『透明カメレオン』道尾秀介

●今回の書評担当者●紀伊國屋書店渋谷店 竹村真志

 一年間に渡り、本当に毎月好き勝手に本を紹介させて頂きました。
 ジャンルを問わず何でも読みます!などと元気よく言っていた割に、結局ミステリばかり取り上げていたような気もしますが、他の御三方もそれぞれ得意なジャンルがあったようにも見受けられましたので、コレはコレで良かったのかな......などと勝手に思っています。皆様本当に一年間お疲れ様でした。
 
 そんな最終回、何を取り上げようかは、かなり早い段階で心に決めておりました。
 昨年5月、担当一回目に、大好きな道尾秀介さんの『貘の檻』を紹介させて頂きました。
 最終回も、大好きな彼の作品を紹介させて頂こうと思います。最新作『透明カメレオン』(KADOKAWA)です。
 
 人気ラジオパーソナリティ・桐畑は毎晩のように訪れる行きつけのバー《if》の仲間たちと過ごす何気ない日常に、ちょっぴりの"脚色"を加えて、今日も面白おかしく電波に乗せている。
 そんなある晩、店に迷い込んできたびしょ濡れの美女。
 彼女に吐いた些細な嘘がキッカケで、桐畑と店の仲間たちは、彼女・ケイの立てた、何とも杜撰で雑な、とある殺人計画の片棒を担がされるコトになってしまい......!?
 
 道尾さんならではの、何とも言えない違和感の漂う物語に、「聞き間違えた」や「アレは嘘です」、「勘違いでした...」というミスリードの連続。やっぱり何か変だぞ......と誰も彼もが、アレもコレもが胡散臭くきな臭くなってきた所で、怒涛のネタばらし。なーるほど、これで大団円──と思った矢先に、ラスト数ページで最後の衝撃がドカン。いや、ドカンドカンドカンだな。
 思いきり打ちのめされてしまいました。俄かには受け止めきれなかったほどに。
 
 主人公・桐畑はとても魅力的な声の持ち主なのだそうです。しかし、人々は彼の姿を見ると途端に興味を失ってしまう......。
 そういえば、僕も、中学生の頃に聞いていたラジオのパーソナリティの姿を勝手に想像していました。数年後、インターネットで彼の写真を見たときに想像とは年齢も髪型も全然違っていて驚いたのをよく覚えています(勿論、その姿に幻滅するようなコトはありませんでしたが)。不思議なもので、一体どこから生まれてきたイメージだったのでしょう。あの感覚はラジオ独特のものだと思います。

 手前味噌ですが、僕自身もよく特徴的な声だと褒めて頂くコトが多いです。
「良い声」とはまた違うのでしょうが、よく通る声だそうだでして、騒がしい飲み屋などで店員さんを呼ぶ時に重宝する、僕の隠れた特技のひとつだったりします。逆に内緒話が出来ないという欠点もあるのですが。

 コンプレックスや悩み、弱点、過去を持っている人たちが、それでも懸命に逆転を目指す......デビュー以来一貫して道尾さんは、そんな弱い人たちに光を当ててくれる作品を描き続けています。
最終回にこうしてまた、大好きな作家さんを自信を持ってオススメ出来るコトを非常に嬉しく思っています。

 この一年間、皆さんに紹介出来た作品の中で、少しでも興味を持って頂ける一冊があったのなら、書店員としてこれに勝る喜びはありません。
 本当に、有難う御座いました!

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紀伊國屋書店渋谷店 竹村真志
紀伊國屋書店渋谷店 竹村真志
オーストラリア出身(生まれただけ)、5人兄妹(次男)、姉が年下(義理の)…と、自己紹介のネタにだけは事欠かない現在書店員8年目。欲しいモ ノは、中堅としての落ち着き。 エンタメは言うに及ばず、文学、ミステリ、恋愛、SF、外文、ラノベにBLまで、基本的にジャンルを問わず何でも読みます(でも時代小説はそんな に読まないかも…)。 紹介する本も「ジャンル不問。新刊・既刊も問いません」とのコトなので、少しでも、皆様の読書のお供になるような一冊を紹介出来ればと思いますの で、一年間、宜しくお願い致します!