5月12日(月)

 千駄木往来堂書店と、神田三省堂書店のイベントは無事に終了。その神田三省堂書店のトークショーが終わって打ち上げの会場に向かおうとしたら、「これ、見本、出来たから」と大森望が差し出してきたのが、大森望と豊崎由美の共著『文学賞メッタ斬り! たいへんよくできました編』(パルコ出版)。シリーズ第4弾。

 シリーズ第3弾の『受賞作はありません編』は、大森望と対談した折りにやはり見本を貰い、町田に帰ってくるまで読み続け、とうとう自宅に着く前に読了してしまった記憶があるが、読み出したらホント、止まらないのだ。

 私は、この二人とは小説の評価が食い違うことが多く、この本の中で語られる小説についても必ずしも同意見ではないのだが、しかし読み物としては最高に面白い。それは噂の真相を読んでいたときのように、業界裏話が面白いということが大きいが、もう一つ、理由がある。

 大森望とサイト誌で対談をやって8年になるが、その前から本の雑誌の座談会などで会っているから、長い付き合いになる。私の『笹塚日記 ご隠居篇』に寄せた原稿の中で、「目黒考二はとにかくわがままである」と大森望は書いているが、「ワガママ」というよりは「マイペース」と言ってほしいなという気はするものの、まあ、これは認めてもいい。しかし私のキーワードが「ワガママ」だとするならば、大森望のキーワードは「イジワル」につきる。

 唇の端を歪めて褒める(活字になるとそれが伝わらない!)ということ自体が、そのイジワルな側面を語っているが、しかしこの「文学賞メッタ斬り」シリーズになるとそれが俄然活きてくる。もともと批評というのはイジワルなものだから、どんぴしゃなのである。そうか、それでは「ワガママ」な私よりも、「イジワル」な大森のほうが正統的な批評家ということになるか。うん。たぶんそうなんでしょう。

 それにしても、もう4冊目だというのに飽きるどころか、もっと読みたくなるというのが不思議。年に1冊じゃ待ち遠しいんで、年2回刊にしてくれないかな。