『定本コロコロ爆伝!! 1977-2009『コロコロコミック』全史』渋谷 直角

●今回の書評担当者●ブックス・ルーエ 花本武

  • 定本コロコロ爆伝!! 1977-2009 ~ 「コロコロコミック」全史
  • 『定本コロコロ爆伝!! 1977-2009 ~ 「コロコロコミック」全史』
    飛鳥新社
  • 商品を購入する
    Amazon
    HonyaClub
    HMV&BOOKS
    honto

 ブックス・ルーエの花本と申します。グッときた本をあれこれ紹介して、盛り上がっていきたいとおもってますので、しばしのお付き合いをよろしくお願いします。
 一回目ですし、自分の出自だったりお里が知れ渡るような本をピックアップさせていただくことにしました。

「定本 コロコロ爆伝!!1977~2009『コロコロコミック』全史」飛鳥新社

「コロコロコミック」、言わずと知れた小学生男子(ガキ)のバイブルでありつづける月刊誌です。ドラえもんと藤子先生をフィーチャーするためのコミック誌としてスタートしたコロコロは、まさに転がるように様々なガキカルチャーを取り込み進化してきました。その過程で確立したのが、マンガとホビーとイベントの三本柱です。マンガ誌、ホビー誌は、いくらでもありますが、その二つの要素とイベント企画を有機的に絡めて、ガキ達の心を鷲掴める雑誌は無類と言えましょう。雑誌に限らずどんな媒体にもコロコロのようにガキをグルーヴさせることはできないはずです。

 コロコロの読者層は、広く見積もって小学3年から6年の間になるかとおもわれます。まさにガキ真っ只中。ぼくも当然熟読しておりました。その頃に与えられた影響は計り知れません。そんなあの頃の個人的な思い出を少々。
 マンガ好きでマンガ家になることを公言していた親友(結局デザイナーになりました)の愛読誌がコロコロで、自然と自分も手に取るようになり、どっぷりはまりました。当時も今も発売日は15日。待ち遠しくて仕方ありません。誕生日を15日に控えたある6月、父になんかやるから言ってみろと相成り、迷うことなくコロコロを所望しました。それだけ?って顔をされたので、じゃあ次の誕生日まで一年分のコロコロをくれと大きく出ました。可決され契約は滞りなく履行されたものです。

 課題図書に戻ります。この本をつくったのは渋谷直角という人で1975年生まれ、ぼくとはほぼ同世代です。そんな直角さんが歴代の編集長達や、マンガ家、その担当編集者、ホビー記事をまかされたライター、あのド迫力の表紙のデザイナーなんかと、熱すぎるトークセッションを繰り広げるのですが、そのツッコミ所がいちいち自分の勘所とリンクしていて、幾度となく膝を叩き、喝采、爆笑してしまいました。ですので、そのあたりの世代の方々には、とくに自信を持っておすすめします。
 凄かったのが高橋名人と田宮の前ちゃんの対談です。信じられますか?あの両巨頭の激突ですよ。他にもビックリマンの反後博士から大人の事情を伺ったり、ミニ四駆ブームの功労者ながら厳しい人生を歩んだマンガ家、徳田ザウルス氏の嘆息があったり本当に充実した内容。直角さんのコロコロ愛の結晶です。
 そして改めて感じるのは、コロコロ関係者の熱さです。彼等はガキ達に対して本気で過剰であり、対等なのです。だから日本のガキはある時期コロコロに心底熱中するのでしょう。

« 前のページ | 次のページ »

ブックス・ルーエ 花本武
ブックス・ルーエ 花本武
東京の片隅、武蔵野市は吉祥寺にてどっこい営業中のブックス・ルーエ勤務。通勤手段は自転車。担当は文庫・新書と芸術書です。1977年生まれ。ふたご座。血液型はOです。ルーエはドイツ語で「憩い」という意味でして、かつては本屋ではなく、喫茶店を営んでました。その前は蕎麦屋でした。自分もかつては書店員ではなく、印刷工場で働いていて、その前はチラシを配ったり、何もしなかったりでした。天啓と いうのは存外さりげないもので、自宅の本棚を整理していて、これが仕事だったらいいなあ、という漠然とした想いからこの仕事に就きました。もうツブシがきかないですし、なにしろ売りたい本、応援したい作家に事欠かないわけでして、この業界とは一蓮托生です。