『むかし僕が死んだ家』東野圭吾

●今回の書評担当者●芳林堂書店高田馬場店 飯田和之

  • むかし僕が死んだ家 (講談社文庫)
  • 『むかし僕が死んだ家 (講談社文庫)』
    東野 圭吾
    講談社
    500円(税込)
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 本読みの方々であれば大小あるとは言え影響を受けた本というものがあるのではないでしょうか。

 今回は私がこの仕事に就くきっかけになった作品を紹介させて頂こうかと思います。
 私は学生時代今とは違い活字が苦手でした。弟の方が活字に親しみ始めたのは早く自分が大学生の頃には結構な数の本を読んでいました。そんな弟が「兄ちゃん、騙されたと思って読んでみてよ」と言って渡してくれたのが『むかし僕が死んだ家』東野圭吾(講談社文庫)です。

 まだまだ活字を読むことに抵抗があった私があっと言う間にストーリーに引き込まれどんどんページを捲っていました。

 この作品の凄いところは実際に登場するのは2人だけで、場面もほぼ変わらないのにそれでもそんなことを感じさせることもなく読ませる筆力だと思います。

 今は旦那も子供もいる昔の恋人が、父親の形見である鍵と地図を見せこの地図に書いてある場所に一緒に行って欲しいと依頼を持ち掛ける。それは生前の父親に関することだという。父親は釣りが趣味だったので休みの日に1人で出掛けることはあったがたまに何の準備もせず出掛け、魚を1匹も釣って来ず普段なら欠かさない釣り竿の手入れも全くしないことがあった。母親は既に亡くなっていた為その時は女性のところに行っているのかとも思ったという。
 さらに彼女自身はなぜか子供の頃の記憶がないのだそうだ。

 旦那がいることもあり躊躇するが結局行くことを決めて2人で向かうことになる。
 そこで見つけた家には父親の秘密を知る様々なものが遺されていた。彼女自身もその場所から見つかるものによって記憶が刺激され子供時代を思い出していくのだが......
というストーリーです。

 とにかくこれからどんな秘密が明らかになるのだろうという好奇心で先が知りたくなります。

 私はこの小説により推理小説の面白さを知り貪るように読むきっかけになりました。そして本の楽しさを知ったそんな本という宝物がたくさん埋まっている書店で働いてみたいと思い現在に至るという訳です。

 東野圭吾先生の著作が紹介される時になかなか表には出て来づらい作品ではあるかと正直思いますがもう少し日の目をみても良い作品だと思います。

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芳林堂書店高田馬場店 飯田和之
芳林堂書店高田馬場店 飯田和之
二浪の末ようやく大学に受かったものの結局一年で中退。その後は浪人時代に好きになった読書の為にメインで本を買わせて頂いた今の会社の津田沼店のアルバイトに応募。採用して頂き勤務。2011年11月より高田馬場店に異動になり現在に至ります。趣味が無駄に多く好きなものはトコトン突き詰める性格です。