打倒!本の雑誌!! 『とつげき!シーナワールド』編集部緊急コンニャロ対談 シーナとニシザワが吼える!!

文=本の雑誌特派員

今月末創刊となる椎名誠コノヤロ編集『とつげき!シーナワールド!!』から、編集長とデスクの対談が届きました。掲げた目標は、なんと「打倒!本の雑誌!!」 うう、力ではすぐに負けそうですが、はたしてどんな意気込みで新たな雑誌を創刊するのか、そして椎名さんにとって雑誌とはなんなのか。乞うご期待!


第一回 「38年ぶりの新創刊なのだ」


ニシザワ:さてさて、シーナさん。わしらの新雑誌『とつげき!シーナワールド!!』が、いよいよ創刊と相成ります。これから春夏一回、秋冬一回ずつ、年2回刊を目指すわけです。そのメデタイ創刊テーマが「飲んだビールが5万本!」と。


シーナ:その前にニシザワ、ビール追加で頼んでくれよ。


ニシザワ:あ、りょーかいです。エクスキューズミー。ワンビアプリーズ。えっと、それで......思えば「本の雑誌」の第一号が1976年ですから、38年ぶりにシーナさんが新しい雑誌を手掛けることになります。


シーナ:38年......。そうか、もうそんなになるか。          


ニシザワ:「本の雑誌」は500部発行からスタートしたと、「本の雑誌血風録」にあります。


シーナ:あの頃は右も左も分からずに、逆上してイキナリ500部も刷ってしまって焦ったなあ。


ニシザワ:こちら「とつげき!シーナワールド!!」の創刊号「飲んだビールが5万本!」は、のっけからその10倍の5000部スタートですぜ。


シーナ:おー、ニシザワも逆上したか?


ニシザワ:ぐへへへ。スギエも「5000部はいける」と言ってますし、まあなんとかなるでしょうて。売れ残ったらキャンプ焚き火の火種に使いましょう。


シーナ:おいっ!


ニシザワ:話を戻しますが、「本の雑誌」も第四号時には4000部になっていたようですね。急成長したと。それから38年。産みの親から見て、いま「本の雑誌」をどう見てますか?      

                                         
シーナ:俺と目黒は始めた当初から、「俺たちこの雑誌の部数をどれだけ伸ばせていけるかな」とよく話をしていたよ。やはり採算をキチッととらないといけない訳だ、経営者としては。当時、「本の雑誌」のような、まあカッコよく言えばカウンターカルチャーマガジンは寿命30年説というのがあってね。「面白半分」「話の特集」「広告批評」......みんな30年過ぎると休刊していくわけなんだよな。それとくらべたらよくぞここまで続いていると思うよ。


ニシザワ:雑誌が30年以上続く確率ってメチャクチャ低いでしょうね。100冊出たら1~2冊くらいなのかな。もっと少ないかな。


シーナ:俺やお前が始めた「ウ・リーグ」じゃないけどさ、どんどん歳をとっていくわけだ、何事も。雑誌だってほっておくと、作り手と読者がそのままひとつずつ歳を重ねていくわけで、どんどん年寄り雑誌になるわけだよ。だから換骨奪胎、良いところは残しつつも思いきって若い連中に、若い感性で「本の雑誌」を作っていってもらおうと思ったわけなんだよな。それを目黒に言ったら、奴も同じことを考えていたんだと思う。すぐに「そうしよう」となったんだよ。我田引水ではないけれど、それが奏功していまも続いているんじゃないかな。


ニシザワ:「ウ・リーグ」も「本の雑誌」も引き継いでくれる人たちがいたと。


シーナ:その通り。「本の雑誌」には、浜本や杉江のような若い連中がいたというのがもっとも良かったことだよ。浜本の慎重さと、杉江の行動的で前のめりな感じが上手くバランスとれてると思うよ。もっとも、浜本は経営者だから慎重なのはしょうがないんだけどな。


ニシザワ:あとはやはり骨太なコンセプトが良かったのではないですか。自分達が好きな本をまとめて紹介していこう、という。刊行物にあふれる書店で呆然と立ちすくむ僕らの水先案内人となってくれてる。


シーナ:そうだな。あとはこれは目黒が偉かったんだけど、「とにかく仲間ボメはやめようぜ」と。それが徹底していたな。それが未だに続いていて、俺なんか「もうそろそろ俺の本なども褒めていいんだよお」と思うけど、一冊も取り上げてくれないもんな(笑)。


ニシザワ:『とつげき!シーナワールド!!』も、末永く続けていきたいものですね。


シーナ:そうだな。おまえ30年後はいくつ?


ニシザワ:えっと、77歳......ですか。


シーナ:ないな(笑) 。    


(10月吉日。バリ島にて)

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