WEB本の雑誌

2月3日(火)

 ダラダラと残業していたが、節分なのを思い出し、あわてて帰宅することに。

 そうだ、そうだ。一緒に豆をまこうと朝、娘と約束していたのだ。しかし時刻は8時。我が娘は7時起床の7時就寝というきっちり判で押したような生活をしているから寝ている可能性大だ。それでも誠意だけは見せなくてはとあわてて帰り支度。

 すると発行人改めトーマス改めアバレンジャー浜本と帰宅が一緒になる。先週は車で来ていたのだが、今週からは健康を考え電車通勤にしたと胸を張る。確かに歩くことは大事だし、おまけにこの浜本、自動車通勤だとマクドナルドのドライブスルーの誘惑に勝てず、毎日毎日ビックマックを頬張りながら出社するのだ。そりゃ身体に悪いだろうし、太るわな。

 十号通りを抜け、甲州街道を渡り、笹塚駅へ。改札を通るといきなり浜本が携帯電話を取り出す。

「ああ、オレ、オレ。32分に乗るから。うん、うん。」

 家に連絡を入れているようだ。そういや浜本の息子とうちの娘は同じ年だった。時はすでに8時半。きっと浜本の息子も寝ているのだろう。父親とはなんと悲しい生き物なのだ。

 ところが隣にいる浜本が突然へんてこりんな声色で怪しい言葉をはき出すではないか。

「パパでちゅよ~。今から電車に乗るからね~。おみやげは、秘密でちゅ。秘密っていったら絶対秘密でちゅ。」

 浜本の息子は起きていたのか。いや、そんなことよりもこの変わり様は何なんだ。会社じゃいつも部下に向かって怒鳴ってばかりいるくせに。

「ご飯は食べまちたか? そうでちゅか。パパのこと待っててくれまちゅか? うん、いっちょにおいしいご飯食べまちょね」

 ホームにいた大勢の人たちが、浜本を見つめ、すすすっと離れていく。僕も離れようかと思ったが、こんな人でもいちおう我が社の社長である。社長につれなくすれば、給料は上がらない。それどころか、失業の可能性がある。とにかくじっと我慢で、浜本のアホ語を聞き続けた。

 京王新線に乗る浜本とは笹塚駅のホームで別れ、一安心。あのオヤジはいったい何者なんだ? あんな風に子供と接しているのか。確かに会社のコンピュータの壁紙を子供の写真にするほどの子煩悩だ。

 しかしそれにしても、気持ち悪りいったらありゃしない。これは酒でも買って帰らなきゃ、とても寝付けそうにない。

 途中スーパーでビールを6缶買い、家に着く。窓を見上げるとすでに明かりは消えていた。やっぱりうちの娘はすでに寝ているようだ。

 またひとつ約束を破ってしまった。自転車をガタリと停めた瞬間、その二階から声が漏れてきた。

「あっ、ママ、パパだよ。パパ、帰ってきたよ。」

 自転車の鍵を取るものもどかしくそのままにして、あわてて玄関を開ける。そして僕は叫んでいた。

「鬼でちゅよ~、鬼が来まちたよ~、オニは~、外」