1月16日(水)

 本の雑誌社に行くと、浜本が「改訂版が届いていますよ」と数枚の紙を差し出してきた。何なのよその改訂版って? 見ると、北海道の山下さんが、「北上次郎解説文庫リスト」の改訂版を作って、送ってくれたのだった。

 前回は、2007年1月の須藤靖貴『押し出せ青春』(小学館文庫)までのリストだったが、今回は2007年11月のコーディ・マクファイン『戦慄』(ヴィレッジブックス)まで。まあ10ヵ月もすれば、新しいものが増えるのは当然だから、それだけなら驚かないが、前回版でこぼれ落ちているものを埋めているので、びっくり。それを数えてみると、51点。そんなに落ちていたんですか。落ちていても数点だと思っていたのに。

 いつだったか飲み屋で、その前回版のリストを見た池上冬樹に、「絶対にもっと書いているよ」と言われたとき、そうかなあと思ったものだが、すまん。本当にもっと書いていた。1978年7月の、生島治郎『殺しの前に口笛を』(集英社文庫)から、2007年11月のコーディ・マクファイン『戦慄』まで、その数は229点でした。30年間で書いたものであるから、1年に7・6冊だ。大森望とか香山二三郎に比べれば、これでも少ないほうだろう。

 ワープロを導入する前の最初の10年間に書いたものは、何ひとつ残っていないので、今回も、「えっ、これを書いていたの?」というものが少なくない。ドン・ペンドルトン『水曜日・謀略のシナリオ』(創元推理文庫)1984年、藤本義一『標的野郎』(光文社文庫)1985年、J・オールビュー『ランターン組織網』(創元推理文庫)1985年、勝目梓『処刑のライセンス』(光文社文庫)1985年、『けもの道に罠を張れ』(徳間文庫)1986年、の5点はまったく記憶にないが、いちばん驚いたのは、次の三作。                  

ギャビン・ライアル『拳銃を持つビーナス』(ハヤカワ文庫)1990年
クレイグ・トーマス『ウインターホーク』(扶桑社ミステリー)1990年
クレイグ・トーマス『ファイアフォックスダウン』(ハヤカワ文庫)1991年

 ギャビン・ライアルの解説を一度書いていたことも驚きだが、トーマスの解説を2度も書いていたとは、ショック。トーマスは私が偏愛する作家なのである。ミステリマガジンでやっている「新・世界ミステリ全集をたちあげる」という座談会でも、強く主張して1人1巻をもらった作家なのだ。どういうわけか、一度も解説を書く機会がなかったと思っていた。書いていたんです。

 トーマスについて、どういうふうに解説を書いたのか、読みたいなあと思いながら、京王線に乗って帰ってきたのである。