『十角館の殺人』綾辻行人

●今回の書評担当者●芳林堂書店高田馬場店 飯田和之

  • 十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)
  • 『十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)』
    綾辻 行人
    講談社
    810円(税込)
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 最近ではメフィスト賞を受賞された周木律『眼球堂の殺人』が話題をさらっていますが、それに繋がる系譜として言われているのが年代順に島田荘司『斜め屋敷の殺人』、綾辻行人『十角館の殺人』、森博嗣『すべてがFになる』です。個人的には『すべてがFになる』のあとに霧舎巧『ドッペルゲンガー宮』を入れたいものですが。

 どれもエポックメイキング的な作品ですが、やはり『十角館の殺人』(講談社文庫)はそのなかでも一際強い印象を残している作品なのではないでしょうか? 今回はその新装改訂版を紹介させて頂きたく思います。

 エラリイ、アガサなどお互いを推理小説の大家の名前で呼び合う大学の推理小説研究会のメンバーがその名の通り十角形の建物に行きそこで起きる連続殺人事件。その十角館を設計したのは変わった建築を造ることで有名な中村青司。その青司は十角館の事件が起こる半年前に自身の設計した全て青色で作られた青屋敷の火災で亡くなっていた。

 事件は十角館の事件を描いたパート『島』と主に青司の事件を調べる今回の合宿には参加しなかったメンバーなどの『本土』パートで交互に語られる。

 犯人の見当もつかないまま十角館という不思議な館に魅入られたように次々に殺されていく研究会のメンバーたち。仲間の誰かが犯人であるのかと思い疑心暗鬼になる一方で要所要所で垣間見える設計者中村青司の影。

 果たして犯人は誰なのか?
 その動機とは?

 この作品の発行は1987年。
 今と比べると携帯もありませんし、インターネットもありません。いわゆる孤島ものですが現在と比べると確かに閉鎖空間を作るのは易しいかもしれません。しかし今改めて読み返してみてもある意味新鮮です。新しい古典とでも言えるのではないでしょうか?

 帯に見られる『"たった一行"が世界を変える』。この一行の構成にもこだわりを感じられます。

 しかしながらそれと同じくらい注目して頂きたいのがラスト。こんなにきれいな終わり方をするミステリーを私は他に知りません。

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芳林堂書店高田馬場店 飯田和之
芳林堂書店高田馬場店 飯田和之
二浪の末ようやく大学に受かったものの結局一年で中退。その後は浪人時代に好きになった読書の為にメインで本を買わせて頂いた今の会社の津田沼店のアルバイトに応募。採用して頂き勤務。2011年11月より高田馬場店に異動になり現在に至ります。趣味が無駄に多く好きなものはトコトン突き詰める性格です。