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11月19日(日)

 『炎のサッカー日誌その9 浦和レッズJ1昇格篇』

 年間シーズンチケット最後の一枚を財布に入れ、朝7時、家を出る。決戦の地、駒場競技場へ。どんなに寒かろうが、眠かろうが、今日はそんなことどうでもいい。とにかくJ1昇格を決めるだけだ!

 とはいったもののムチャクチャ寒い。寝袋にくるまっていても足下からジンジン冷えてくる。おまけに保温性の水筒に熱々のコーヒーを入れて持っていこうと思っていたのに、フィルターがきれていた。もうひとつおまけに駒場に向かう途中に自転車がパンクした。ああ、なんか嫌な予感だ。これが水戸黄門的な「人生楽ありゃ苦があるさ」の人生交互変換方式ならいいんだけど、大地震を予感した動物達の異常行動方式だとしたら大いに困る。うーん。

 10時の開門と同時に自由席はあっという間に埋まってしまった。僕は、立ち見のゾーンすら取れずに、通路に陣取る。2Fスタンドが視線を邪魔し最悪の場所。やっぱり、悪いことが続く異常行動方式の方か…といじけていると、なんと目の前の立ち見ゾーンにいたグループが移動し、最高の観戦ポイントを確保。
 ヨシ!水戸黄門の方だ!うーん?ちょっと待て…。良い場所が確保できたと言うことは、次はもしかすると悪いことか…。ちょっと洒落になっていないぞと考える。いや、もう余計なことを考えるのはやめて、とにかく命がけで応援することに決める。

 1時。運命のキックオフ。すさまじい応援。背筋がブルブル震える。それでもサポータの中心が「2万人の声がそんなもんか?もっと声を出そうぜ!」と煽動すると一段と野太い声が響きわたる。僕も全身全霊で声を出す。今日は、ヤジっても仕方ない。とにかく選手を前向きにするだけだ!

   試合の方は、腹の痛くなるような前半を終え、後半開始早々、途中入団のアジエルがゴール。こんなにうまくいかないよなあ…と思っていた矢先にキーパー西部のミスで同点へ。その後は、相変わらずのヘボサッカーで点が入る気がしない。
 おまけになんとDF室井のファール一発退場で死刑判決PKへ。その瞬間、駒場競技場は凍りついた。もう終わりなのかもしれないと誰もが感じた。しかしレッズサポーターははどんなときでもあきらめてはいけないと言うことを知っている。今までだってこういうことがいっぱいあった。その都度、僕らは苦しみを乗り越えてきたのだ。僕らに唯一できること、声を振り絞って声援を送る。

 「うらーわレッズ!」

 我が浦和レッズに突きつけられた死刑判決は、執行間際に判定がくつがえり、えん罪へ。なんと鳥栖の外国人がPKを外したのだ。やっぱり人生何事もあきらめてはいけない。

 決め手のないまま、延長戦を迎える。
 昨年の11月27日。我が浦和レッズは、延長戦突入と同時にJ2降格が決定した。その時、駒場競技場には2万人のため息と、すすり泣きがこだました。あんなに悲しい雰囲気を僕は知らない。もちろん僕も泣いていた。しかし今年はまだチャンスがある。あと30分のうちに1点を入れればいいのだ!絶対にあきらめてはいけない。僕らは必死に声を出した。

 フリーキックで壁に当たったボールが、ほぼ僕の真正面にいた、どちらかというと地味目な選手、土橋正樹の前に転がった。大きなトラップをした瞬間、僕は大声で怒鳴った。
「マサキ!打て!!!」
2万人の声援のなかで聞こえるわけはないけれど、土橋正樹は、その声そのまま左足を振り抜いた。ボールは緩やかな上昇軌道でキーパーの頭上を越え、その後、大きく落下した。そして……。

 鳥栖のゴールネットが優しくボールをくるんだ。
 我が浦和レッズ、J1昇格の瞬間である。

 僕のなかで何かが爆発して、興奮と歓喜と絶叫とあとは何だかわからないものが入り交じった。目の前にある鉄柵にぶら下がり、ゴリラのように吠えまくった。それは言葉になっていなかった。とにかく吠えまくっていた。身震いするような興奮が全身を駆けめぐっていた。

 隣で観戦していた、いつもはクールな兄貴が泣いていた。それも延長に入ってからずっと。

 大阪に転勤になって生観戦ができなくなった相棒とおるは、大泣きしながらケータイに電話をしてきた。
「すぎえー、よかったー、マサキだよー。来年も、まだ浦和に帰れねえけどさー、大阪で3試合応援するよー。」最後の方は言葉といよりも、嗚咽だった。

 そしていつも一緒に観戦し、アウェーの札幌などにも一緒に旅した吉田さんと僕は抱き合った。強く抱きしめ合った。太めの吉田さんの柔らかい背中の肉をつかむのはこれで2度目だ。1度目は、等々力競技場で我が浦和レッズの大将、福田正博が得点王を決めた時。そして今日。抱き合いながら吉田さんは、「来年は国立を真っ赤に染めようぜ!」とつぶやき泣いていた。

 僕も大泣きしていた……。

 我が浦和レッズにとって苦しいJ2での1年は終わった。どうにかこうにかJ1昇格という最低のノルマを達成し。しかし、まだスタートに立っただけなのだ。憎きジュビロやアントラーズ。エスパルスを倒し、J1優勝へ向けてスタートを切ったばかりなのだ。

 まだ、まだ、続く、「WE ARE REDS」。
 そう僕らがレッズなのだ。