『明けても暮れても本屋のホンネ』高津淳

●今回の書評担当者●うさぎや自治医大店 高田直樹

本屋だ。やっぱり本屋。"明けても暮れても"、今も昔も本屋なんだ。
今回の本は、本屋業界にいる方々ならもう読まれている方も多いでしょう。
そうじゃない方も結構いるかも。 
今更かも知れないけれど、面白いので紹介させて欲しい。

この本、刊行されたのは1999年。さすがに昔の出来事がたくさん出てくる。
「新文化」に連載されていたものをまとめられているので、「95.5.16」とか今となってはかなり前に書かれたものだと分かる。
でも描かれる姿とか心情は、現在のものとさして変わらない。
売上が苦しかったり、新刊の洪水にもまれたり、新古書店の事だったり、大型書店の出店だったり...はたまた店に現れる変なお客さんの事だったり。
「そうだ!そうだ!」と一緒に憤ったり、「ホントにねぇ...」とうな垂れたり、「なるほど」とヒントを頂いたりしながら、すいすい読んだ。

今の状況に置き換えてみる...あんまり変わらない...むしろもっとやりづらくなってるんじゃ...?
少し愚痴ってみる。 現在のウチみたいな地方のちょっとしたチェーンは、どんどんつまらない本屋になっていってるのではないだろうか?

すごく悔しくて、どうにか抗ってみてはいるのだけれど。 もはや本屋として見てもらえているのかどうか甚だ心配だ。 

経費削減、効率化という大命題によって、どんどん素人化していく人員(自分も素人同然なんだけど)。 かたや返品率というこれまた業界の最大級の"悩み"を改善するために求められる「精度の高い仕入」...思いっきり矛盾だねぇ。

更に、低迷する売上をなんとか上げるべく増えていく各版元さんたちの営業攻勢。本屋への送品を少しでも減らしたい取次...「ムダの削減」とはいうケド、どれが「ムダ」かなんてズバズバ分かるのは神様くらいなんじゃないの?

更には「売れてるモノだけ売りましょう」「売れなさそうな本は仕入れないでおきましょう!」って身も蓋もないなぁ...。

正しいよ、そりゃ正しい。
そうすれば、「売れる」から効率もいいですね。カンタンだなぁ!とってもステキです。
......そうか? それがイイのか? 苦悶は続く。

画一的な店舗で、おんなじモノを売って、ソコソコの売上を出していれば幸せか? そんな仕事に熱を入れられるのか? 絶対にイヤだ。

第一、お客さんの事を考えてないじゃない。

「ウチに来てくれてるお客さんは、こういう本が好きだ。 おすすめしよう」
「他の本屋と少しでも違う色を出したいなぁ」
「自分しかできない売場を作りたいなぁ」
「こんな品揃えにしたらきっと楽しんでもらえるだろう」

っていうフツーの気持ちが持ち続けられる「本屋」でありたい。
そういう小さな夢を叶えられる場所であって欲しいなぁ、本屋という仕事場が。

そんな想いと現実にある諸問題をクリアしなくちゃいけない狭間で日々格闘している。色々やっかいだ。他の業界も大変なんだろうけど。

日々の業務・雑務の渦にグルングルンにされながら、ほんの少しの「やりたい事」をカタチにするため、明日も仕事場に向かう。

なんだかんだで、やっぱり本屋が好きなんだなぁと思う。
(ほとんど愚痴になっちゃいました...ごめんなさい)

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うさぎや自治医大店 高田直樹
うさぎや自治医大店 高田直樹
大学を出、職にあぶれそうになっていた所を今の会社に拾ってもらい早14・5年……。とにもかくにもどうにかこうにか今に至る。数年前からたなぞう中毒になり、追われるように本を読む。でも全然読めない……なぜだ! なぜ違う事する! 家に帰っても発注が止められない。発注中毒……。でも仕入れた本が売れると嬉しいよねぇ。