第40回 評茶員と茶藝師の資格について

 気づけばこの連載ももう40回目!!
 今回は、私の持っている評茶員と茶藝師の資格について。

 この二つの称号はどちらも中国の国家職業資格(茶藝師に関してはつい先日ごたごたがあったのですがそれはまた後で)。国家職業資格とは、それを持っていないと中国ではお仕事ができないよ、という資格です。調理師免許みたいなものかしら。
 なので、試験には中国政府認定の試験官が立ち会い、合格すると中国人力資源和社会保障部(日本の厚生労働省に相当する機関)より、顔写真入りのパスポートのような公的証書が授与されます。実技と座学の点数までばっちり記載されているので、なかなか恥ずかしいです......。

VOL_40_image2.JPG

 評茶員はよく「中国茶のソムリエ」と例えられますね。つまりは茶葉を鑑定するプロ。
 その茶葉が、どんな生育状況で、どんな製茶状況で、どんな保存状態でここまでやってきたのか、茶葉から見極めめることができるのが、評茶員。茶葉はいろいろな秘密を隠し持っているのです。熟練のカウンセラーのように、心を緩め、信頼関係を築き、その秘密をそっと聞き出す、そんなイメージ。
 段階としては、
 ①初級(国家職業資格五級)
 ②中級(国家職業資格四級)  
 ③高級(国家職業資格三級) 
 ④評茶師(国家職業資格二級) 
 ⑤高級評茶師(国家職業資格一級)
 私が持っているのは高級評茶員。
 お茶が好きだ!!、もっと知りたい!!と思ったときに、一番効率よく、稠密な知識を手に入れられるのが、この評茶員という資格講座だったのです。
 中級までは日本でお勉強し、その後は安徽農業大学茶葉学科に短期留学をして取得しました。この時は本当に時間との闘い。通訳の方がつくとは言え、授業は全て中国語。テキストも中国語。許可をいただいてスライドや資料は全て写真に撮り、ホテルに戻ってから辞書と首っ引きで翻訳しながら自習。
 中国語ほとんどできないのに、「光潤:色澤鮮明,光滑油潤」「明亮:水色清顯油亮」といった評茶用語だけは知っています。

 で、茶藝師。
 こちらはお茶をいれるプロ。
 評茶員は、同じ条件でひたすらお茶を鑑定していきます。美味しいお茶も美味しくないお茶も。なので、勉強しているうちに募る「美味しいお茶を美味しく飲みたいです」という思い。
 なので評茶員を取得した後は、ほぼ自動的に茶藝師を目指すことになりました。
 で、茶藝師です、というとだいたい皆様「あ、知ってる、こうやるやつでしょ?」と大変アクロバティックな動きで高い高いところからお湯を注ぐ動作をされますが......塩胡椒ミルと包丁とフライ返しでジャグリングができないと美味しいステーキは焼けません、と同じくらいの誤解です。

 いつも拝見している中国茶情報局というサイトに、タイムリーにこんな記事が載っていました。

茶藝師が茶業で果たす役割
 (中国茶情報局CTTea.info 中国茶ニュース 中国情報 2016-07-05より)

 もとは、2016年7月5日の普洱日报の記事。引用の引用になってしまいますが、「茶艺师是茶文化的传播者、茶叶流通的"加速器"、温馨且富有品味的职业,特别是高级茶艺师是茶产业人才队伍的重要组成部分。」→「茶藝師は茶文化の伝播者で、茶の流通の"アクセラレーター"であり、温かくかつ味わい深い職業で、とりわけ高級茶藝師は茶業界の人材チームの中で重要な位置を占めます」。
 それぞれのお茶を見極め、お客様が一番美味しく飲めるように心を配る。それは、お茶を美味しくいれるだけではなく、その場の空気や時間までちゃんと演出できてこそ。生産者と消費者を繋ぎ、より深いお茶の世界に誘う案内人、そんな位置づけでしょうか。
 こちらも
 ①初級茶藝師(国家職業資格五級)
 ②中級茶藝師(国家職業資格四級)
 ③高級茶藝師(国家職業資格三級)
 ④技師(国家職業資格二級)
 ⑤高級技師(国家職業資格一級)
 私が持っているのは、中級茶藝師。先日また高級茶藝師の留学のご案内があったのですが、スケジュールが合わず......でもいつかこちらもブラッシュアップしたいです。

 で、冒頭の国家職業資格問題。
 今年の初めに、茶藝師が国家職業資格から外れるかもしれない、という噂が出ました。
 そもそもこの国家職業資格、1994年にスタート。当初は専門職や技能職の水準向上のためだったのですが、20年も立つとなんだかやたら増えて複雑化して......なんとその数600以上。中にはファッションモデルや、鉄道の切符販売員といった、資格関係なくない?!な職業も。
 これは一度整理しなくては、となったのが2014年。でもってたった2年の間になんと70%以上が消えることに......。
 その見直しリストの中に茶藝師も入っていたのです。
 中国の国家職業資格でなくなったところで、知識が消えるわけでも、お仕事ができなくなるわけでもないのですが、なんとなく公認、とか、国家、とかつくと強そうじゃないですか。それがなくなるのはちょっと寂しいなぁと思っていたら、さらに二転三転、資格取り消しの取り消し。茶藝師、奇跡の大復活。
 よそさまのお国ではありますが、なかなか大変そうです。