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書評家4人の2018年解説文庫リスト

〔大森望〕
1月『アルテミス』アンディ・ウィアー(小野田和子訳)/ハヤカワ文庫SF
3月『異邦人』原田マハ/PHP文芸文庫
  『手のひらの幻獣』三崎亜記/集英社文庫
5月『手がかりは一皿の中に』八木圭一/集英社文庫
8月『いたずらの問題』フィリップ・K・ディック(大森望訳)/ハヤカワ文庫SF※
9月『カート・ヴォネガット全短篇 1 バターより銃』カート・ヴォネガット(大森望監修)/早川書房※
11月『ラゴス生体都市』トキオ・アマサワ/ゲンロン(*電子書籍)
  『逆数宇宙』麦原遼/ゲンロン(*電子書籍)
12月『NOVA 2019年春号』河出文庫※
  『revisions 時間SFアンソロジー』ハヤカワ文庫JA※
  『クロストーク』コニー・ウィリス(大森望訳)/早川書房※
  『バタフライ』阿野冠/集英社文庫

〔ひとこと〕
 2018年に発表した解説的な文章は、いろいろ足しても全部でわずか10本。自分の訳書・編纂書に寄せたもの(末尾に※印)と電子書籍の中篇2本(ゲンロン刊)につけたものを除くと、純粋な文庫解説はたった5本しかない。

 2009年以降、12冊→13冊→14冊→13冊→15冊→10冊→15冊→14冊→14冊と推移してきたあとの5冊なので、激減ぶりは歴然。例年の半分以下どころか、ほぼ3分の1しかない。当社比では、たぶん2004年以来、14年ぶりの低水準ですね。

 解説者としては開店休業というか、閑古鳥が鳴いているので、これをごらんの編集者諸氏は、ぜひ文庫解説のご用命をひとつ。とか言ってないで御用聞きにまわるべきかも......。


〔杉江松恋〕
1月『Killers』堂場瞬一(講談社文庫)
2月『許されざる者』レイフ・GW・ペーション/久山葉子訳(創元推理文庫)
4月『恩讐の鎮魂曲』中山七里(講談社文庫)
  『アガサ・クリスティー完全攻略[決定版]』霜月蒼(クリスティー文庫)
7月『極夜の警官』ラグナル・ヨナソン/吉田薫訳(小学館文庫)
  『東京結合人間』白井智之(角川文庫)
  『骨董探偵 馬酔木泉の事件ファイル』一色さゆり(宝島社文庫)
9月『ミネルヴァの報復』深木章子(角川文庫)
  『ダークリバー』樋口明雄(祥伝社文庫)
10月『用心棒』デイヴィッド・ゴードン/青木千鶴訳(ハヤカワ・ミステリ)
   『消えた子供 トールオークスの秘密』クリス・ウィタカー/峯村俊哉訳(集英社文庫)
11月『希望荘』宮部みゆき(文春文庫)
12月『もつれ』ジグムント・ミウォシェフスキ/田口俊樹訳(小学館文庫)
   『エンジェルメイカー』ニック・ハーカウェイ/黒川敏行訳(ハヤカワ文庫NV)※ハヤカワ・ミステリ解説を再録、加筆。
   『虚実妖怪百物語 急』京極夏彦(角川文庫)

〔ひとこと〕
 最後の『虚実妖怪百物語 急』は編集者から〆切直前に確認の電話をもらうまで『序』『破』『急』のうち『序』を書くのだと思い込んでいた、というのは内緒です。こういう風に3冊同時発売の解説を書く場合、他の2冊と解説の内容が被ってしまわないか、心配になりますね。

 2018年は14冊、2017年は27冊でしたが、これは『新宿警察』の電子書籍10冊分をまとめて書いた分が入っているので実質的には18冊、微減ということになります。2018年に書いた解説でもっとも印象深かったのは『アガサ・クリスティー完全攻略[決定版]』でしょうか。

 なにしろこの本は、拙著『路地裏の迷宮踏査』(東京創元社)と日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞を争って連勝した因縁の一冊です。解説を書くとしたら私しかいないでしょう、という「よくぞ頼んでくれた」本でした。

〔池上冬樹〕
2月『ラメルノエリキサ』渡部優/集英社文庫
3月『60』石川智健/講談社文庫
3月『屈折率』佐々木譲/光文社文庫
4月『シェアハウスかざみどり』名取佐和子/幻冬舎文庫
10月『雨の鎮魂歌(レクイエム)』沢村鐵/中公文庫
11月『Mの暗号』柴田哲孝/祥伝社文庫
11月『青い月曜日』開高健/集英社文庫
11月『聖母の共犯者 警視庁53教場』吉川英梨/角川文庫
12月『過ぎ去りし世界』デニス・ルヘイン/加賀山卓朗訳/ハヤカワ文庫

〔ひとこと)
 2018年はがくんと減って9冊でした。例年の半分以下。2019年もそうなるのかわかりませんが、2016年の記録、年間27冊のようなことはもうないでしょう。20冊でも多い気がします。19年度は一人の作家とその周辺について長い原稿を書く予定ですし、ほかの仕事にも集中するので、18年のように10冊前後かと思う。
 18年度の作品のなかでは、『ラメルノエリキサ』の解説を担当できて嬉しかった。これは解説にも書きましたが、見事な少女ハードボイルドです。アメリカの私立探偵が日本の少女に転生したような感じといったらいいか。キビキビとした毒のある愉快な語りが最高です。
 十代からファンである開高健の解説を担当できたのも、個人的にはとても名誉なことでした。十代のころから愛読している森内俊雄、吉行淳之介、立原正秋、小川国夫など文庫にならないだろうか。いくらでも書きたいのですが。
 そうそう、いくらでも書きたいといって珍しく出版社に売り込んだのが、吉川英梨の「警視庁53教場」シリーズの新作です。本格ファンも愉しめるネタのぎっしりとつまった警察小説の傑作シリーズ。注目ですよ。

〔北上次郎〕
1月『残りの人生で、今日がいちばん若い日』盛田隆二(祥伝社文庫)
2月『鬼煙管』今村翔吾(祥伝社文庫)
3月『岳飛伝17 星斗の章』北方謙三(集英社文庫)
  『巡査長真行寺弘道』榎本憲男(中公文庫)
4月『炎の塔』五十嵐貴久(祥伝社文庫)
6月『クラスメイツ〈前期〉』森絵都(角川文庫)
  『ムーンリバーズを忘れない』はらだみずき(ハルキ文庫)
  『罪人のカルマ』カリン・スローター(田辺千幸訳)ハーパーBOOKS
8月『国士舘物語』栗山圭介(講談社文庫)
  『英語屋さん』源氏鶏太(集英社文庫)
11月『今はちょっと、ついてないだけ』伊吹有喜(光文社文庫)
  『鷹の王』C・J・ボックス(野口百合子訳)講談社文庫
12月『よっつ屋根の下』大崎梢(光文社文庫)
  『サラマンダー殲滅』梶尾真治(徳間文庫)

〔ひとこと〕
『岳飛伝17 星斗の章』の文庫解説は2年前に書いた。この単行本が刊行されたとき(2016年5月)に全17巻をまとめて読み、新刊評を書いたのだが、数年先に文庫解説を書くときにまた17巻を読むのは大変だなと思い、じゃあ先に書いておこうと考えたのである。文庫解説の依頼が私にこないことも想定されるが、そのときは「勝手に文庫解説」と題して、どこかに載せればいいのだ。という話をしたら、「それは人してどうか」と大森に書かれてしまった。

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