2月6日(火)

 新刊を探しに新宿へ。新刊の玉がないのだ。紀伊國屋書店新宿南店の3階で、榊邦彦『100万分の1の恋人』(新潮社)と、藤堂志津子『若くない日々』(幻冬舎)を購入してから4階の文庫売り場にいくと、北上次郎編『14歳の本棚 部活学園編』(新潮文庫)が新刊コーナーに並んでいた。

 4月に「初恋友情編」、5月に「家族兄弟編」が出て、この『14歳の本棚』は完結する。これ、もともとは酒場の話がきっかけだった。2年ほど前に、新潮社のS氏と、某K書店の某S氏と3人で飲んだとき、こんなアンソロジーをやりたいんだよねと話したのだ。そのときはいろんな話をしたから、すっかり忘れていたらその2週後に新潮社のS氏から電話がきて、「あれ、企画会議を通りましたから」と言うので、びっくり。おまけに、今度担当者から連絡させますと言うのである。そうか、酒の席の話では終わらなかったんだ。こうなると、こちらも本腰を入れなければならない。

 最初の企画では「中学生小説叢書」という名称だった。さまざまな小説の中から、中学生が登場するくだりを集めたかったのである。『部活学園編』の巻末にも書いたけれど、そのきっかけはずいぶん昔、井上靖『夏草冬濤』を読んだのがきっかけである。大学を卒業してすぐのころだったから、もう35年以上前のことだ。周知のように、『しろばんば』『夏草冬濤』『北の海』と、井上靖の自伝的小説は続いていくが、その真ん中が中学生編なのである。こういう小説をもっと読みたい、と思い始め、いつからか、中学生小説叢書を編みたいと思うようになった。つまり、私の夢の一つだった。

 アンソロジーを編むのは2度目である。『海を渡った日本人』(福武文庫)というアンソロジーをずいぶん前に編んだことがある。幕末から明治にかけて、海を渡って帰ってこなかった日本人について書かれた歴史読み物が大好きで、そういう記録を集めてみたかったのである。ウラジオストックからベルリンまで、冬のシベリア大陸を横断した明治の玉井喜作の記録が当時は絶版だったので(今も絶版だけど)、これを真ん中に置いて構成してみた。これも楽しい仕事だった。

 実現しないアンソロジーもある。こちらは、もう15年以上前に考えたもので、某社の某氏に話したらすぐに賛同していただき、文庫で全10巻という構成まで決まっていた。私ひとりの手には余るので、途中から某氏に協力を依頼し、快諾までもらったのである。全部某氏としか書けないのは、まだ実現していないからである。私がさぼっていたからいけないのだが。生きている間に出来るかなあ。

「中学生小説叢書」は『14歳の本棚』という名称に変わってしまったが、中身は変わらない。売れてくれればいいのだが。

 まだ新刊は他にもあるかとジュンク堂まで足を伸ばしてみた。6~8階と売り場がひろがったのは先週だが、時間があれば、3フロアすべてを見てまわるつもりでいた。その昔、池袋の旭屋書店に6時間いたことがあって、とても楽しい思い出だったから、また長時間、書店滞在をしてみたかったのである。書店の棚には数々の発見がある。

 ところが7階で新刊を探し終わると、なんだか疲れてしまった。そんなに時間もないということもあるが、もう6時間立っている体力そのものがない。元気なときにまたくるね、とジュンク堂をあとにしたのだった。