第二回翻訳ミステリー大賞候補作発表!
文=杉江松恋
翻訳者が選ぶことが特色になっている翻訳ミステリー大賞の第二回候補作が発表された。作品の一覧は以下の通り(五十音順)。
『音もなく少女は』ボストン・テラン/田口俊樹訳(文春文庫)
『古書の来歴』ジェラルディン・ブルックス/森嶋マリ訳(武田ランダムハウスジャパン)
『卵をめぐる祖父の戦争』デイヴィッド・ベニオフ/田口俊樹訳(ハヤカワ・ミステリ)
『フランキー・マシーンの冬』ドン・ウィンズロウ/東江一紀訳(角川文庫)
『陸軍士官学校の死』ルイス・ベイヤード/山田蘭訳(創元推理文庫)
第一回の受賞作は『犬の力』(角川文庫)で、作者のドン・ウィンズロウ、訳者の東江一紀は同じペアで連続のノミネートとなる。また、今回訳書が二冊候補になった田口俊樹も、昨年に続いて候補者となった。
十一月末で締め切られた予選は、一冊以上のフィクションの訳書があるか、それに準じた業績のある翻訳者が投票の有資格者で、二〇一〇年度に読んだ新刊の中から、読者にお勧めしたい秀作三作を選んで書名を挙げる形式。最終選考は、上記の五作をすべて読んだ翻訳者に投票の権利があり、一作に絞って票を投じることになる。前回は最終選考のみ投票者の氏名を公開したが、今回は一次投票から明らかにする方針に転じた。
圧倒的な読書量の書評家や、実作者という観点から作品の質を追及する小説家。翻訳者はそのいずれとも違う「言葉のプロ」の観点から作品を見つめることになる。第二回の選考では、どのような独自性が発揮されることになるのか、結果に注目したい。
なお受賞作は、二〇一〇年四月二日(土)に開催される授賞式で発表される。
(杉江松恋)
翻訳ミステリー大賞シンジケート
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