WEB本の雑誌

12月15日(金)

 本の雑誌・行方不明事件勃発!

 夕方、引越作業をしていた、助っ人5名と営業事務の浜田は車で倉庫へ向かった。本の雑誌社の倉庫は、会社から徒歩7分、車で3分といったとても近い距離にある。総勢6名が「海を見にいく号」に乗り込み意気揚々と出発。まあ、引越でそんなに張り切る必要はないんだけど…。

 10分ほどして社内に残っていた助っ人宇津野さんが、
「あのー、みなさんはどちらに行かれたんですか?」と聞いてくる。
「あっ、車に乗って倉庫に行ったよ、もし仕事がないなら手伝いに行けば。」と答えると何だか納得いかない顔をして僕を見つめる。
「どうしたの?」
「あのー、私が倉庫の鍵を持っているんですけど…。」

 えっ、じゃあ、みんなで倉庫に行っても入れないんじゃないか、あいつらはほんとにバカだなんてことを言いつつ、鍵を持っている宇津野さんにすぐさま倉庫へ行かせる。

 しばらくすると、その宇津野さんが、浮かない顔をして会社に戻って来た。てっきり怒られたのかと思い、話を聞いてみると
「違うんです、皆さんいないんです、倉庫に…。」
「えっ?じゃあ、どこに行ったの?」
「わかりません、それは私が聞きたいんですけど。」

 すでにみんなが倉庫へ向かって30分が過ぎていた。

 事の顛末を聞いていたデスクの浜本が、
「事故じゃないだろう…、事故だったらすぐ電話が入るよ。それに事故を起こすって距離でもないし、大丈夫だよ。」
と心配する。
 浜本さんがこんなに優しいとは想いもしなかった。
 ほんとはいい人なんだ…。

 あんまり優しくない…というか、みんなの人間性を疑っている僕は、
「どうせアレです。腹でも減って何か食っているんですよ、『あっ!おでん屋だ、僕おでんが食べたい』なんて言い合って、一杯やっているんですよ、きっと。」
と笑いながら言ってみたが、僕の人間性が疑われることになった。

 そんなことを言い合っているうちにすでに45分が過ぎていた。携帯電話に連絡を入れようと、片っ端から電話してみるが、社内で着信メロディーが鳴り響く。うーん。

 心配する以外何もできない僕たちは、2階の窓から外を眺めていた。ワゴン車が通る度に「あっ!帰った来たぞ」と目を凝らしてみたが、どれも違った。まさかこの世に神隠しがあるなんて考えられない。みんなどこへ消えてしまったんだ?集団誘拐と言われても身代金を払えるほど大きい会社じゃないし…。

 窓に張り付いたまま、1時間が過ぎた。向こうの方から頼りなげに一台のワゴン車がやってくる。その頃にはすでに僕らも、疲れ切っていたので、誰も反応しなかった。

 ボロボロのワゴン車が会社の前で止まる。
 営業事務の浜田が飛び出してきて、涙目で叫んだ。
「道に迷っちゃったんです、高速とか環七とか走って、やっと戻ってきたんです。どうなるかと…。」
 気の弱い浜田は、ほとんど泣いていた。

 とにかくみんなが無事に帰ってきたことに安心し、優しい浜本さんはホッとしてお茶を入れている。
「良かったねえ…。」なんて口々に言い合い、運転していた川合くんは、「すみませんでした。」と深く頭を下げた。

 こんなことで、人間性を疑われた僕は、何だか納得がいなかい。
「どうして、たった3分の倉庫で、道に迷うんだ!」と言いたかったが、また人間性を疑われそうなので、そっと帰る。

 まあ、良かったんだ、無事で。