第20回 青茶いろいろ・その2

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 *武夷岩茶

 青茶その2は、岩茶コーナーです。
 武夷岩茶は、福建省武夷山が生産地。岩茶はお茶の名前ではなく、総称。福建省北部でとれる岩茶を閩北烏龍、南部でとれる安渓鉄観音などを閩南烏龍とする呼び方もあります。それだけ、とれる地域によって個性の違いが出るということでもあります。

 この武夷岩茶、皆さんが知っている、茶色い烏龍茶の色をしています。
 歴史も大変古く、南北朝から、というからえ~とざっと1500年前には既に有名なお茶でした。
 あんまり有名で、ブランド物として高く売れるので、一時期は武夷山で採れたものでなくても武夷岩茶として売られたことも。さすがにまずい、というので、今は政府が決まりを作り、「武夷山市内にある100余りの認可企業によって生産され、かつ、名岩区または丹岩区の原料を使用し、武夷岩茶としての特質、国家規格に合致しているもの」のみ武夷岩茶を名乗って良いことになりました。
 
 岩茶の下位分類としてある代表的な四大品種、つまりは岩茶四天王はこんな感じ。

 *大紅袍
 世界一高い伝説のお茶、と言えば大紅袍。
 というのも、宗種とされる親木は、武夷山の岩に張り付くように生えた
わずか4本のみ。樹齢400年を超える古樹からわずかに採れる茶葉は、ほとんどが政府の贈答品として確保され、市場にはまず出てきません。
 2002年に何かの間違いのように博覧会に出された原木の大紅袍は、20g288万円で落札されたとか......一回のお茶に3g使うとして、43.2万円の味わい。
 ですので、我々が普段目にする大紅袍は、接木に接木を重ねた曽孫だか玄孫くらいのお茶なのです。
 それでも、九煎いれてもまだ風味が残る馥郁とした余韻は、岩韻と呼ばれます。尖ったところや嫌味のない柔らかな風味は、大紅袍一族の特長。もしかしたら、しっかり品種管理された子孫の方が、野生に近い宗種より美味しいかも......。
 四天王で言えば、そのまんま鳳凰。プライドの高いお姫様ポジションでしょうか。

 *鉄羅漢
 どうも武夷岩茶は強そうな名前のお茶が多いのですが(そもそも、武夷岩茶が強そう)、この鉄羅漢も大変強そうです。羅漢は修行をいっぱいつんだすごいお坊さんのこと、そのうえ、鉄ってついてるんですから。
 岩茶の中でも歴史が古く、古くは薬として愛飲されてました。体を温めてくれるんですって。
 一本スジの通った、きりりとした味わいです。
 四天王で言うなら、生真面目なイケメン(でも実はおじいちゃん)な青龍。

 *水金亀
 摘まれる時期は比較的遅めの5月中旬頃。しっかり育った茶葉を、二葉、または三葉まで(四葉まで、のことも)摘みます。「三紅七緑」、三割赤くて、七割緑、という発酵度の高いお茶に仕上げ、最後の焙煎も複数回行います。それによって、岩韻と呼ばれる独特の甘く深い香り、丸いとろりとした味わいに。
 四天王の中でも生産量も一番多く、比較的出会いやすく、親しみのもてるお茶かもしれません。
 そんなところも、飄々と優しい玄武っぽいイメージ。

 *白鶏冠
 武夷岩茶にしては、やや白っぽい茶葉です。
 お坊さんがお庭の手入れをしていたら、けたたましい鶏の声が。なにかと思って見に行ってみると、鷹がひよこを襲おうとしているのを、お母さん鶏が必死に守っていた、と。鷹は追い払えたものの、お母さん鶏はかわいそうに命を落としてしまいます。茶園に葬ってあげたところ、翌年、周りが白い、鶏冠のようにくるりと巻いた葉を持つ茶樹が生えてきたそうです。なので、白鶏冠という名前になったとか(でも、雌鳥の鶏冠って、小さいよね......?)。
 お母さん鶏の頑張りにほろりとしつつ美味しく頂きたいところですが、生産量が少なく、なかなか出会えない貴重なお茶です。
 四天王ポジションはもう鳥関係が埋まっているので、肝っ玉かあさん系白虎。