方洪庵の出番はないが、おなじみの弓月王や赤穂屋なども健在だ。
その上、作者・築山桂の幻のデビュー作『浪華の翔風』(ポプラ文庫)が12年ぶりに復刊され、同時期に発売されたのは喜ばしい。本書が「在天別流」物語のすべての発祥になる。時代は『遠き祈り』の数年後。ここには、もうひとつの影、大坂城の密偵たちとの戦いも描かれる。開国まであと30年に迫った大坂の町を舞台に描かれた伝奇小説の傑作を、ぜひ味わって欲しい。
(東えりか)